夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 想い出の昆虫記
夢惑う世界4.1.2.11−3 想い出の昆虫記

2001年8月21日  森みつぐ

 私が小学生の頃の札幌は、少し郊外に行けば、そこは、もう野原になっていた。7月も下旬を過ぎるとあちこちからギース・チョンと鳴く声が聞こえてきた。野原で鳴き始めるとすぐに、私の家でも鳴き始める。キリギリスが大好きなのである。狙ったキリギリスは、百発百中で掴まえることができる技を持っていたと自負している。虫籠は、割り箸と竹ひごを使って自分で作っていた。そんなに大きくない虫籠なので、いつも5〜6匹が精一杯であった。
 夏のある日、虫籠を窓辺に置いて、僅かの間家を離れていた。家に戻ってみると、キリギリスが、虫籠諸共消えていた。ひと言欲しいと言ってくれれば、キリギリスを上げたのに。また、すぐに虫籠を作り始めて、キリギリスもまもなく鳴き始めた。
 北海道に棲むキリギリスは、翅が腹端より長いハネナガキリギリスと云う。本州から九州にかけて棲む種は、翅が腹端より短くキリギリスと云う。沖縄本島と宮古島でキリギリスの鳴き声を聞いたとき、どんな翅か見たくて掴まえたことがある。そうすると、翅が腹端より長い種であった。私は、暑い地方に行くほど翅が短くなるとばかり思っていたが、感は外れてしまった。オキナワキリギリスと云う。日本には、もう1種類、オホーツク海沿岸にキリギリスが棲んでいると云うが、どう鳴くか聞いてみたいものである。

  ▽自宅での成虫期間の記録▽
   1 1967年 7月28日 〜 11月18日   2 1968年 7月31日 〜 12月 4日
   3 1969年 8月10日 〜 12月30日   4 1970年 7月28日 〜 11月30日
   5 1971年 8月 8日 〜 12月16日   6 1972年 7月30日 〜 12月 5日

キリギリス

キリギリス (1992年8月22日 山梨県甘利山にて)


翔ぶバッタ
翔ぶバッタ




2001年8月21日  森みつぐ

 小学低学年の時には、野原を駈け巡り、ついでに畑の中まで駈け巡っていたものである。そんなある日のこと、トウキビ畑を探検していて畑から出てくると、服に大きな芋虫が付いていた。その芋虫を手で掴むと、オレンジ色の角を2本頭から出した。黒と黄色の縞模様が映える愛らしい芋虫であった。この芋虫がキアゲハの幼虫であることは、まもなく知った。ただ、この芋虫の行く末は覚えていない。
 それから時が過ぎ、中学生のとき、日の丸公園の傍らの野原で産卵するキアゲハを見た。小さな水路のセリの葉に小さな真珠みたいな卵を産み付けていた。そして、近くで鳥の糞みたいな小さな幼虫を見つけた。そして、キアゲハを卵からの子育てが始まった。
 食草のセリは、1週間に一度、2km先の日の丸公園まで採りに行く。幼虫が小さいときは、それで良かったのだが終令を迎えると、それまでの食欲の倍どころではなくなった。それに加え、セリの葉は、小さい。仕舞いには、週末まで持たなくなり、飼育箱の中では、悲惨な状態になっていた。幼虫が、蛹を食らっていたのである。私が欲張って、いっぱい飼い過ぎていたのが原因なのだが。ごめん、ごねん。

キアゲハ/採集ノート キアゲハ
キアゲハの蛹と羽化(1968年 採集ノートより) キアゲハ(1994年9月10日 山梨県甘利山にて)


翔ぶチョウ
翔ぶチョウ



2001年12月30日  森みつぐ

 私が子どもの時、オニヤンマと言っていたトンボは、実はオニヤンマでなかったことは、昆虫採集を始めた頃には、分かっていた。しかし、日の丸公園や円山、藻岩山などにはいなかったので、どうしても採集してみたかった憧れのトンボだった。
 高校生になり、少し行動範囲は広くなって、札幌市の隣の江別市にある野幌森林公園も、私の採集地の一つになっていた。ある日、森林公園の低い針葉樹が疎らに立っている広い空間の道を歩いていた。真っ青な空が広がっていた日だったと思う。低く飛んでいるヤンマと擦れ違った。“あ!オニヤンマだ!”黄色い帯の腹部でオニヤンマであることは、すぐに分かった。網を持つ手が少し緊張したのが感じとれた。一度旋回し、二度目に近付いてきたとき、網を振ったら、ずしっという手応えがあった。初めて掴まえたオニヤンマの雄である。
 その当時使用していた網は、直径36cmでありよく入ったものである。
 今でも、オニヤンマの雌と擦れ違うときは、その大きさに敬服する。本当に大きいとんぼめがねであることか。


オニヤンマの顔
オニヤンマの顔♀



飛ぶトンボ
飛ぶトンボ



2001年12月29日  森みつぐ

 中学生の時、校庭の木に角のある幼虫を見つけた。この頃、角のある幼虫は、何でもスズメガである。早速、家に持ち帰って育てることにする。
 この幼虫の角は、不思議だった。2本付いているのである。そして驚かすと、その2本の角の先から、突然、肉角を出すのである。私の方が、驚いてしまう。そして、また不思議な格好で、じっと静止している。(この格好が、名前の由来となっている。)
 いつしか飼育箱の隅っこで、焦げ茶色の硬い繭を紡いで閉じ籠もってしまった。しかし残念ながら、この繭からは、ガは這い出してこなかった。
 この幼虫の正体を知ったのは、1〜2年後の学校の図書館にあったピータ・ファーブ著「昆虫」のカバー(裏面)を飾っていたからである。


シャチホコガの幼虫 シャチホコガの蛹

シャチホコガの幼虫(体長70mm)と蛹(体長28mm)
(1970年採集ノートより)


翔ぶチョウ
翔ぶチョウ


Copyright (C) 2002 森みつぐ    /// 更新:2002年9月29日 ///