夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 心のグラデーション
夢惑う世界4.1.2.6−4 心のグラデーション

2007年8月31日  森みつぐ

 読売新聞に、公共マナーについての世論調査が載っていた。「72.6%の人が自分自身に公共マナーが身についている」と言っているが、「マナーが悪くなったと感じている人は、88%」に上っている。他人のマナー違反には厳しい目で見ているが、自分自身に対しては、甘い一端が垣間見られる。マナーが悪くなっていないと感じているよりは、まだ救いがある88%であろう。ただ、このままマナー低下に歯止めがかけられなくては、更なる大きな社会不安に陥ることになるだろう。
 気配りや思いやりのない行動は、公共の場において頻繁に見かける。地域社会の崩壊、家庭の崩壊とともに、マナーは低下してきた。人を育てる環境が社会から消えてゆき、気配りや思いやりの心が育まれなくなった。物の豊かさとともに、マナーは低下してきた。マイカーや携帯電話に代表される便利なものを手にした結果、個人(利己)主義の芽が大きく育ち、他人よりも自分自身の欲望を優先するようになっている。
 マナー低下を食い止めるためには、「子どもたちの道徳教育」だけでは、片手落ちである。家庭や地域社会の再生、物と心の調和が取れた生活を取り戻すことができるかが課題となるだろう。


2008年1月12日  森みつぐ

 灯油価格が上昇している。北海道内1世帯あたりの灯油支出額は、前年同期比(11月〜3月)で4割増の13万2千円となる見込みとのことである。この灯油高は、原油価格の高騰によるものだが、世界中の投資ファンドなどの投機マネーが流れていることによる影響が大きい。
 最近、この投機マネーが、サブプライムローン「米低所得者向け住宅融資」問題により株式市場から商品先物市場に流れて、これまでの原油に加えて、金や穀物の価格が相次ぎ最高値を記録している。
 今、目先の金儲けだけに特化した投資ファンドによって、私たちの生活必需品である灯油や大豆、トウモロコシなどの穀物製品の価格が、どんどん値上がりしている。私は、この投資ファンドの金儲け方法(マネーゲーム)には、納得していない。バブル崩壊後、日本では、銀行に貯金をしたときの利率は、殆ど"0"に近いので、少しでも利率のいい投資金融商品へとお金が流れている。そして、そのお金が投資ファンドへ預けられ投機マネーとして、株式市場や商品先物市場などへと流れてゆく。その結果、物価上昇などとなって、私たちの生活を直撃するのである。
 私は、そんなシステムに納得していないので、投資(投機)目的の金融商品には、手を出さないことにしている。ただ、自分の将来を見据えて行っている個人年金は、本人のこのような意志にも拘らず、何処かの投資ファンドで高い利潤を狙った投機がなされているに違いない。お金とは、そう言うものかも知れないし、人間と言うものも同じかも知れないが、ただ、私は、納得していない。


2008年6月25日  森みつぐ

 最近、また温暖化対策の一環としてサマータイム制度の導入が検討され始めている。以前、サマータイム制導入が叫ばれていたときは、1時間早く退社して明るい時間を有効に使い労働時間の短縮をしようと言うものだったと記憶している。
 ところが、今回の目的は、温暖化対策であった。"温暖化?"と思っていたら、日本睡眠学会から、睡眠障害など健康の観点から検討する必要があるという提案があった。"1時間くらいで?"と思ったが、「温暖化対策」「睡眠障害」は、私には、ぴんと来なかった。
 そんな時、多くの自治体が地球温暖化対策の一環として、コンビニなどの深夜営業の規制が持ち上がっているとのニュースを聞いた。私は、以前から、この夜型社会には賛成していない。1時間のサマータイムによる睡眠障害どころではないはずであると思っている。
 地球温暖化対策と言うよりも、私には、人間本来の生活時間、生活空間を取り戻すことの方が先決であり、そのことにより、地球温暖化を始めとする多くの問題解決の糸口が見つかるような気がしている。


2008年8月1日  森みつぐ

 秋葉原で非正規雇用の青年による無差別殺傷事件が起きた。それ以前も、それ以後も昨今、通り魔による無差別殺傷事件が日本社会を震撼させている。このような重大な事件を起こした割には、余りにも原因がすっきりしない。家族への不満、社会への不満を口にはするが、何故、無差別に殺傷を起こさなくてはならなかったのだろうか。
 日本社会は、人を育てられなくなっていることは確かなようである。家庭、学校、地域社会、市町村、国が人を育てる環境でなくなってきている。地域社会は、既に崩壊の危機を迎え、学校では人作りよりも知識の詰め込みに走り出している。国は、新自由主義の下で、企業に有利な生活のおぼつかない安価な労働市場を作り出し、その結果、多くの労働者が不安定な生活に陥ってしまっていることは確かなことであろう。
 物が溢れ、携帯電話、パソコンと便利なネット社会になり、多様な生き方ができる社会となったが、これを享受できる人とは、自我が確立した人たちである。多くの人たちは、多様化した社会に振り回され、自我の確立が更に難しい状況となっている。そして、その先に事件が待ち受けている。目に見える物ばかりにこだわり、目に見えぬ心を疎かにしてきた家庭から国まで、日本社会は、今一度、考え直さなくてはならないだろう。


2008年9月12日  森みつぐ

 これまでも食の安全・安心を脅かす事件は、数多く起きてきたのだが、これでもかと言う事件が、また明るみになった。他国の食の安全・安心がどうのこうのと言ってばかりはいられない事態である。企業の倫理観に期待していたら、この国が一層悪化する事は確かなことだろう。
 利潤追求を目的とした企業の多くは、経営悪化とともに倫理も頽廃するのが常である。経営が悪化していなくても、利益を確保するために倫理(法)を無視してでも、いろいろと工作を尽くす。「名ばかりの管理職」は、その最たるものであろう。被害を受ける側は、いつも弱者である労働者なのである。今回の被害者は、事故米を食用米として転売された企業と消費者であった。企業による被害対象者は、内から外に向かって消費者にも拡大してきているようだ。
 国民のモラルは低下の一途であるのと同じように、企業のモラルも悪質さを増しているのは確かのようである。このような不正を取り締まるはずの国の検査・管理システムも、全く機能していない。国民の安全・安心を国が保障できないとしたら、国民はどうしたらよいのだろうか。


2011年2月2日  森みつぐ

 先月の新聞記事だが、「昨年一年間に全国の警察が把握した刑法犯は158万5951件で、前年より11万7093件(6.9%)減少した。8年連続の減少で、・・・」(読売新聞より)とあった。タイトルは、「高齢者の殺人増加」。内容は、「昨年の65歳以上の高齢者による殺人が前年より32件(22%)増の175件に上ったことが、警察庁のまとめで分かった。殺人が前年より27件減の1067件と、戦後最小を2年連続で更新する中での増加だった。」で始まっていた。
 多くの人たちは、多分、犯罪は増えていると思っているのではないだろうか。新聞、テレビからは、一向に風俗犯、凶悪犯、粗暴犯などの記事が減らないからである。限られた紙面、限られた時間内で知らせるには、当然、余りある犯罪件数だからであろう。そして、自宅近くで犯罪があると、“やっぱり!”と思い込んでしまうのである。
 そして注目すべきは、高齢者の犯罪増加であろう。万引きする高齢者が増えているという事実を含めて、やはり高齢化社会に対応した社会システムの構築を急ぐ必要があるだろう。記事には、「高齢者による殺人の動機の41%は「怒り」で、「介護・看病疲れ」(17%)、「恨み」(16%)と続いた。」と。「社会からの孤独」がキーワードのように思えてくるのだが。

Copyright (C) 2007-2011 森みつぐ    /// 更新:2011年2月6日 ///