夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 想い出の昆虫記 |
4.1.2.11−1 想い出の昆虫記 | ||||||
2001年8月13日 森みつぐ
夏休み、捕虫網を買ってきた帰り、家の前にある公園で大きなチョウを掴まえた。それが、シンジュサンとの最初の出会いであり、私の昆虫採集のきっかけとなった昆虫でもある。このシンジュサンは、かの有名なファーブル昆虫記に出てくるオオクジャクサンと同じ仲間であることを後で知った。この大きなチョウの名前を知りたくて、初めて小学館の子ども用の図鑑を買って貰った。そして、その後昆虫採集と標本の作り方の図鑑も買ったのである。
翌年には、もう本格的な昆虫採集が始まっていた。そして、その年の冬には、家から2km北にある私の昆虫採集の本拠地であった120〜130m四方の雑木林・日の丸公園でシンジュサンの繭を見つけた。それから数年の間は家の中は、5月になると滅茶苦茶である。家の中で大きなシンジュサンが何匹も、夜中に賑やかな舞踏会が開かれるのである。しかし、残念ながらファーブル昆虫記みたいに、雌のシンジュサンをめがけてやってくる雄は、1匹もいなかった。一つ原因が考えられるのは、私のシンジュサンは、屋外のシンジュサンより一月位早く羽化していたように思える。シンジュサンの幼虫は、綺麗な幼虫である。でも、あれから幼虫も成虫も見ていない。また、のんびりできる日々が送れるようになったら、育ててみたいものである。
シンジュサンと日の丸公園は、私の昆虫採集の1ページ目を飾っている。
1970年頃までの
120〜130m四方の広さがあり、東西南方向は、水田や畑に囲まれていて、北は、栄小学校と神社がありました。
先日、インターネットの検索サイトで「日の丸公園」を検索するとトップにお目当てのサイトがあった。札幌の北栄地区にある「日の丸公園」の森林が写真入りで、「鬱蒼と生い茂る木々による夏の避暑地・・・」として紹介されていた。
「日の丸公園」がまだ残っていたのは、嬉しいことだが、この紹介文みたいに誉めるつもりはない。私が子どもの頃の日の丸公園は、森林全体が笹に覆われ、春には、水芭蕉も顔を出し、それはそれは豊かな植生であった。ところが、高校生の時、日の丸公園に、ブルドーザが入り込み、小さな木を含めて地面が掘り起こされ均されてしまった。芝生が植えられてしまったのである。この衝撃的な出来事によって、私は、それ以来そこには行かないことにした。自然保護についても、真剣に考え出すきっかけになったかも知れない。写真に写っていた森林は、殺風景な木立にしか見えてこなかった。
2001年7月28日 森みつぐ
子どもの頃、秋になると真っ赤に染まったトンボが有刺鉄線や木の柵に、ぎっしり止まっているのを見るのが好きだった。
あの頃トンボと言えば、赤トンボ、車トンボ、矢車トンボ、そしてオニヤンマくらいである。札幌の中心から5〜6km離れた場所にも、水田や牧場がまだあった。今、思えばアカトンボは、ナツアカネ、アキアカネかマユタテアカネである。そしてクルマトンボとは、のしめ模様のあるトンボだ。ノシメトンボ、コノシメトンボ、マユタテアカネだろう。あの頃、顔に眉のあるトンボがいたことを覚えているからマユタテアカネがいたことは確実だ。何もかも、ごちゃ混ぜのトンボ模様だった。ヤグルマトンボに該当するのは、華奢で美しいミヤマアカネである。そして、一番格好いいオニヤンマがいる。しかし、こんな平地にいるはずがない。昆虫少年ならば、誰もが何かしらのオニヤンマがいたはずであろう。以前テレビを観ていて、素人の撮ったビデオが紹介されていたが、そこに登場したオニヤンマは、コヤマトンボであった。私の子ども時代のオニヤンマは、ルリボシヤンマとオオルリボシヤンマである。一度、日の丸公園の小川の縁の木に止まっていたオニヤンマがいた。遊び友達らは、小川を跳び越せなかったのだが、小さな体でも跳躍には自身があった私は、小川を跳び越え素手で掴まえたことを覚えている。オニヤンマを掴まえて、胸を張っていた。
野原を埋め尽くしていた枯れ草の1本1本に、赤トンボが止まっていた日本の原風景は、もう何処へ行っても見ることができないのかも知れない。秋津島は、もう遠い過去のことである。
ひとつ、私には叶ってない夢がある。まだ昆虫採集を始めてなかった頃、捕虫網と虫籠を持って虫採りに2km先の日の丸公園へ行った。妹と一緒だったと思う。その林の開けた湿地帯で、妹がトンボがいると指さした。視力の弱い私には、どう凝視してもトンボは見えてこない。しかし、妹がいるという場所に、網を被せると、やっぱりトンボがいた。中形の頑丈なトンボだった。そして、一番印象が残ったのは、額の部分がオレンジ色なのである。今でも想い出す。エゾトンボだったのかも知れないが、今でもあのときのオレンジ色の額を持ったトンボがいたことを信じている。いつかは、また出会えるかも知れないと、今日も歩き続けている。
エゾトンボの顔
オレンジ顔のトンボ??
2001年8月19日 森みつぐ
中学1年だったか、2年だったかはっきりしないのだが、野原には、未だに雪が残っていた。多分4月初旬の春休みだったと思う。そろそろ日の丸公園を見に行きたくて家を出た。100mも歩かないうちに、足下から突然チョウが翔び出してきた。クジャクチョウである。こんなに早くチョウを見るなんて初めてである。びっくりしてしまった。初蝶と言えば、モンシロチョウであるが、この時ばかりは、クジャクチョウであった。新鮮な個体だった。
クジャクチョウは、北海道では平地でも見られる。イラクサの葉に、黒い幼虫が群がって、へばり付いていたのを思い出す。本州中部では、山地性のチョウである。最近は、クジャクチョウの美しさを再認識している。世界を旅して、やはりクジャクチョウだと。
◇◇クジャクチョウは、越冬するチョウなので初蝶とは言わないのだが、その頃は春初めてみるチョウが初蝶だった。これを書いた後で、当時のメモ帳(採集ノート)を開くと「クジャクチョウ1968年3月24日」と記されていた。その年の初蝶は、4月14日エゾスジグロシロチョウだった。◇◇
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Copyright (C) 2001 森みつぐ /// 更新:2002年1月20日 /// |