夢惑う世界・昆虫たち 昆虫館<万華鏡> 昆虫万華鏡 |
29 昆虫万華鏡<ブラジル> | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
第1回:1999年12月25日 〜 2000年 1月 6日
第2回:2001年 8月11日 〜 2001年 8月19日
第3回:2005年12月31日 〜 2006年 1月 4日
1 アマゾン
(1)自然について <ノーバ・オリンダ・ド・ノルチ>
ブラジル・アマゾンの中心地マナウスより船に乗って12時間、ハンモックに揺られてアマゾン河の支流マデイラ川のノーバ・オリンダ・ド・ノルチという町へ着きます。町の近くには、採油する場所があります。アマゾンのど真ん中なのですが、やはり文明がいっぱい入り込んでいます。お金さえあれば、都会と同じような生活ができます。
町の周辺は、農地はありますが余り広くはありません。原生林らしい林はなく、舗装された道を、ずっと行くと牧場が続きます。4〜5km行くと、牧場の向こうに原生林が広がってきます。その先は、更に原生林が広がってきますが、原生林に入り込む径を見つけだすのは、非常に困難でした。
日中は暑いのですが、我慢できないほどではありません。しかし森林内は、やはり湿度が高く蒸し暑いですが、朝晩は、気持ちいいくらい気温は下がります。蚊は当然いますが、鬱陶しいほどではないので、採集には問題ありません。ヌカカ、ブユもそんなにいないみたいです。でも私は、厚手のズボンの上からも草にかぶれてしまいましたが。
夕闇をオオコウモリが飛び、川面をコウモリが飛び交います。ここは、アマゾン、5mを超えるワニや10mを超えるアナコンダがいます。
<イタコアチアラ、リオ・プレト・ダ・エヴァ>
緑は豊かであるが、道路沿いは牧場が続き、森林も柵で囲われている。国道を外れると道路は、未舗装となり上ったり下ったりの起伏のある丘がずっと続く。従って、遠くを見ると森林の中に上り坂の茶色い道路がぽつんぽつんと見える光景となる。丘の下ったところは、川となり付近には高床式の民家が建っている。夕暮れ前には、子どもたちが水遊びをしているのが見られる。
8月(乾期)の暑さは、日本の真夏より暑くない。そして、日が翳ると涼しくなり、外は過ごしやすい。
(2)昆虫について <ノーバ・オリンダ・ド・ノルチ>
ノーバ・オリンダ・ド・ノルチのホテルで夜、明るい部屋にいると、いろいろと珍客が入ってきます。小形のカブトムシ、コガネムシ、ケラ、ヒシバッタ、ツユムシ、コオイムシ、オオズハンミョウ、セミ、スズメガ、クロツヤムシなど、足の踏み場もないくらい、小さな虫が床を彷徨き回ります。
開けた場所では、ポリダマスアオジャコウアゲハ、メニッペオオキチョウ、エラトドクチョウ、ワラケイドクチョウ、アンフィノメカスリタテハ、キテレアイチモンジタテハ、クレトンツルギタテハ、インビラエヒメフクロウチョウ、チャイロドクチョウなどがいます。伐採場では、トノサマバッタより大きいヨロイバッタが飛んでいました。最初見たときには、小鳥かと思ったくらいです。トンボは、モスグリーンのヤンマ、ハネビロトンボ、藍色の翅を持ったトンボなどがいました。
森林内には、数多くの昆虫がいます。大きなクラッススアオジャコウアゲハ、ベルスアオジャコウアゲハ、セソスサスマエモンジャコウアゲハ、トルクアトゥスアゲハ、ヘレノルモルフォ、ポリキセナフクロウチョウ、コリネウスオナガコノマチョウ、ハカマジャノメ、スカシジャノメ、タソガレヒカゲ、アメリカジャノメなど多くのジャノメチョウがいます。マダラチョウは、コンフサトンボマダラ、エウクレアヒメキオビマダラ、トゥルンカタチャオビマダラなど種類は多くありません。このマダラチョウにそっくりなガも2〜3種類いました。特にコンフサトンボマダラに似たガは、翔んでいるときには、チョウと見分けがつきません。葉っぱに止まると、ガは翅を畳むので、そこで分かることになります。
タテハチョウは、森林内の木漏れ日の中を翔ぶオブリヌスアケボノタテハ、アエンティウスオレンジタテハ、イティスキノハタテハ、レプリエウリアカネタテハ、マルキイイアカネタテハ、サラドクチョウ、ブルネイドクチョウ、ヌマタドクチョウなど多くのチョウがいます。シジミタテハは、更に多くいて、アウレステスニジイロシジミタテハ、エウフラテスウラジャノメシジミタテハ、ファエドゥサオオシジミタテハなど非常に豊かな形態を示しています。セセリは、アオネセセリ、トラセセリなど大形の美しい種類が多くいます。シジミは、種類が多くないですが瑠璃色の美しいのがいました。
トンボは、森林内においては、やはりカトリヤンマです。ただ、茂みの中を飛ぶのでなかなか採れません。ハラナガイトトンボは、7匹掴まえましたが6匹が異なる種でした。驚きです。
甲虫は、大木にしがみついていた大きなオオタマムシ、非常に残念だが頭部が行方不明の大きなゾウカブトの雌、黒い筋のあるミドリジャコウカミキリ、変わった模様のカミキリなど面白いけど、やはりチョウやトンボに目がいってしまいます。セミもいろいろ啼いていましたが見つかる訳がありません。
<イタコアチアラ、リオ・プレト・ダ・エヴァ>
緑が豊かだと云って、昆虫が多いとは限らない。乾期の8月だからかどうかは分からないが好採集地を見つける方が難しいそうだ。
イタコアチアラの町近郊の林では、アマゾンでは珍しい黄色いアゲハであるマルバネキオビアゲハを採った。他に数種類のマエモンジャコウアゲハがいた。エラトドクチョウはいたのだがミュラー型擬態の相手であるメルポメネドクチョウは、ここでは見られなかった。タテハの仲間は、そんなの多くない。モルフォチョウは、ヘレノルモルフォがいた。全般的にチョウは少ない。
トンボは、ヤンマを3種類掴まえたが、中南米のヤンマは、何故緑っぽいのだろうか。黒っぽい翅のチョウトンボみたいなトンボが林内の小枝から小枝に飛び交っていた。このトンボは、枝に止まってから、ちょこちょこと歩いて移動するのが見られた。
リオ・プレト・ダ・エヴァでは、町から車で20〜30分の森林内で採集したが、更にチョウは少なくなった。タテハチョウは、最悪である。林内で見つけた小川周辺では、数が少ないが初めてのシジミタテハが多かった。翅の透明なスカシマダラに似た?オオシジミタテハやジャノメチョウにそっくりなオルフィタウラジャノメシジミタテハなどなど。ジャノメチョウは、ピオラウススカシジャノメ、後翅の青い紋が美しい?ルリモンオオヒカゲ、そしてアクトリオンコノハジャノメなど。ここのアクティオンコノハジャノメは、ノーバ・オリンダ・ド・ノルチとは別亜種であり、ペルーのイキトスと同じような青い紋がある。
この小川周辺では、チョウよりもトンボが良かった。エンジ色に輝いていたミナミカワトンボのようなトンボ、サナエトンボは2種もいた。ハラナガイトトンボも2種類いた。
セミは、多分2〜3種類啼いていたが、東南アジアからすると少ない。今回は、抜け殻を見ただけである。伐採後では、ワインレッドの大きなコメツキムシと、これまた大きなアリバチを掴まえた。
2 ブラジル南部
(1)自然について
アマゾンの熱帯雨林とは異なる自然を期待していた。大西洋側に連なる山脈も大きな魅力なのだが、開発で緑は減少してきているという。
高原の町イグレジーナ周辺は、高くはないのだが、山々に囲まれていた。ただ、ここも牧場が広がっていたので、見た目以上に森林は少ない。
山道で車に轢かれたアルマジロを見た。森林が分断され車がスピードを上げて走っているので、当然の結果であろう。動作ののろい小さなネズミ風の動物も見たが、トラックがやってくる前に道路を渡りきることができた。
(2)昆虫について
見た目以上に採集できそうな場所は少ないのだが、最初の2日は麓で、後の3日は山に上って採集を行った。山の上の方で、林内での採集場所を見つけたのでまあまあの結果となった。
アゲハチョウは、ポリダマスアオジャコウアゲハ、ポリスティクトゥスアオジャコウアゲハ、ペッレブスマエモンジャコウアゲハ、アガウスマエモンジャコウアゲハ、?マエモンジャコウアゲハ、リシトウスシロスジタイマイ、フトオビアゲハに似たリコプロンアゲハ、ヘクトリデスアゲハと賑わっていた。
シロチョウは、ピレアオオキチョウ、キプリスオオキチョウ、スタティラオオキチョウなどの5種類のオオキチョウ、3種類のキチョウ、ネヘミアツマナミヒメシロチョウ、?コバネシロチョウ、メリテコバネシロチョウなどである。
マダラチョウは、オオカバマダラ、パラグアイにもいたリシムニアキオビマダラ、エウリアナッサオオキオビマダラ、プシディイトンボマダラやスカシマダラの仲間である。
ジャノメチョウは少なくヘルメスアメリカジャノメ、ムスコサアメリカジャノメ、ネキスアメリカジャノメなど4種である。
タテハチョウは、ごく一般的な色彩(赤い斑紋に黄色い帯)のエラトドクチョウ、エウリアナッサオオキオビマダラの色彩に似たエティッラドクチョウ、ヒョウモンドクチョウ、チャイロドクチョウ、ラギンドクチョウ、アマテアカバイロタテハ、エラトドクチョウに似たランスドルフィミナミヒョウモンモドキ、レテツマグロオナガタテハ、エワレテタテハモドキ(未採集)、メリディオナリスウラモジタテハ、カンドレナウラモジタテハ、翔んでいるとき赤い斑紋がとても目立って美しい小形のピラムスベニモンタテハ、緑色のウラギンタテハ2種と白い翅のウラギンタテハ2種、赤い斑紋を持った?オレンジタテハ、フェブルアカスリタテハ等々といろいろいたし、採り逃がしたもの見ただけのものもいろいろいた。
シジミタテハは、非常に少なく最終日に2種類の小形種を掴まえただけである。
シジミチョウは、中南米では余りぱっとしないのだが、ここでは他の場所よりは見栄えのする種類もいた。青い翅が美しい大形のマルシアスルリフタオシジミ、翅裏の緑色が美しい?ウラアオシジミ、エグリシジミみたいな翅のシジミ、中南米にごく普通にいるカッシウスカクモンシジミ、2種類のカラスシジミの仲間等々であった。
セセリチョウは、初めて見る小形種が数多くいた。中形種は、オナガセセリやアオネセセリの仲間たちである。
モルフォチョウは期待していたのだが、残念ながら1匹も見ることがなかった。
数多くの種類のチョウたちを見かけたのだが、個体数はそう多くなかった。
トンボは、牧場脇の水路と小さな渓流に群れて飛んでいた。イトトンボ3種、トンボ3種、カワトンボ1種、小形のルリボシヤンマ1種である。山の上では、トンボが2種いただけだった。その他には、全世界何処にでもいるウスバキトンボ(未採集)や採ることが出来なかったがヤンマも2種類見かけた。
セミは、いろいろ啼いていたが、やはり採ることが出来なかった。
甲虫は、林道に積み重ねてあった材木を見つけたので、トラカミキリの仲間を始め、7〜8種類のカミキリムシを捕まえることができた。白い翅のゴミムシダマシ、ミツギリゾウムシ、コメツキムシなどいろいろいた。他にもハムシの仲間が面白かった。
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