夢惑う世界 雑記帳 随想録<澪標> 気まぐれ昆虫記
夢惑う世界4.1.2.9−4 気まぐれ昆虫記

2002年5月15日  森みつぐ

 プエルトリコで山中のホテルに泊まっていた。既に雨期も始まっていて、夕方になると小一時間は、バケツをひっくり返したような雨が降っていた。3日目の晩、とうとうコテージの裏の斜面の土砂が少し崩れ初めて、入り口付近まで流れてきた。そのようなことがあって、道路側の高い位置にあるコテージに移ることになった。
 その夜、入り口に据え付けてある灯りに何か来てないかと思って見てみると、何の変哲もない中形のコメツキムシが来ていた。“うん、冴えないけどいいか!”と思いながら、指で摘んで部屋に入ってみると、なんと指の間で蛍光色に光っているではないか。一度は見たかったが、こんなところで出会えるなんて幸運そのものである。
 写真を撮ろうと思って指を放すと、すぐ光らなくなってしまう。このコメツキ、刺激を与えてないと光らないみたいである。そんな訳で、指で掴みながらの撮影となった。
 何故光るかと言うと、多分ホタルと一緒で求愛の時の信号が主だと思われるのだが、魅力を感じてくれなかったからか私には光ってくれなかった。どうしても自然の中で光るのを見たかったので次の日の晩は、外に出て何処かで光らないかと思って眺めていた。そうしたら、程なく緑色の蛍光色の光が飛んでいるのを見ることができた。乱舞とはいかないが、光が舞っている。ホタルみたいな点滅光ではなく、連続光である。その日は、カメラに納めることが出来なかったが、次の日、何とか写真に写っていた。
 これだけでも、プエルトリコに来た甲斐があったというものである。

ヒカリコメツキ1
ヒカリコメツキ2
5月1日 外灯に来たヒカリコメツキ 5月1日 押さえると光ってくれる
ヒカリコメツキ3
ヒカリコメツキ4
5月1日 実は、腹節部も光っていた 5月2日 ヒカリコメツキの幻光(屋外にて)


2002年4月10日  森みつぐ

[2001年9月23日]
 やはり目を付けていた駐車場脇のスミレに、ツマグロヒョウモンの雌が来ていた。
 一度でいいから、幼虫を見てみたいね。

[2002年3月10日]
 今日は、暖かい。朝、床屋に行く途中、ツマグロヒョウモンが気になるので駐車場の脇道を通った。すると、スミレの近くに黒い芋虫がいる。棘のある幼虫である。間違いなくツマグロヒョウモンの幼虫だ。
 何匹もスミレの葉の上ではなく、駐車場のアスファルトの上でじっとしている。体が温まるまでじっとしているのだろうか。まずは、一匹拝借して家に引き返した。
 床屋からの帰り道、花屋に寄ってスミレを買おうとしたのだが、スミレらしい花はあるのだが、全てカタカナでなんだかよく分からない。“何、これ!”なんて思いながら、“パンジーが三色スミレだから、それにしよう”とも思ったのだが、近くにある葉っぱを多く付けた花もスミレのように思えてきた。名前の書いてある札の裏にも何かしら書いてあったので、よく見ているとスミレ科と記してあった。“よし、これにしよう!”と思い、2つ買ってきた。家に戻り、タッパウェアに入れていた幼虫を葉に移し変えると早速、囓り始めた。そこで、もう一度外に出て、幼虫を捕りに出かけた。民家が密集しているところなので、怪しげな事はできないが、さっきよりいっぱい幼虫が目に付いた。その中から3匹拾い上げてきた。スミレは、1鉢100円で買えるし、これ位にしておこう。
 スミレに4匹、部屋の中で放し飼いである。そのうち1匹がどうしても放浪を始める。3〜4回連れ戻したりしていたら、観念したみたいでスミレでじっとし始めた。“よし!よし!”

[2002年3月11日]
 朝、見てみると、昨晩と同じところでじっとしている。
 夜、帰宅して見たら1匹だけがスミレにいたが、3匹は、スミレから離れて壁やカーテンに移動していた。遠いところで、2mは移動している。葉っぱは、そんなに食べていないようだ。“口に合わないのかな?”

[2002年3月12日]
 朝、移動していた幼虫をスミレに戻してから家を出た。夜、帰宅すると2匹がスミレの残っていた。
 あと、2匹の行方を捜す。1匹は、まもなく棚の柱の下にへばり付いているのを発見したが、どうも様子がおかしい。よくよく見ると、蛹になる体勢になっている。“え!これから育てるのに!”やけに早い。冬の間も、スミレを食べて成長しているのだろう。残り1匹は、どうしても見つからなかった。部屋の何処かで蛹化の準備をしているのだろうから、明日から焦らず探すことにする。
 朝、カーテンにいた2匹をスミレに戻すとき少し抵抗感を感じたから、既に蛹化の準備をしていたようである。ごめん!

[2002年3月13日]
 朝、スミレに水を補給した。夜、今日も1匹いなくなっていたが、カーテンにしがみついている幼虫を発見した。でも、蛹の準備はまだみたいである。
 昨日の蛹の準備していた幼虫は、背中のオレンジ色のラインが、少し薄くなってきた。そして、もう1匹の家出幼虫は、まだ見つからない。

[2002年3月14日]
 今日も1匹、家出した。スミレも食べていなそうだし、蛹になる場所を探しているだけかも知れない。もう1匹は、ずっとスミレにしがみついて食べている。いいことだ。

[2002年3月15日]
 朝、見てみると、蛹の準備をしていた幼虫は、服を脱ぎ捨てて衣替えをしていた。うろついていた幼虫も50cmほど離れたところで、ぶら下がって蛹の準備をしている。

[2002年3月16日]
 最後の幼虫もスミレにぶら下がって蛹の準備をしている。
 外の幼虫たちを見てきたが、既に蛹になっているのもいた。数は、前回と同じ位いっぱいいた。

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 結局、蛹10匹のうち雌は6匹、雄は3匹が羽化してきた(1匹は羽化せず)。大きい幼虫を選んだ訳ではないが、メスの方が多くいたみたいである。
 第2化の期待をしていたのだが、スミレに幼虫を見つけることはできなかった。多分、今年も夏以降増えることだろう。楽しみは、秋にとっておこう。

終令幼虫1
終令幼虫2
終令幼虫1(45mm) 終令幼虫2
蛹の準備
蛹
蛹の準備 蛹(26mm)

 ツマグロヒョウモンは、南方系のチョウで温暖化の傾向に伴って沼津周辺でも2〜3年前から見られるようになった。市街地でも何の抵抗もなく生息している。
 幼虫の食草は、スミレ科の仲間なので、住宅の庭に植えてあるパンジーなどでも育ってしまう。なかなか繁殖力の強いタテハチョウである。
 最近、市街地でも庭先から逃げ出したスミレが、アスファルトの隙間で、愛らしい花を咲かせている。そして更に、鉄道沿線は、スミレにとって非常に好都合の場所みたいで、春先、車窓からは小さな紫色の花々を見ることができる。ツマグロヒョウモンにとっては、棲み心地の好い市街地になった。
 雌と雄とでは、翅の模様が違い翅の先が黒く(ツマグロ)なるのは、雌の方であり、雄は、ごく普通のヒョウモン模様である。
 雌は、毒があってまずいと言われているカバマダラ(マダラチョウ科)に擬態しているようである。ただし、そのカバマダラは、熱帯・亜熱帯地域からは抜け出せないでいる。カバマダラに擬態しているチョウにメスアカムラサキの雌もいるが、ツマグロヒョウモンが翔んでいるときは、このメスアカムラサキと見分けるのは難しい。
 広く東南アジアで見られるこのチョウは、バリ島では翅端が丸まっていて私のお気に入りの亜種である。

成虫・雄
成虫・雌
成虫・雄 成虫・雌

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