介護品質と配置人員

 介護というものは人手に頼る以外になく、やっても
やってもキリがなく、反面、手を抜こうと思えばある程度は
手を抜くことができるものです。

 このため入所施設には、
最低限配置すべき人員の法定
基準
が定められています。
 この基準にどれだけ
追加配置しているかが介護の品質
を左右する決め手
となります。
 建物調度の豪華さはほとんど関係がありません。

 介護員の資質、管理者や経営者の方針も重要な要素と
なりますが、これは計数化することが困難です。

 実地調査でこれを見抜く眼力が必要です。
 老人介護施設に特有の臭いはこれを判断するひとつの
指標となります。

 

施設探し 入所施設 家族協力 表紙へ

 一般に
「利用者3名につき1人」と表現されている介護員の
 配置基準はあちこちで
大きな誤解を招いています。
  これは1週間のどの曜日、1日のどの時間帯にも3名につき
 1人を配置するという意味ではありません。
 
  利用者は1日24時間・1週間168時間、ずっと施設に居ますが、
 働く人は1日8時間・1週間で40時間が限度です。
  法定の有給休暇、喪休や婚休や病欠の有給休暇、国民の
 祝日や年末年始の休日がありますから、実質の労働時間は
 週35時間ほどになります。

  つまり、介護サービスの対象となる延べ504時間(168*3人)
 に、35時間/人のサービスを提供すれば足るという意味です。



 仮に、どこかで(寝たきりを含む)老人が3人で共同生活を
 しているとして、そこへ1日24時間・年中無休で常時1人を配置
 しようとすると、5人の人が必要になります。
  ただし、7時間分の余裕があるので1日に1時間だけは2人を
 配置することができます。
 
  (5*35=175、175-168=7、7/7=1)    


  特養では「利用者3名につき1人」が基準です。
  定員90名であれば介護員(看護師を含む)は30人です。給食要員を7人としてこれを
 加えると37人になります。

  この37人を平日・日曜・深夜の区別なしに均等に配置するとすれば、
 常時8.8人(37*40/168)になってしまいます。
  実質的な介護員は「10.22名に1人(90/8.8)」なのです。
  
 グループホームでは「夜勤帯の時間を除いて3名につき1人、夜勤帯は「1 ユニット(5-9人)
 につき1人」が基準です。(2021年度から「
2 ユニットにつき1人」に戻される模様)

  グループホームの夜勤帯を21.00から7.00時までの10時間と定め、ここに1人を配置します。
  労働基準法の定めから休憩時間を2時間とって、
実働は8時間、1 週間では56(8*7)時間です。
休憩時間中の介護は時間外労働となります。
  
  昼間帯は7.00から21.00までの14時間、1週間では98時間(14*7 又は168-70)です。
  定員7-9名の場合、配置すべき介護員は3人(9/3)、
就業時間数は1 週間で120時間(3*40)です。

  昼夜合わせた配置時間数は176時間(56+3*40)であり、
これを平日・日曜・深夜の区別なしに均等に配置するとすれば、
常時1.05人(176/168)になってしまいます。
  実質的な介護員は「8.57名に1人(9/1.05)」なのです。










  グループホームは、1 ユニットの利用者が9名以下だからといって、
 1人の夜勤者をこれ以上減らすわけにはいきません。
 
  1 週間の夜勤帯70時間のうち56時間に1人を配置(8*7)し、
 昼間帯の98時間に1人を配置すると、
昼間帯に2人目を配置
 できるのは週22時間(3*40-98)
です。
  1日当たりにすると3時間余り(22/7)だけになります。

  つまり、夜勤帯、昼間帯を通じて1人を配置すれば、2人目を
 配置できるのは 1日にわずか3時間余りに過ぎません。

  昼間帯 1人目の要員は、朝晩の着替え、洗面、朝昼夕の食事
 とオヤツ、そのあと片づけ、与薬、排泄の誘導とあと始末、洗濯、
 掃除、見守り、傾聴、余暇活動などを担当します。
  これだけのサービスを利用者(5-9人)全員にきちんと提供する
 には実際には
1人では無理です。

 入浴介助は介助者自身が浴室に居なければなりませんから、
 その間は他の介助が一切できません。
  従って、入浴介助は2人目の要員に頼ることになりますが、
 その実働時間は法定基準では 1日当たり 3時間余りです。

  入浴サービスを週 2回とすると、延べ入浴人数は週10-18人
 (5*2〜9*2)、毎日風呂をたてるとすれば 1日(回)当たり
 2人から 3人ですが、
1人で 3時間でこなすことは無理です。
   

 要するに、特養にしろグループホームにしろ、法定基準の人員
 だけで 研修でいわれるような
次元の高い介護を実践する
 ことは不可能なのです。

  ほとんどの施設は基準を上回る人員を配置し、
その上で
 夜間の配置を絞りに絞って昼間に回しています。

 夜間は、排泄・更衣・不眠・不穏・徘徊・急変への対処が
 主な業務です。利用者が平穏であれば配置を絞れます。
   その結果、夜間・昼間別の実質的な配置人数は
 「入所施設」の一覧表のようになります。