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音遊人
みゅーじん


〜 第2回 〜 2004.04.09 Fri

映画作家

大林宣彦

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音遊人(みゅーじん)

この番組は、YAMAHAの提供で お送りします。







モノクロフィルムの映像に、
やさしく織り込まれたような美しいピアノの旋律。

そんな作品が印象的な、
映画作家、大林宣彦さん。

幼い頃 初めて出逢ったピアノには、
こんな想い出があるそうです。






当時はねぇ、太平洋戦争の真っ最中で、
我が家のピアノのあの音を出す弦ね、金属。
これはねぇ、軍艦や戦車や飛行機になって、
つまりアメリカやイギリスと戦っていたわけですよね。

だから立派なねぇ黒塗りの箱があってね?
「なんだろう」と思って開けると、白と黒のねぇ、
艶やかな積み木が、つながってる。
でも、外れないですよね。

で、押さえると、「キシッ、キシッ」
ってこう悲しい音がするんですよ。
これが僕にとっては戦争の音ね。

戦争が終わって、僕は小学生。
我が家に音のするピアノが戻ってきました。

で初めて「ポーン」と、押さえたときのあの音がね、
僕にとっては、やっはり平和の音だったな。


ピアノというオモチャと遊びながら…

自分の心に浮かぶ音楽をね、
積み木のように組み立てて。
だから僕ピアノを練習したことってないんです。
習ったこともないんです。

ただ「ピアノ」という音のおもちゃがもう
平和で穏やかで大好きだったから、
積み木(鍵盤)でこう組み立てて、いつの間にか、
別れの曲もねぇ、積み木のように覚えちゃった。






彼が愛した 別れの曲は、
その後、映画「さびしんぼう」のテーマとなり、
この作品では、大林さん自らが、その手を使って、
演奏シーンの吹き替えもこなしたのです。






映画もねぇ、いろんな映画を、
つくることができますからねぇ。
もし、僕の横にピアノがなかったら、
殺伐とした恐ろしい映画を、ひょっとして
僕もつくってたかもしれない。

だからやっぱり僕の映画を、穏やかなものに
してくれてる力は、ピアノのおかげでしょうね。






聴くもの全ての人を
穏やかにしてくれる、ピアノの音色。

大林さんの作品には、
常に平和を愛する彼の心が、
込められているのです。






ピアノの音が聞こえるってことは、
僕にとっては平和で、穏やかな、日々があると。






音遊人
大林宣彦







この番組は、YAMAHAの提供で お送りしました。



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