秘境 ふたたび
〜イルカの住む島へ〜

(05/10/26〜27)

私が御蔵島を訪ねたのは、かれこれ十数年以上前のことです。
あの頃、イルカウォッチングと言う言葉は耳にしましたが、ドルフィンスイムという言葉はそれほど蔓延していなかったように思います。
ただただイルカに会いたい!その思いだけで、無謀にも友人と出かけました。
乗り物にとことん弱い私は、もちろんボートの上で危篤状態(^^;;
それでも、ただ一瞬見たイルカが「また行きたい!」と私に言わせたことに友人は驚いたモノです。
そんな熱い思いも雑多の中に紛然し、いつしか思い出しても過去のことでしかなくなりました。
その私に、再びこんな日が訪れようとは、自分自身でも驚きの境地です。思い出すは、イルカの可愛い顔よりも、ボートの上で苦しんだ3時間!
覚悟を決めた決死のダイブ!
船酔い波酔いと心中しようとも、秘境再び!いったい何が私をひきつけたのでしょうか・・・



第一関門、東海汽船(笑)
無謀・無敵だった少女の頃と違い、どんな試練にいつ息絶えるかもしれず・・ここは奮発して特2等席!
ウン、快適(^^) すごく静かだし〜・・・っと、これが仇となる(-"-) 荷物をガサゴソガサゴソうるさいヤツ一人
その、たった一人のお陰で全く眠れず。前途多難。困った!!

すべての島が着港可能の中で、御蔵だけが条件付き。海況悪しければそのまま八丈まで連れて行かれてしまう。
切り立つ御蔵の港は厳しくて、船をそうそう寄せ付けない。でも、私は全く心配していなかった。
私が行くんだ!着かないハズはない!(笑) だから、寝ろ!とにかく寝よう!なんとしてでも・・・




いるか住む島

ほとんど眠れなかったモノの、なんとか上手に?船酔いという事態を免れ、島に到着。なんだかとても懐かしい。
この港もあの坂も、記憶のまま変わっていない。そして、これからあの時の恐怖を吹き飛ばしてくれるイルカに会える!


私がこの時期、御蔵行きを決行したのは、シーズンも過ぎ宿泊予定の民宿に他に誰も予約客がいないと聞いたからです。
一度ボートを出したら、2時間は船上。そこで、ゲロゲロ苦しんだら、他のダイバーに迷惑をかけてしまう・・ 
一人きりなら、途中で切り上げて貰うわがままも許してもらえるだろう・・
そう思ったことが決心できた理由でした。。しかし、この日の午前は、女性のお客様Aさんと一緒。悩む・・大丈夫か?あ・た・し・・
御蔵の空は晴れ渡り、海は凪(私には、全然凪には見えないんだけどね(^^;;) 行きます!行かせて・・(とても不安だけど)

青!蒼!碧! 濃紺のとても綺麗な海!!
泳ぐイルカがわかるかな?黒潮到来の御蔵の海は、暖かく透明で、たくさんのイルカ達に会えることが出来ました。
紺碧の海。その色の美しさを透かして、海底を行き交うイルカたちの群が優しく通り過ぎるのが見えます。

・・・なんちゃって、こんなコト書いていますが、写真はただの偶然(^^;;
数回のエントリーですでに酔っている私は、体力温存すべくただ遠くを見つめアトは耐えるのみ(アセ)何かに焦点を合わすだけで体力は奪われ、酔いが悪化するんですよ〜(泣)
でも、どこに行ってもイルカ達が寄ってきて、一緒に乗ったAさんも、民宿でお世話になるたまちゃんも、たぶん10回以上エントリーしたと思うんだけど、ものすごく優雅でキレイにイルカと泳いでいました。私は、自分を重ねて“つもり”になる(笑)頑張って、海に出て良かった。
でも、ボートが止まるたんびに死にそうだ(;^^A 
がんばれっ あ・た・し!!




透き通るイルカたち


背ビレを交わすイルカたち


優雅なしなりを見せるイルカたち



 
左側の波しぶきは、イルカが呼吸しているの。鯨の潮吹きと一緒だね。この時の音は、スノーケルの水をクリアするときの音と似てる。あたりまえっちゃあたりまえなんだけど、なんだかそれだけで嬉しかったりして・・(^^)
ボートをチェックするように、お顔をあげて近づいて来るイルカもいたし、その表情がとっても可愛い!この時期、親子のイルカもいて、仲良く並んで泳ぐ。
どこからか見つけた、ビニール袋をおもちゃにして遊ぶイルカ。一瞬、絡まっているのかと心配したけど、離しては拾いに行き“これはボクのだからね”とでも言いたげに、得意になって拾っては遊ぶ。
可愛いばかりじゃないイルカの世界のことは、ここでは語らないことにしよう。
ただ、自分の出したゴミはすべて持ち帰ることにした。
こんなコトくらいだ、私に出来るのは・・・




午後は、ホントに私一人の貸し切り状態。すでに体はボロボロになっている。全く自信がない(T.T)
これまた悩むけど、こんなチャンスがあるはずもない。明日はまた、別のお客様が来るし、天気だってわからない。決死のダイブはまだまだ続く。
行きます!(でも、不安な朝よりさらに不安・・・・)たまちゃん、船長さん、ごめんなさい。
午前中は、なんとか迷惑をかけないように、体力温存のため、ウエイトを付けずに浮かんでいるだけにしたけど、午後はちょっと頑張れるか??
あまり現実的じゃないな(^^;;;でも、ちょこっとウエイトを付けた!最後の力を(もうほとんどないけど)ふりしぼれっ!海の中へ!!
午後は、イルカたちもお昼寝中なのか、沖へ遊びに行っちゃったのか、全く見あたらない。
島を一周したけど、一回あえたイルカはつれなく通りすぎていった。
“もういいです”と、言いたい私の胸中を見透かして耳をふさいでくれたたまちゃん。船長さんの鋭感で、なんとイルカの大群に会う!
通り過ぎたと思えばまた後ろから、次から次へとイルカたちに囲まれた!
潜ったことを忘れて息をした私。しっかり海水を飲んだ。でも上手に飲んだ(笑)まずかったけど、あまり咽せずにすんだよ(;^^A
この時、すでに私は体力の限界をとうに超えていた。お昼に頂いたチャーハンは、全部イルカにあげてきた(^^;;;やっぱり、とても苦しかった。
でも、こんなきらめく体験は、この苦しみを越えないと出来ないと思った。このハンデが呪わしいとさえ思ったけど、挑戦したことに満足できた。
頑張ったね、あ・た・し(笑)



夜は、お世話になる民宿「二郎丸」の、たまちゃん、ゆかちゃんお手製ディナー。
とってもおいしかったのに、たくさん食べれなくてごめんね。
夕食のアト、今日のイルカをビデオで見せてくれた。あーかわいいっ!

ちょっと、私に興味を持ってくれたのね。通り過ぎたアト戻ってきてくれて私と眼があった!!
小判鮫の吸盤で、皮膚がただれてぼこぼこになっているイルカ。特徴のある子は、名前を付けて村の人々は親しんでいる。
私は遊んでくれたこの子を、“ミル”と名付けた(笑)
イルカのミルちゃん、どうもありがとう!小判鮫にも優しいあなたは、もしこの次会ってもすぐにわかるねっ!!




翌朝は、自分でも信じられないほどの絶不調(^^;; 頭痛、吐き気が襲います。御蔵の天気は「休みなさい」と、私に優しい土砂降り(笑)
たまちゃんにも甘えさせて貰って、薬を飲んでふせっていました(^^;; 少し体力が回復した頃、雨も上がり薄日が射し・・
んもー どこまで御蔵は私に優しいのっ!リハビリの散歩へぶらっと出かけました。
散歩をしながら、自分の体力と体質を思い、もう二度と訪れることはないだろうな・・
と、少し寂しく思いました。

←近くにある稲根神社


御蔵のアザミ→


 御蔵はみな優しく、アザミにさえ棘がない 
と、言われています。

摘んできたアシタバ。生で食べるとちょっとほろ苦い。ミルにもお土産(^^)


雨はすっかり上がっていますが、風も強く、海は荒れています。それでも船がやってきました。
汽笛が鳴ります。毎日島の人々はどんな思いで待つのでしょうか・・・
ここまで来ても、接岸できずにそのまま行ってしまうこともあるそうです。
残念がる観光客の思い以上に重たいモノが島民の暮らしにはあるのでしょうね。

デッキで手を振る私に、
ずっと手を振ってくれるたまちゃん、ゆかちゃん、船長さん
村の人々はみな、こうして帰っていく人たちに
いつまでも手を振っている。
ずーっと、ずーっと、ずーーーーーーっと、
大きく振り続けてくれる。
休むことなく振り続けてくれる。
毎日こうやって、お客様を見送ってくれるんですね。
私も頑張って手を振った。きっともう会えないと思うと涙が出た。

でも、村の人々は、船に手を振っていたんだね。
帰ってきてからそう思いました。
村が生きていくために、大切な大切な人や荷物を乗せて渡ってくる船に、
“ありがとう”と毎日手を振っているんだねと、帰ってきてから思いました。






お利口にお留守番が出来たご褒美の明日葉
イルカのミルちゃんに乗って、ミルもすいすい泳いでみたいね(^^)



体力が回復してくると、なぜか“また・・”
と思うから不思議(笑)
万が一にも、またの日が来たら、
ただ一度のためにウエットスーツを新調しよう(笑)
そんな日が、来ても来なくても、
とても貴重な想い出をありがとう!
お世話になった皆様、イルカたち、海も空も船もありがとう!
そして私、えらかったよねっ ありがとう!ミルもお留守番ありがと〜(^^)



私が大切にしているミルは、病気や怪我をしたら、病院へ行くよね。
野生のうさぎさんだったら、ペロペロなめて傷を癒すのかな?じっとうずくまって、治るまで我慢するのかな?
でも、そのうさぎさんが、もしも家の前に来たらどうしよう・・ もしも隣の家の前に来たらどうしよう・・ もしも隣の町だったら・・・
それでも、そのうさぎさんは、人間になど助けられたくないのかもしれないし、なんとか助けて欲しいと泣いているかもしれないね。
誰にもわからないホントの気持ちなど・・ だけど・・ 時間があったら、ちょっとここを覗いてみて下さいね。



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