夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 迷チョウ昆虫記
夢惑う世界4.1.2.13−3 迷チョウ昆虫記

2004年12月30日  森みつぐ

 3種類目の迷チョウは、カワカミシロチョウだった。
 初めての石垣島で同じトガリシロチョウ属のナミエシロチョウが花々に群をなしているのを見たとき、すごく感動したものである。八重山諸島のナミエシロチョウ雌の翅裏は、鮮やかな黄色をしている個体が多い。しかしだんだん見慣れてくると、“あっ!またお前か!”になってしまう。
 そんなある時、バンナ岳を歩いていた。バンナ岳山頂への道は、今では車が楽に擦れ違えるだけの幅に拡張されてしまったが、その当時は、車が山頂付近を除いて1台通れる道幅ほどしかなく、路傍には、白い花を咲かせた草で覆われていた。そこにナミエシロチョウ、スジグロカバマダラ、ルリウラナミシジミなどが訪れていた。そして頂上付近では、その後良く迷チョウを掴まえたものである。多分バンナ岳であったのだろう。掴まえたときには、全くカワカミシロチョウだとは気付いていなかった。旅を終えて自宅に戻って、整理をしているときである。ナミエシロチョウにしては、少し違うような気がした。図鑑と睨めっこしていると、どうもカワカミシロチョウみたいである。何回か調べ直してみたが雌のカワカミシロチョウであることは確かであった。今まで採集したナミエシロチョウの中に、他にも混じってないか調べ直したが、残念ながら、この一匹だけであった。
 フィリピン亜種の雌である。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1983年7月27日 沖縄県石垣島バンナ岳 フィリピン亜種 ♀1

カワカミシロチョウ♀表 カワカミシロチョウ♀裏
カワカミシロチョウ(フィリピン亜種 Appias albina semperi)♀


2004年12月30日  森みつぐ

 瑠璃色をしたマダラチョウは、一度は見てみたかったチョウの仲間たちである。8月石垣島バンナ岳山頂付近を歩いていた。いつもの通り、ナミエシロチョウやスジグロカバマダラが数多く花に訪れていた。遠くの方では、カラスアゲハも来ていたのが見えた。“何かいないか”と思いながらカラスアゲハの方に向かって歩いていると、カラスアゲハは反対車線の方へと翔んでゆく。“あれっ!なんか違うような気がする!”もう一度近付くと、また反対車線の方へと翔んでゆく。“違うよ!カラスアゲハじゃないよ!”今度は、ゆっくりゆっくりと近付いてゆく。鼓動が激しくなってくるのが感じられた。最高の瞬間である。網にしっかり入ってくれた。マルバネルリマダラの雌であった。
 その後、林内に入ってゆくと、また一匹目撃することができた。多分それも雌だろう。フィリピン亜種である。海外と日本の接点が、ここ石垣島のバンナ岳山頂にあった。ここで羽化したのだろう。何回見ても、飽きることのない美しさを持っていた。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1983年8月4日 沖縄県石垣島バンナ岳 フィリピン亜種 ♀1

マルバネルリマダラ♀表 マルバネルリマダラ♀裏
マルバネルリマダラ(フィリピン亜種 Euploea leucostictos eunice)♀


2004年12月30日  森みつぐ

 昨日マルバネルリマダラを採ったこともあり、今日もバンナ岳山頂に来ていた。山頂付近の2〜300mほどの距離を行ったり来たりしながら、何かしらいないかと物色してゆっくりと歩き回るのである。この頃までは、この辺りにも白い花が咲き乱れていて、スジグロカバマダラ、リュウキュウアサギマダラ、ナミエシロチョウなどが数多く吸蜜しに訪れていた。その後、道路が整備されるようになってからは、路傍の草花も少なくなって訪れるチョウも少なくなった。
 2日続けて迷チョウに出会うはずもないしと思いながら歩いていると、リュウキュウアサギマダラに似たマダラチョウを見つけた。最初は、リュウキュウアサギマダラかと思ってみていたのだが、どうも様子が違う。先ほどから翔んでいたのは気付いていたのだが、すっかりリュウキュウアサギマダラだと思い込んでいた。早速、慎重に掴まえてみるとやはり違っていた。そしてもう一匹翔んでいた。同じ所に2匹が翔んでいたのである。まだまだこの頃は、海外のチョウを見る目が養われていなかったのである。図鑑でしか見ることがなかったから、当然と言えば当然のことではあった。フィリピン亜種の雄と雌だった。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1983年8月5日 沖縄県石垣島バンナ岳 フィリピン亜種 ♀1♂1

ウスコモンマダラ♀表 ウスコモンマダラ♀裏
ウスコモンマダラ(フィリピン亜種 Tirumala limniace orestilla)♀
ウスコモンマダラ♂表 ウスコモンマダラ♂裏
ウスコモンマダラ(フィリピン亜種 Tirumala limniace orestilla)♂


2004年12月30日  森みつぐ

 マルバネルリマダラを採ってから、早一年が経った。今回の旅も、もう最終日である。最後の日は、やはりバンナ岳と決まっている。そろそろ時間だなと思いながら、山頂の迷チョウコースを行ったり来たりを繰り返していた。そしてとうとう、その時間が来たので戻り始めた。すると何処から来たのかお花畑に黒っぽいチョウがいるではないか。“おっ!なんだろう!!”と思いながら、ゆっくりと近付き、そして仕留めることができた。マサキルリマダラである。
 マルバネルリマダラに比べるとちょっと小さいが、初めてみるチョウは何でも美しい。台湾亜種の雄だった。今まで掴まえた迷チョウの多くは、フィリピン亜種が多かった。やはり台風の進路に重なるフィリピンからの迷チョウが多いように思われる。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1984年8月5日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾亜種 ♂1

マサキルリマダラ♂表 マサキルリマダラ♂裏
マサキルリマダラ(台湾亜種 Euploea tulliolus koxinga)♂

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