すべてのはじまり(1)
とある街にあるとある学園。
その学園にある奇妙な部活、オカルト研究部。
別名オカルトG。オカルトジーメン、オカルトガーディアンの略とも言われている。
学校や街で起こる怪奇現象を研究しているというなんとも奇特な人たちの部活だ。
そんな研究部に一人の男の子が入部したときの話。
「遅くなっちゃった」
綺麗に整った顔。しなやかな歩み。
体の線が細く見えるが、歩き方から運動神経のよさが窺える。
唯一の欠点は背の低さ。
顔立ちが女の子のようで体型も女の子のように見える。
これでブレザーを着ていたら、誰もが女の子だと思うであろう。
だが、いま着ているのは学らん。少しぶかぶかで、着ているというより着られているといった感じ。
だが、着ているものから男であることに間違いない。
「夜の学校って、不気味だよ」
男の子の名は、『秋田零』。
先生に頼まれて理科室の実験器具の個数チェックなどを手伝わされ、帰るのが遅くなってしまった。
すでに他の生徒は帰ってしまい、部活動をしている人もすでに帰宅している。
いま校舎に残っているのは、理科室から出て玄関に向かう零と用事を言いつけた理科の教師。
その理科の教師はまだ理科準備室に残っていて、暗闇に近い廊下を歩いているのは零ただ一人。
零が歩く靴音だけが廊下に響いている。
……はずだった。
なぜか、零の後ろから別の足音が聞こえてくる。
聞き間違いかなと思ったが、聞き間違いではない。
「やだな……また、へんなのかな?」
生まれつき、幽霊などが見えたり感じることのできる零。
今までにも、奇妙な体験をしてきている。
胸の大きな女性の幽霊にせまられたり、同年代くらいの女の子にせまられたり……。
どれもこれも、せまられてる記憶しかない。
「はぁ……」
思わず溜息が出てしまう。
実は零は霊媒体質で、霊に好かれやすいタイプである。
そのため、今まで出会った霊はすべて零にせまってくるのである。
「唯一の救いが、ホモの幽霊じゃないことだけど……」
そんなことを考えていると、別の音が聞こえてきた。
足音ではない、小さな音。聞いたことのある高く響くような音。
思わずごくりとつばを飲み込む零。
耳をそばだてると、再び今度ははっきりと聞こえてきた。
「こ、今度はピアノの音だ」
4階から3階に降りたところで、音楽室のピアノの音がしてくる。
見ると音楽室の電気は消えており、人のいる気配はしない。
そして後ろから聞こえる足音は、階段を下りてきている。
「幽霊に挟まれた?」
もう一度つばを飲み込み、そう口にする。
まさに前門の虎、後門の狼といった感じ。
零はこの状況を何とかするため、頭をフル回転させる。
だが、いい案は浮かばない。
左腕が痺れるような感じがして、鳥肌が立ってくる。
幽霊がそばにいる場合に襲われる霊障。
音を無視して逃げるか悩んでいると、急に肩を誰かにつかまれた。
目次
続く