夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 青息吐息・虫の息 |
4.1.2.7−3 青息吐息、虫の息 |
2008年6月25日 森みつぐ
1998年、一気に3万人を突破した自殺者は、昨年も3万人を大幅に上回った。この数字を見ただけでも、日本社会の異様なほどに淀んだ空気を読み取ることができるだろう。60歳以上と30歳代の自殺者が、過去最高だったと言う。
後期高齢者医療制度が施行されたことに象徴されるように、小さな政府を目指す自公政権は、社会保障費を削減させ、高齢者を初めとする弱者への締め付けを益々厳しくしてきている。弱者にとって、非常に住みにくい社会となっていると言えるだろう。
そして、働き盛りの30歳代の自殺も、今の日本社会の歪みを浮き彫りにしているようだ。働き方の多様性は、低所得者をいとも簡単に生み出し続けている。能力主義、競争至上主義、成果主義・・・企業は、死ぬほど働く労働者が好きである。労働環境が改善されない限り、今年も、自殺者が3万人を超えることだろう。
2009年2月5日 森みつぐ
厚生労働省が2008年の年間総労働時間が1800時間を割って、1792時間になったと発表した。20年程前、連合が年間総労働時間を1800時間にする目標を掲げて、労働運動を繰り広げていたのを思い出した。ただ、当時と現在とは、雇用形態に大きな変化があった。
当時は、パート労働者などの非正規労働者が少なく、その多くが正規労働者で占められていた。20年前の労働時間と、労働者の3分の1以上を非正規労働者で占めるようになった現在とでは、労働者一律での年間総労働時間を比較するのは、少し無理があるように思える。
構造改革による派遣労働の適用拡大の他にも、裁量労働の適用拡大をしたために、実際の労働時間が闇の中に埋もれてしまっている。年間総労働時間1800時間は、当時では夢のような数字だったが、今回の結果を見て、何ら望ましい数字に思えて来なかった。働いても働いても最低限の衣食住も得られない非正規労働者たちの労働時間を含めて、1800時間を割った年間総労働時間は、危うい日本の将来を象徴しているようだ。
2011年3月6日 森みつぐ
「警視庁は3日、昨年1年間の全国での自殺者は、前年を1155人(3.5%)下回る3万1690人だったと公表した。「就職失敗」「職場の人間関係」「仕事の失敗」の死者数が、動機別の統計を取り始めた2007年以降で最悪となり、労働環境の厳しさがあらわになった。」(読売新聞より)
自殺者が減ったとは言え、13年連続で3万人以上の人が己の命を絶ったのである。世相を反映して就職や仕事に起因する自殺が増えている。相変わらず景気は停滞したままだが、自殺者数との因果関係は、私には分からない。ただ景気の悪さよりも、失業者へのサポートとなるセーフティネットの問題や就職難に関する問題が大きいと思われる。
労働者に対する社会システムの配慮が十分に機能していないことに問題があるように思われる。社会システムは、短期間ですぐに変わると思えないので、まだまだ自殺者3万人は続くように思われてくるのである。生活の基盤である労働は、絶対安定しなくてはならないことの一つである。
2013年7月31日 森みつぐ
ひと月前の新聞記事である。「職場でのストレスが原因でうつ病などの精神疾患を発症し、2012年度に労災認定された人が、前年度より150人多い475人に上り、3年連続で過去最多を更新したことが21日、厚生労働省のまとめでわかった。このうち93人は自殺を図っており、未遂を含めた人数も過去最多となった。・・・(省略)・・・一方、過労による脳出血や心筋梗塞などが原因で労災認定を受けたのは、前年度比28人増の338人となり、2年連続で前年度を上回った。このうち、過労死は同2人増の123人だった。(読売新聞より)」
労働人口が減る中においても、心の病が原因による労災が増え続けている。長時間労働による過労が原因というのも増えている。そして、相変わらず過労死が、なんと多いことだろうか。労働環境がどんどん悪化しているように思えてならない。
セクハラ、パワハラ、いじめ、長時間労働等、労働者を取り巻く環境は、いろいろ取り沙汰されても、全く改善されていないようである。経営側に都合のいい労働環境は、今後も、改善される気配はない。
2013年11月6日 森みつぐ
「全日本教職員組合(全教)が公立小中高校などの教員を対象に行った勤務時間に関する調査で、「学校で正規の勤務時間外に働いた時間」が1か月に100時間以上の教員は約2割に上ることがわかった。・・・(省略)・・・学校での勤務時間外労働が1か月間に100時間以上だったのは21.3%、80時間以上は14.5%で、60時間以上は21.6%だった。勤務時間外労働の平均は72時間56分で、このうち土日曜は16時間14分だった。(読売新聞より)」
よくこんな状態で教育が続けられるのかと考えてしまう。毎日、こんな長い残業を続けていたら、いつかは心も体も疲弊してしまうのは、当然のことと思われる。心の病に苦しむ教員が多いのは当然で、労働環境が余りにも酷すぎる。
子どもたちの学力低下をゆとり教育のせいにしているが、こんな労働環境のままでは、成果を上げるのは、非常に困難なことであろう。以前から教員の長時間労働は問題になっていたが、相変わらず改善されていないのが分かる。教育に、もっと人も金も投入しなくてはならないだろう。
2016年3月30日 森みつぐ
「内閣府と警察庁は18日、2015年の全国の自殺の状況を発表した。自殺者数は前年と比べて1402人(5.5%)減少し、2万4025人となった。6年連続の減少で、自殺者が2万5000人を下回ったのは1997年以来18年ぶり。中高年男性の経済的な理由での自殺が減った一方、中高生は前年比31人増の343人で、現在の集計方法になった2007年以降最多となった。(読売新聞より)」
毎年3万人を超えていた自殺者も、年々減少して、昨年は2万500人を下回ったとのことである。それでも毎日65人以上の人が自殺していることになる。まだまだ減らしてゆかなくてはならないだろう。人々が孤立化する現代社会においては、自殺者を減らすことは容易なこととは思えない。
去年の数値でまた一つ、大変不安な数値が示された。中高生の自殺者が前年より31人増えたということである。中高生の自殺とは、何なのだろうか。子どものときに、“死にたい!”と思ったことは、多くの人が経験しているのではないだろうか。でも一晩寝ると、そのことをすっかり忘れてしまっていたはずである。それが子どもであるはずなのである。やはり社会そのものが何か変わってきているようだ。
2017年1月25日 森みつぐ
「厚生労働省と警察庁は20日、2016年の全国の自殺者数(速報値)が前年より2261人少ない2万1764人となり、減少率は過去最大の9.4%、7年連続の減少で、22年ぶりに2万2000人を下回ったと発表した。…(省略)…原因・動機別(複数計上)では、健康問題が最多で1万63人(前年比1128人減)、次いで経済・生活問題3234人(同539人減)、家庭問題3053人(同322人減)、勤務問題1839人(同160人減)など。(読売新聞より)」
異常だった年間3万人以上の自殺者が10年以上も続いていたのが減少へと向かい、昨年は2万2000人を下回ることができたようである。22年ぶりに2万2000人を下回ったとのことだが、1990年代前半も自殺者が減少してきて底を打ったようで、その後一気に3万人に跳ね上がったのである。
2万2000人の自殺者数は、少ないとはやはり思えない数である。健康問題、経済・生活問題、家庭問題、勤務問題と原因・動機はいろいろあると思うけど、孤立したままで自殺に追い込まれるというのはどうしても避けなくてはならないことだろう。孤立させないことに関して、もっと方策をとる必要があるだろう。
2017年5月7日 森みつぐ
「文部科学省は28日、公立小中学校の教員を対象にした2016年度の勤務実態の調査結果を発表した。教諭の平日の勤務時間は、06年度の前回調査より30〜40分長い11時間以上となり、小学校教諭の34%、中学校教諭の58%が、厚生労働省の「過労死ライン」に該当した。・・・(省略)・・・今回の調査では小学教諭の34%、中学教諭の58%が週60時間以上勤務していた。民間の週40時間勤務を基準とした場合、1か月の超過勤務は単純計算で80時間以上となり過労死ラインに達する。(読売新聞より)」
教員たちの長時間勤務は、以前から問題視されていたのにも拘らず勤務時間が、どんどん長くなっていることが判明した。こんなことで、未来を担う子どもたちにまともな教育ができるのだろうか不安になってしまう。本当に日本という国は、人を死ぬまで働かせ続ける国であるようだ。時間の感覚が全く麻痺してしまった国である。
長時間労働は、利潤追求の企業では当たり前、そして子どもたちを育てる教育の場でも当たり前となると、やはり日本という国の時間に関する考え方、労働に関する考え方が、異質であることは歪められない事実のようである。個人の犠牲の上に成り立つ組織というのは、いつか綻びが出てくることは確かであろう。
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