夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 迷チョウ昆虫記
夢惑う世界4.1.2.13−4 迷チョウ昆虫記

2004年12月30日  森みつぐ

 迷チョウは、風に上手く乗って翔ぶチョウが多いことは想像が付く。風に向かって力強く翔ぶタテハチョウなどは、途中で力尽きて海の藻屑となってしまうだろう。マダラチョウは、その点風任せの所があるので渡りをするが如く海を越えて日本にやってくる。リュウキュウムラサキやヤエヤマムラサキも力強く翔ぶと云うよりは、滑空するのが好きなようだ。そして体脂肪率も高そうだ。展翅をするとすぐ翅が脂ぎってしまう。
 シジミチョウも同じだろう。滑空することのできないシジミチョウは、すぐに力尽きてしまう。適当に風任せに翔んでくると海を越える。
 石垣島のバンナ岳登り口からバンナ岳とは反対方向の道を行くと、また楽しい。バンナ岳の道とは違って、舗装されていない林道が続く。少なくとも私が歩いていたときには、まだ未舗装だった。しかし反対側の登り口の辺りから、2〜300mほど舗装されてしまったのだが。起伏のあまりない道を歩きながら、2時間あまりの距離を2回ほど行ったり来たりしていると1日は終わる。その道の傍らに、水色をしたシジミチョウがひらひらと翔んでいるのを見つけた。
 ウスアオオナガウラナミシジミは、与那国島の宇部良岳山頂付近では数多く見かける。多分土着していることだろう。また石垣島でも、この付近でたまに見かける。西表島でも掴まえたことがある。八重山には、棲み着いているように思われるのだが、どうだろうか。

 今まで採集したウスアオオナガウラナミシジミは、次の通りです。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1984年10月11日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♂1
2 1984年10月13日 沖縄県西表島大富 台湾・フィリピン亜種 ♂1
3 1985年11月2日 沖縄県与那国島祖納 台湾・フィリピン亜種 ♂2
4 1986年8月1日 沖縄県与那国島祖納 台湾・フィリピン亜種 ♂5
5 1987年1月1日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♂1
6 1988年11月3日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♂6
7 1988年11月5日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♀2♂8
8 1988年11月6日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♂2
9 1989年11月1日 沖縄県与那国島祖納 台湾・フィリピン亜種 ♂2
10 1989年11月2日 沖縄県与那国島祖納 台湾・フィリピン亜種 ♀1♂3
11 1993年10月22日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♂1
12 1993年10月24日 沖縄県石垣島バンナ岳 台湾・フィリピン亜種 ♂1

ウスアオオナガウラナミシジミ♀表 ウスアオオナガウラナミシジミ♀裏
ウスアオオナガウラナミシジミ(亜種 Catochrysops panormus exiguus)♀(No.7)
ウスアオオナガウラナミシジミ♂表 ウスアオオナガウラナミシジミ♂裏
ウスアオオナガウラナミシジミ(亜種 Catochrysops panormus exiguus)♂(No.6)

2004年12月30日  森みつぐ

 今まで迷チョウは、リュウキュウムラサキとヤエヤマムラサキを除いて、石垣島、それもバンナ岳でしか採集していなかった。与那国島は、石垣島よりも台湾に近い島である。訪れるときには、いつも何かに会えるような期待をして歩いている。
 以前与那国島には、17人乗りの小型プロペラ機しか飛んでなかった。その分、幸か不幸か便数が多いため朝一番の便で行って、午後の最終便で帰ってくると云う日帰りの昆虫採集ができた。ところがいつからかYS11が飛ぶようになって午前、午後の各1便となって、ほんの数時間の滞在となってしまった。
 空港に到着すると、祖内の部落を経由して宇部良岳へと向かう。鬱蒼とした森林はないのだが、ここにはヨナグニサンが棲んでいると云う。一度はこの手でその幼虫を持ってみたいものである。山への道を上ってゆく途中、白いチョウが足元から翔び立った。“なんだ!もしかするとタイワンシロチョウ!!”網を振るけどなかなか入ってくれない。そのうち遠くへと翔んで行ってしまった。がっかりしたが、そのまま山頂へと向かう。山頂に辿り着いてまもなく帰る時間となり、帰路につくことになる。
 “帰り、また会わないかな!?”なんて考えながら歩いていると、一匹掴まえた。そしてまた上っているとき見つけた場所にも、またいた。結局、雄2匹雌1匹を掴まえることができた。多分、与那国島で繁殖したチョウだろう。台湾亜種であった。
 その後、石垣島でも2度掴まえた。石垣島でも土着している可能性がある。

 今まで採集したタイワンシロチョウは、次の通りです。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1985年11月2日 沖縄県与那国島祖納 大陸・台湾亜種 ♀1♂2
2 1990年10月29日 沖縄県石垣島バンナ岳 大陸・台湾亜種 ♂1
3 1994年7月22日 沖縄県石垣島於茂登 大陸・台湾亜種 ♀1♂1

タイワンシロチョウ♀表 タイワンシロチョウ♀裏
タイワンシロチョウ(亜種 Appias lyncida eleonora)♀(No.1)
タイワンシロチョウ♂表 タイワンシロチョウ♂裏
タイワンシロチョウ(亜種 Appias lyncida eleonora)♂(No.2)

2004年12月30日  森みつぐ

 与那国島を歩くときは、いつも炎天下の中をひたすら歩く。木陰になるような木が見当たらないのである。でも、また来たくなるような島なのである。今日も空港から宇部良岳に向かって歩き始めた。ときどき翔んでゆくオレンジ色に見えるチョウは、カバマダラである。山頂に近付くにつれて、風が強くなって行く。直射日光を受けて暑いはずなのだが、この強い風のお陰で涼しく感じる。もう少しで山頂だという最後の坂道を上っていると、強風に喘いでいるチョウを見つけた。“おっ!これだ!!”初めて見るルリマダラである。翅が少々痛んでいるのは、迷チョウたる所以であろう。台湾亜種の雌である。

 その後、海外に行くようになったのだが、シロオビマダラは、この亜種とは似ても似つかぬパラワン島の雄を掴まえただけである。

No 採集年 採集地 亜種名 雌雄数
1 1987年8月15日 沖縄県与那国島祖納 台湾亜種 ♂1

シロオビマダラ♂表 シロオビマダラ♂裏
シロオビマダラ(亜種 Euploea camaralzeman formosana)♂

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