夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 緑の大地と青い空 |
4.1.2.5−1 緑の大地と青い空 |
2001年5月5日 森みつぐ
もう、すっかり慣れてしまったせいか都会の青空に違和感を持たなくなってしまっていた。
ほんの1時間前、エルサルバドルの帰り、ロサンゼルスの高層ビルを見下ろす飛行機の中にいた。ロッキー山脈の山々は、未だ若葉が萌え溢れていないと見えて、単調な色彩が続いている。そして、近付いてきたロサンゼルスを見ると、うっすらと霞の中に埋もれていた。山の頂のみが、やっとの思いで顔を出している位である。これが、本当に霧や霞ならば風情があるのかも知れないが、間違いなくスモッグである。
私が学生時代まで住んでいた北海道では、このような経験はなかった。大都会の札幌でも、覚えはない。しかし、就職をして沼津に出てきて、富士山の麓に低く霞がかかっているのを見た。最初は、霧かと思っていたのだが、どう考えてもスモッグである。その時、軽いショックを受けたことを憶えている。
スモッグ公害が騒がれた当時と比べると、今は、スモッグを構成する要素も変わってきていることだろう。工場排煙から始まり、自動車排ガスへと。エネルギーの使用量は、増え続ける。それに比例して浮遊塵も増える。決定的なダメージを与えるスモッグは抑制されても、慢性的に訳の分からぬものが宙を舞っている。便利さの追求が、くすんだ青空の原因であることは否められない事実である。
大気汚染物質、温室効果ガス等、人間の在るべき姿が問われている時代である。経済の優位性を保つために、先進国が、地球温暖化防止条約である京都議定書を拒否することは、許されないことであると共に、私たち一人ひとりも、改めて考えなくてはならない。
人間が、この地球上で生きてゆくのに、現在も、未来も、空は青いのが一番いい。田舎も、そして都会も。
2001年9月17日 森みつぐ
下北半島の東通村における風力発電基地の写真が、新聞に掲載されていた。太陽光発電や風力発電は、地球環境に優しいクリーン・エネルギーとして大きく期待されている。
ところが、新聞に掲載されていた写真を見て、ちょっと驚いてしまった。大きな風車の下には、建家が立っている。そして、各風車を連ねるように2車線の立派な道路が続いているのである。そもそも、この道路は何の目的で作られたのか知らないが、風力発電の為だとすると本末転倒としか思えない。美しい緑の中を、深く爪痕を残して縦断している。ここの生態系を、大きく狂わすことは確かなことと思われる。
目的は何にせよ、この道路の環境破壊はすごい。もう少し生態系に配慮した作りは出来なかったのだろうか。残念である。
風力発電のクリーンさは、私も認識しているつもりでいるから、それ自体は大いに進めて欲しいと思っている。だからと言って、自然環境を破壊していいと言うことではない。風力発電所も立地するためには、それ相応の基盤整備が必要になって来るであろう。当然、そこである程度の環境破壊は出て来ても、やむを得ないことだと思う。トレード・オフの関係にある二つ、何処かで妥協が求められる。しかし、それも限度がある。自然との調和を、もう少し考えて欲しいものである。
“どっちにせよ、原子力発電に比べたら、まだましだ!”だけでは、納得できぬ。地球環境に優しいクリーン・エネルギーとは、立地を含めてのことでなくてはならないだろう。
人間が、この地球上で生きてゆくのに、現在も、未来も、空は青いのが一番いい。田舎も、そして都会も。
2002年6月2日 森みつぐ
ここ沼津の市街地でも、カラスが増えてきた感がある。生ゴミの出す日には、朝生ゴミ置き場でカラスを見かけることが多くなってきた。ここ2〜3年のことである。それ以前には、頭上を低く飛ぶようなカラスは、余り経験がなかった。
2〜3年前と言えば、沼津市のゴミ袋が有色から透明に変わったときである。ゴミ出しのルールを守らず、生ゴミの日に缶やビンを出したりする人が後を絶たず、已むを得ない処置だったのだが、カラスにとっては、非常に都合のいいことだった。鳥の多くは、視覚に頼って餌を見つける。視力の良さは、抜群である。
先日、カラスを取り上げたNHKの番組でも、カラスは視覚によって餌を見つけていることを実験を通して解説していた。
ルールを守らないほんの一握りの人たちのために、人間にとっては、厄介なカラスが増えている。カラスが、悪い訳ではない。カラスにとって生存しやすい環境を、人間側が提供しているだけなのである。悪役を演じたくて演じている訳ではない。全て人間がお膳立てをして、そしてカラスを悪役に仕立てているのである。
人と全ての野生動物が、仲良く暮らせるはずがない。ならば、不幸にしてしまう野生動物を近づけない工夫を人間側が採らなくてはならないだろう。同じ地球上の生き物として、相手を尊重するならば。
2003年1月6日 森みつぐ
チリ北部の砂漠を旅して、ふと感じた。砂漠の中を走るハイウェイの両側には、瓶の欠片やポリ容器でいっぱいであった。風に舞うような軽い物は、何処かへと飛ばされてしまっているのだろう。アタマス砂漠の中にある町カラマの郊外の草地には、ビニール袋などが硬い草に絡みついている。ポイ捨てゴミの問題は、何処の国でも同じように厄介な問題なのだろう。
多い少ないの差はあるとしても、日本でも同じ問題が当然のようにある。そこで一つポイ捨てゴミの浄化について考えてみた。それは、お年寄りの活用である。市町村や地域が、その地域に密着したお年寄りを有償で雇い環境美化推進員として働いて貰うのである。安くても、飽くまでも労働の対価として賃金を払う。高齢化社会の中で、お年寄りの自立を促し社会の一員として活躍の場を提供するのである。お年寄りの積み重ねてきた数多くの貴重な経験を、地域社会の中で大いに発揮して貰わなくてはならない。ポイ捨てゴミを回収するだけではなくて、ゴミを捨て難い社会へと移行してゆく役割をお年寄りには担って貰う必要がある。
高齢化社会の中で、お年寄りのパワーが期待される。その先駆けとして、ポイ捨て問題の解決を望みたいものである。
2004年7月24日 森みつぐ
最近旅するところは、半乾燥化した、いかにも昆虫が少ないというところが多くなっている。目的地への移動には、バスを利用する。バスの車窓からの景色を楽しみながら、今回の目的地を想像してみるのである。
半砂漠化した大地では、ところどころにあるブッシュが景観を和らげている。そんな景観を和らげようとしているのだが、現実は酷い。プラスティックがあちこちに散在して、景観は台無しである。ビニール袋、ペットボトル、何故こんなにも大地を汚しているのだろうか。特に街に近づいてくると、車道の両脇は、プラスティックの華が咲き競ったブッシュが一面を覆っている。棘々のあるブッシュにビニールが引っ掛かっているのである。ブッシュが密度高く広がっているところは、正に遠くから見ると、花々の群落を見ているかのようである。
人々は、便利さを求めていろんなものを作り出してきた。その先のことを考えず、ただひたすら作り使ってきた。全ての物に存在する光と陰のうち、陰の部分については極力考えず、そして目を瞑ってしまう。しかし現実では、光も影も形として現れる。陰の対策を放っておくと、いつか人々は、それにしっぺ返しを受けることになるだろう。
2004年10月25日 森みつぐ
地震、そして台風があるから、今の日本という風土があり、国土がある。日本を取り巻く4つのプレートがあるから、この日本列島が存在している。それ故、山が火を噴き、大地が揺れる。台風がもたらす雨は、梅雨明けのかんかん照りで干し上がった大地を潤す。日本列島の緑の豊かさは、見事なものである。地震、そして台風がこの日本を造り上げてきた。
しかし、それにしても地震や台風のエネルギーは、凄まじいものである。それをまともに受け止めたら、人間は、跡形もなくなってしまう。地震や台風と戦うのではなくて、上手くやり過ごすことが必要なのである。備えあれば、憂いなし。とは言っても、地震や台風のエネルギーにとっては、人間なんてちっぽけな存在である。ただただ人間は、通り過ぎるのをじっと待つしかないみたいである。
降りかかる災難に巻き込まれないように祈るしかない。日本は、そう言う風土の国であることを肝に銘じて、災害に備えておくしかないのだろう。自然の恵みは、それ以上に私たちを潤わせてくれるのだと信じて。
2005年2月15日 森みつぐ
南アフリカで開催される女子ゴルフのワールドカップに若手のホープ宮里藍選手が向かうというニュースを観て、“あんな治安の悪いところで行うんだ!!”とふと思った。それから数日して、優勝を知らせる新聞に、「ジョージ(南アフリカ)」と載っていた。ジョージは、昨年の冬に行って来たところである。
最初、そこが保護区とは知らず昆虫採集をしていたのだが、知ってからは、網をしまい込んだ。そう言えば、林道の看板に描かれていた地図には、私が歩いていたその先にゴルフコースがあったと、薄ら記憶に残っている。
私は、ここでゴルフについて書くのではない。保護区であるべきところに、地面を掘り返して造成されるゴルフコースがあるということである。日本も、同じかも知れない。国立、国定公園内にも、ゴルフコースがある。どう考えても、ゴルフコースが自然保護の分類になるとは考えられない。それどころか、誰が考えても自然破壊と思うだろう。
自然保護よりも経済を優先する意見は、特定外来生物被害防止法の規制対象となる外来種リストを作成する段階においても、例えば、オオクチバスを巡って意見の相違があった。私にとって、余り議論する余地のある内容とは思わないのだが、多くが経済優先の方が先行してしまう。人間社会とは、やはり異様である。
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Copyright (C) 2001-2005 森みつぐ /// 更新:2005年2月20日 /// |