キミに笑顔をもう一度(1)



「本当にいるのかな?」
「だから試してみようよ」
「ただの都市伝説だって」
「とにかくやってみようよ。せーの……」
「「「花子さーん! あーそーびーまーしょっ♪」」」
「ほらやっぱりいないじゃない」
「あ〜あ、いると思ったのに」
「さ、かえ……」

ギイイイイイイイィィィ……

「あ、ドアが開いた」
「ぐ、偶然だよね」
「あ、ああ、ああああああっ」
「「「いやあああああっっっ!!!」」」


とある街にあるとある学園。
その学園にある奇妙な部活、オカルト研究部。
別名オカルトG。オカルトジーメン、オカルトガーディアンの略とも言われている。
学校や街で起こる怪奇現象を研究しているというなんとも奇特な人たちの部活だ。
そんな怪しげな部活に入部することになった男の子。
名前を秋田零(あきたれい)という。
背が低く女の子のような顔立ちに体つき。
声変わりしたの?と聞きたくなる可愛らしい声。
他の女生徒のようにブレザーを着ていたら、間違いなく女の子に見えるだろう。
そんな零にも奇妙なところがある。
『霊媒体質』
なぜか子供の頃から霊に好かれ、霊に取り憑かれることもしばしば。
たいていが女性、しかも年上って言うんだから羨ましいと思うものもいるかもしれない。
しかし当の本人にとっては、迷惑以外のなにものでもない。
こんな体質早く治れば良いと思っている。

いつもなら逃げているはずの零。
逃げても捕まるのに懲りずに逃げ続けているのだから学習能力がないのかも。
ところが今日はなぜか普通に部活に来ている。
やっと逃げても無駄と気づいたのか。
「いい加減に僕を自由にしてください。人を操るのを止めてください、かすみ先輩」
どうやら自ら来たのではなく、かすみに操られて来ただけのようだった。
しかもいまだに操られているようで、奇妙な格好をさせられたり踊らされたりしている。
「僕で遊ばないでくださいっ!」
かなり本気で怒っている零。頬を赤くして膨らませ、かすみを睨んでいる。
ぷーっと頬を膨らましてもあまり迫力はないのだが。
当の睨まれたかすみは涼しい顔で気にもしていないようだが。
「また一段と腕を上げたわね」
「はい。最近覚えた魔法でして、零君の髪の毛の入った人形をこの魔力で作った糸で操ることができるんです。
 この前、お師様から教えてもらいました」
「なるほど。人形遣いみたいなものね」
「ですから、こうして人形を動かすと零君も動くと言うわけなんです」
和やかな雰囲気で会話をする巫子とかすみ。その間も零は操られたままでいた。
「あうう」
「ああ、私も魔力があれば、ゼロを使って遊べたのに……」
心底残念そうな顔をする巫子。零を使っていったい何をするのやら。
「それはそうと、今日の活動は……」
かすみは零を操ってそんな台詞を言わせる。操られた零はカクカクと奇妙に動きながら巫子に聞いた。
「今日の活動はズバリ、噂の花子さん」
「は、はなこさん……ですか?」
魔力が途切れてようやく開放された零が、疲れた顔をしながら椅子に腰掛け机に倒れこみながら呟いた。
はへ〜とあごを机に乗せて脱力する。
「そう。実は先日から長谷川花子と言う新入生が行方不明になったと噂があるのよね。
 南校舎の二階女子トイレらしい」
「それってトイレの花子さんですか? それにしても長谷川花子って、トイレの花子さんと同じ名前ですね」
「良いところに気がついた、ゼロ。
 都市伝説にあるトイレの花子さんは長谷川花子だっていう話だ。
 そして今回、行方不明の新入生は長谷川花子と言う。何かあると思わないか?」
巫子はそう言うとニヤリと笑った。それを見た零は一瞬ひるんでしまう。
また何か企んでいるのではないかと勘繰ってしまう。
「確かに関係がありそうですね」
少し思案をしていた零は体を起こして話に興味を示す。
なんだかんだ言っても慣らされてしまったようで、以前ほど怖がらなくなった。
「ちょっと調べてみたんですけど、ここに興味深いことが書かれています」
かすみはそう言ってパソコンを操作しながら手招きをした。
さっきから黙っていたと思ったら、パソコンをいじっていたようだ。
いったい何を見ているのか。零は興味にかられてモニターを覗き込んだ。
黒い画面にULの赤い文字がじわじわと浮かび上がる。
そして文字が横にスライドして『Urban Legend』と表示された。



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