音遊人
みゅーじん
〜 第56回 〜 2005.04.29 Fri
ヴァイオリニスト
千住真理子
音遊人(みゅーじん)
この番組は、YAMAHAの提供で お送りします。
ヴァイオリニスト、千住真理子。
今年30周年を迎える彼女には、
ヴァイオリンを弾かなかった
約2年間の空白があります。
その間、ただ公園でボーっとしながら、
彼女は何を考えていたのでしょう。
音楽のことですね。う〜ん。
「なんでやめたのかな〜」
っていう、ことですね。
そんな時期に出逢った一人のファン。
ホスピスに入り死を目前にしたその人のために、
彼女はヴァイオリンを弾くことになったのですが・・・
全然弾けないんですよもちろん。
練習していないんで。
それでもその方は、目を真っ赤にして、
「ありがとう。ほんとに、今このときまで
生きていてよかったと思います。ありがとう」
っておっしゃってくださって。握手をしたんです。
そのときに私は「ありがとう」って言われながら、
この人の一番大切な時間に私は、一番私の人生の中で
一番 酷い 演奏をしてしまったということが、
ほんとにもう取り返しのつかないことを
してしまったという想いに、悩んだんですね。
今もその想いっていうのは、
消えないんですけれども。
そのとき演奏したのがこの曲。
(♪愛のあいさつ/作曲 エルガー)
以来彼女は、後悔の念から練習を再開したものの、
簡単に2年間の空白を埋めることはできませんでした。
やっぱり音楽に、「神様」っていうのがいて、
その音楽の神様が、許してくれないのかもしれない。
この2年間放り投げたということを。
「ヴァイオリンをやめる」と、
あのとき 自分が思ったことを。
しかし 練習再開から7年が経ったある日、
彼女のヴァイオリンは輝きを取り戻したのです。
やっぱりね、苦しかった7年間に
私が想い続けていた夢、それは、強く強く
あのとき私は弾けない自分が、悔しくて思ったことは、
もし私が弾けたら、自分のために弾くのではなくて、
聴いてくれる人が、幸せを感じてくれる、
そういう時間をつくりたいっていうふうなことを
ほんとに、毎日のように、思ったんですね。
今彼女は、たゆまなく
ヴァイオリンを弾き続けています。
それは、聴いてくれる人たちの幸せのために。
音遊人
千住真理子
この番組は、YAMAHAの提供で お送りしました。