*起床四時半。先ず洗面し、閼伽水を汲み佛前荘厳をする。自炊も有るので朝の御勤行は各自で終わらす。勿論就寝中の周りに気使い微音・金無しで行う。
*「兎に角寒い!」夜半からの冷え込みはかなりのもので、後で聞いたら十度前後迄気温が下がっていた様だ。尤も此処ら辺(四合目)での此の冷え込みは当たり前らしく、事前に知っていなければ都会の冬並で有る。防寒用のジャンパーを着込み、暖房を兼ねたガソリン・コンロに点火する。登山を行っていた頃の、冷え込みのきつい朝のコンロに点火した「ホッ」と一息をついた、あの頃の感覚は現在でも変わらない様だ。
*先ず水を沸かしてお茶を入れる。勿論一番茶は佛前に供え、二番以後を私達が載く。それから食事の準備に取り掛かる。此のキャンプ場は便利なものでコンセントが有る。(テントには無いが)だからバンガロー泊なら、冷蔵庫迄持ち込み可能だし、クーラー・ボックスに氷等と云う余分な荷物も省けそうだ。今回も其の恩恵を預かり炊飯器を持参する。コンロは一口でも十分かもしれない。
*一応夕食は非食が建て前なので、「食事作法」は無し…‥。コッソリS氏の顔を覗き見れば、何故かホッとした様な顔つきをしていた。では、戴きまァ〜す。明朝の食事の準備を兼ねた後かたずけを終え、本日の「復習」と「反省」を行い八時頃就寝。昨夜は寒さで何度か目が覚めたせいか、今夜は爆睡する予定だ。ちなみにS氏は、マットレスと毛布を一枚ずつ借り足して、寝袋の上下に敷いて・掛けて防寒し、私は十分に着込んで寝袋に潜り込む。
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日本蕎麦(冷)・浸け汁(昆布・椎茸・味醂・味噌・焼き海苔)茄子の油味噌・茹で卵

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八月二十一日(金曜日)
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御飯・味増汁(昆布・推茸・味琳・具=大根)空豆の塩茹で・漬け物二品

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*案の定「食事作法」に時間が掛かリ(経頭は自分がするが、正確に唱えられる迄反複して繰り返した)、食事はすっかり冷えてしまったが、是も行なので妥協は許されない。共に食事を終え「施食作法」を行う。本来なら「写食」は池・川・等にするのだが、此処では其れが不可能なので、持参した金のボールに水を張リ、其処に「写食」すると云うパターンで行う。作法を終えた後にテント脇の木の根元に置き作法を終了する。
*その後食事の後かたずけをし、昼食の下準備をして、束の間の自由時間に入る。後で下迄買い出しに行かなくてはならない。(昨日買い求めた氷が全部溶けていた為)更に車のガソリンも補給しておかなくては…‥。九時半頃に出発して十時半を少々回った時刻に帰り着く。「食事作法」には末だ時間が掛かる事だから、早々に昼食の準備に取り掛かる。なにせ「食事作法」は十二時前に終わらせなければいけないからだ。
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御飯・味噌汁(昆布・椎茸・味琳・具=茄子)キャベツ炒め・漬け物二品

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*夕食の下準備等一切の後かたずけを終え、しばし休息の後(一時半頃)新滝に「滝行」をしに向かう。車で七〜八分、車止めより徒歩で約十五分程の行程で有る。天候はド・ピーカンで日差しも強く、たっぷりと暖房の効いた車に乗リ込む。昨夜は気持ち悪い位に星の見える夜空に感激し、今朝の御来光を期待したが、生憎のガスで明朝への持ち越しと成る。今日の天候は?…‥とも心配していたが見事に晴れ上がった。これも佛縁のお陰と感謝をしつつハンドルを握る。
*ガンガンにクーラーを効かすも、車内が快適に成る前に車止めに到着する。どうやら他の講中・等の騒がしい連中も居ずに、じっくり滝行が出来そうな雰囲気だ。滝場への道は深山幽谷の雰囲気が強く標高も有るせいか、処々に降り注ぐ木洩れ陽だけでは肌寒い位だ。階段状の滝場への道を約十五分程、息が切れ始める頃に「新滝」に到着する。
*これから数日お世話になる滝場だ。上方が覆う様に被さっていて後ろ側がえぐれ、落差も四十M以上有り、完全に水玉の乱舞だ。入山前日迄「連日の雨」との事で、道路側壁から水が浸み出し、水量の多い事は頭の中に入っていたが、これは相当なモノで大粒弾をまともに戴くと、かなりの忍耐を必要としそうだ。又、滝飛沫の霧でそこそこ離れて居ても作務衣がしっとり濡れてしまう。前回訪れた時の十倍位の水量で有る。
*先ず滝場本尊の「御不動様」に法楽を上げて御挨拶を済ませ、入滝中の行者が出るのを待って早速滝場の浄めを行う。勿論すでに行衣に着替え塩で身を浄め済みだ。先ず塩。次に酒。かなり沢山の量を使用すると思い、そこそこの量を持参したのだが、眞の行者の滝のせいか気持ち程度の使用量で済んでしまう。そして九宇結界。水筋より大分離れて居るのだが、比の時点で当人はビショ濡れである。
*先ずS氏を入滝させ、次いで私が載く。時間が悪いせいなのか、木洩れ陽が行場に当たらなくて肌寒く、滝の水は冷たいは・勢いは強いは…‥、「何であたしゃァ〜こんな事しとるンやろ〜?」等と、余計な事を考える余裕どころか必死である。滝自体は柔らかいのだが、勢いが有るので二本足で長い事立って居るとフラフラする。有る程度の処で切り上げて出滝する。九宇結界を戻し、「御不動様」に有り難う御座いましたの挨拶を済ませ、ビショ濡れの行衣を着替え始める。余所の行者に邪魔にされずに、ジックリ「滝行」が出来て満足、満足。
*必死の入滝中は気にならなかった寒さが、今では体全体が貧乏揺すりの如く震えている。凍てついた体に活を入れるが如く、登って来た滝場への道を駆け下る。勿論車中のクーラーは無しどころか、ヒーターを掛けたい位だ。でも此処は我慢のしどころ。煙草に火を付け、寒さを誤魔化し乍キャンプ場に戻る。
*夕食の支度迄には未だ間が有るので、上の「田の原」迄行き、「山頂を遙拝してみようか?」と出掛ける。車で約二十分程で広い駐車場の有る「田の原天然公園」に到着する。もう一度いらっしゃいと云わんばかりに、山頂は雲間に隠れている。…‥が、此処でめげずに山頂を視念して遙拝し、未だ時間に余裕が有るので、公園内の木道を散策する。栂・這い松・熊笹の高山特有の景観を楽しみ、キャンプ場に六時頃帰着した。
*早速夕食の支度に取り掛かる。「んッ!今朝買ったロックアイスが殆ど溶けかかっている…‥。」ひょっとすると…‥、毎日氷を買い出しに行かなくてはいけないの?頭の中に果てしなく増殖し続ける?マーク…‥。そんな想いを箒で掃き出し乍、明日は明日の風が吹くと思いつつ夕食の支度に精を出す。