夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 迷チョウ昆虫記 |
4.1.2.13−5 迷チョウ昆虫記 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004年12月30日 森みつぐ 西表島では、迷チョウを見かけることが少ない。石垣島より広いのだから、同じように迷チョウが訪れていることだろう。しかし島全体が鬱蒼とした森林に覆われて、チョウにとってはバンナ岳みたいな、ちょうどいい目標となる場所がないため分散してしまっているように思われる。しかし運がいいときには、目の前に現れてくれることだろう。
大富林道は、私の好きな道である。大富部落から500mほど農道を行くと、その入り口となる。昆虫を採集しながら3時間ほどすると、仲間川の展望台に辿り着く。その先は、西表島縦断道路となり、浦内川へと続くみたいだが、私は歩いたことはない。
ある日、そんな大富林道を歩いていると、林道に白く咲く花に白いチョウが訪れていた。“あれっ!”と思い、掴まえてみるとスジグロシロマダラだった。図鑑に載っていた迷チョウのスジグロシロマダラである。スジグロカバマダラの白い奴というイメージで覚えていた。そいつが林道にいる。三日間、大富林道を歩いていて8匹も掴まえてしまった。ここで繁殖したのだろう。途中で出会ったチョウ吉さんも、何処かしら心が弾んでいるように見えた。そして白浜の方では、タイワンモンシロチョウが発生していると、訊きもしないことを曰っていた。
フィリピン亜種で、そして8匹全てが雌であった。ひょっとするとマダラチョウの仲間は、雌だけで単為生殖するのではないだろうか。産まれてくるのは雌だけで、2代は続かないが、その間に雄が同じように迷チョウで飛来すると、その先が続いてゆく。違うだろうか。
それにしても、初めてのスジグロシロマダラは美しかった。
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スジグロシロマダラ(亜種 Anosia melanippus edmondii)♀ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004年12月30日 森みつぐ 石垣島のバンナ岳周遊道もすっかり拡張されて、路傍に咲き乱れていた花々も少なくなってしまった。海を渡ってきた迷チョウたちも、ここに長らく居座る理由はなくなってしまった。
バンナ岳と反対側の林道を歩くことが多くなってきた。今日もその道を歩いていた。そして反対側の折り返し地点に近付いていたとき、傍らに咲く花の間から、見かけぬチョウが現れた。“あっ!カバタテハだ!!”何とか掴まえることができた。なんとも不思議なチョウである。力強い翔び方をしないので、強風に上手く乗り運良く石垣島に辿り着いたのであろう。
その後、バンナ岳周辺と於茂登岳周辺で2度出会った。そのうち一匹を掴まえることができた。多分、カバタテハも石垣島に土着していることだろう。台湾亜種の雌と雄である。
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カバタテハ(亜種 Ariadne ariadne pallidior)♂ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
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カバタテハ(亜種 Ariadne ariadne pallidior)♀ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004年12月30日 森みつぐ 与那国島と云えば、すぐ頭に浮かび上がるのは私の場合は、やっぱりヨナグニサンである。ヤママユガの仲間は、親しみが湧いて好きである。アオナガイトトンボ、ヒメキトンボ、シロミスジなど他にもいる。宇部良岳山頂辺りには、シロミスジが良く訪れているのを見かける。シロミスジの場合は、西表島の大富林道を歩いていると、入り口に近いところで時折掴まえたりすることができる。ノブオオアオコメツキは、これは美しいコメツキムシである。歩き廻っていると道ばたで拾ったりするので嬉しい。
今日も宇部良岳の山頂を目指して歩いていた。もう少しで山頂と云うところで、白っぽい弱々しく翔ぶチョウが地面すれすれに舞っていた。すぐにクロテンシロチョウだと分かった。初めての海外・台湾へ行ったのが、前年の夏のことだった。
上手く風に乗ると、こんなひ弱なチョウでも迷チョウとなる。多分、もっともっと多くのチョウたちが大海原の藻屑となって消えてしまっていることだろう。台湾亜種の雌だった。
2006年11月27日 森みつぐ 於茂登岳麓の林道を歩いていたら、茂みの中をひらひらと翔ぶチョウがいた。なんとクロテンシロチョウである。何匹も見かけたので、ここで繁殖しているようである。その後、西表島でも一匹掴まえた。最近は、迷チョウの一時的繁殖ではなくて、温暖化の影響で定着してしまいそうな勢いである。台湾での普通種は、八重山諸島でも、ごく普通に見かけるときが、まもなくやって来るかも知れない。
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クロテンシロチョウ(亜種 Leptosia nina niobe)♀ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
2004年12月30日 森みつぐ 石垣島の於茂登岳山麓の林道を歩いていた。この道も私の好きな道である。チョウやトンボがいろいろ現れる。そして糖蜜の溢れる古木には、大きなサキシマヒラタクワガタが来ている。日射しの差し始めた朝早く行くと、道の上では、ミナミトンボがせっせと食事の最中である。まだこの時間帯ならば、網も届くのだが、まもなく網も届かない高い位置へと移ってゆく。
市内のバス停から朝一番のバスに揺られて於茂登部落までやって来て、そして山へと歩き出す。まだ外気はひんやりとしていて気持ちもいいのだが、まもなく陽は昇り、容赦なく太陽は照りつけるだろう。12時頃まで於茂登林道を歩き、そしてその後バンナ岳へと歩いてゆく。林道を歩いていると見かけぬチョウを見た。まずは、逃げられぬように掴まえる。網から出してみると、キタテハである。本土のキタテハが、ここまで翔んでくることは考えられないので、多分台湾から飛来してきたキタテハだろう。と云うことは、これも迷チョウである。
どうも見慣れているので迷チョウというのは、何か違和感があるが、確かに迷チョウ台湾亜種の雌である。
その後西表島で一泊したが、そこにはチョウ吉が泊まっていて、クロタテハモドキの幼虫を見つけたと言って喜んでいた。そしてなんと子どもの土産と称して、天然記念物のセマルハコガメを持っていた。彼らにとっては、珍しいことが全てなのであろう。
追記:南西諸島で見かけるキタテハは、日本本土からの飛来と言われているが、私は、八重山諸島においては、近隣の台湾からの飛来と考えた方が、無理がないように思われる。八重山諸島と台湾間のチョウの飛来は、意外と多そうである。(2007/9/23)
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キタテハ(亜種 Polygonia c-aureum lunulata)♀ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||
Copyright (C) 2006-2007 森みつぐ /// 更新:2007年9月23日 /// |