桃太郎(2)



 桃太郎ふが生まれて数年後。
すくすく育った桃太郎は村一番のやんちゃ坊主として有名になりました。
男の子の間ではガキ大将として尊敬され、女の子たちからは頼れる男の子として人気がありました。
でも、村の大人たちからはいたずらばかりしているため、良い印象は得られませんでした。
「ま、気にすることないっしょ」
桃太郎はあまり気にしていないようです。

 そんな時、村にある噂が流れ始めました。
その噂はこの近くに鬼が住む島があるとのことです。
そこの鬼は時々やってきては、海辺の村を襲い宝や女性を奪っていくとのことです。
次はうちの村も襲われるのではないかと村中噂で持ちきりです。
でも、子供たちの間では桃太郎がいるから安心しています。
しかし、まさかこうなるとは誰も思っていませんでした。

 ある日、桃太郎と数人の子供たちが山に出かけている間に
村に鬼が襲ってきました。
「桃ちゃん、村が!!」
一緒にいた三太が村から火の煙が上がっているのを見て叫びました。
「お、鬼が襲ってきたのかも」
「お、おらの家が……」
「おっかあ!」
みんな慌てて村に帰ろうとします。
「待て!」
それを桃太郎は静止しました。
「むやみに帰っても鬼にやられる。みんなはここで待ってろ。
 おいらが行ってやっつけてくる」
桃太郎はそう言うと村に走っていきました。
 村に着くとあちこちに火の手が上がっていました。
「おじいさん、おばあさん」
桃太郎は自分の家に向かって走っていきました。
家に着くとまだ火の手は上がっておらず、鬼が近くにいる気配もありません。
中に入ろうとしたとき、おじいさんとおばあさんが戻ってきました。
どうやら芝刈りに行ったり洗濯に行ったりして助かったようです。
「おじいさん、おばあさあん、ここは危険だから山のほうに逃げて」
「桃太郎はどうするんじゃ?」
「村の人を助ける!」
桃太郎は腰の刀を抜いて村の中央に走っていきました。
「桃太郎や、気をつけるのじゃよ」

 中央に行くと鬼が村人を襲っていました。
「待てぇ!」
刀を振りかざし、一刀のもとに鬼を切り倒しました。
「桃太郎さん」
「他の人たちは?」
「まだ、どこかに」
「山に逃げて。そこに子供たちもいるから」
桃太郎は助けた人を逃がし、まだ焼けていない家に入っていきました。

 鬼たちがいなくなり村のほとんどの家が焼け落ちた頃、山に逃げた村人が戻ってきました。
村人は焼け落ちた村を見て落ち込んでしまいました。
桃太郎が村人たちを見渡すと、何人かの女性がいなくなっていました。
「桃太郎、お願いじゃ。村の娘を助けておくれ」
「お願い、桃太郎。おらんとこの娘を」
「おらのかあちゃんを」
村一番強い桃太郎にみんながお願いします。
「桃ちゃん、みやちゃんも連れて行かれたよ」
「え? みやちゃんも? よしっ、助けに行くぞ」
桃太郎がそう言うと村人一同が大喜びしました。
「じゃ、明日の朝出発だ!」

 翌日、桃太郎が旅立ちます。
「桃太郎や、これを持って行っておくれ」
お爺さんはそう言って立派な刀を差し出しました。
「これは先祖代々伝わる刀じゃ。これで悪い鬼をやっつけておくれ」
「はい」
桃太郎は頷くと刀を受け取りました。
「桃太郎や、こっちも持っておいき」
おばあさんは桃太郎に吉備団子を渡します。
「無理をするじゃないよ」
「はい、おじいさんもおばあさんも元気で」
そう言って桃太郎は家から出ます。
家を出ると村人たちが集まっていました。
「桃太郎、これは少ないが村人全員からじゃ」
村長が桃太郎に近づき100両を渡しました。
「軍資金になるかはわからんが、何かの足しにしてくれ」
「ありがとう。必ずみんなを助けてくるから」
桃太郎はそう言って海辺に向かいました。




目次   戻る   続く