桃太郎(4)



隠れていると、洞穴から鬼が出てきました。
しかも二匹です。
一匹だと聞いていたポチは
「聞いてないよー」
と心の中で叫んだとか叫ばなかったとか。
それはさておき、一匹でも強い鬼が二匹もいる。
ポチは改めて作戦を考え直すことにしました。
一匹だけなら不意をついて、一子相伝の暗殺拳もとい相手の足の腱を食いちぎるのですが、
さすがに二匹となるとそう上手くいくとは思えません。
(一匹になるのを待つことにしよう)
心の中でそう呟くと、一匹になるのを待つことにしました。
しばらくすると、赤い鬼がどこかに向かうらしく洞穴から街道のほうに向かっていきました。
残った青鬼はそれを見送るとくるりと背を向けました。
(チャンスはいまだ)
姿勢を低くし、流星のように失踪して鬼の足に向かいました。
油断をしていた青鬼は、ポチに足の腱を噛み千切られてしまいます。
「グガァ……」
体勢を崩して片膝をつく青鬼。
でも、青鬼の精神力は強靭で痛みに耐えながら、ポチに持っていた棍棒を振り下ろします。
それに気が付いたポチは、右にステップを踏んでかわすと、そのまま鬼の喉に噛み付きました。
悲鳴にならない悲鳴が上がり、シュウシュウと息を漏らしながら、倒れこむ青鬼。
口の周りを鬼の血で染めたポチは、仲間を助け出そうと洞穴の中に入ろうとしました。
しかし、中に入る直前で何かの殺気を感じたポチは、本能的に体を動かします。
「キャウン」
でも、少し遅かったため背中を殴られてしまいます。
痛みに耐え振り返ると、先ほどいなくなった赤鬼が戻って来ていました。
(くっ、まさか戻ってくるとは……)
赤鬼との距離を取るポチ。
背中の痛みが、動きを鈍らせます。
赤鬼は無言のまま、間合いを取ろうとしています。
明らかに先ほどの青鬼より強いと感じたポチは、先手必勝とばかりに飛び掛ります。
でも、それを予想していた赤鬼は拳をポチのおなかに叩き込みます。
「キャイン」
直撃を受けたポチは弾き飛ばされて、洞穴の壁に叩きつけられます。
赤鬼はそれを見て、勝利の笑みを浮かべます。
なんとか立ち上がるポチ。
でも、頭が朦朧として目の焦点も合いません。
頭を振って意識をハッキリさせると、赤鬼との間合いを計ります。
(まずい…一撃でしとめないと、体が持たない)
間合いを少しずつ詰め、お互い次の一撃で決着をつける決意をする。

ブゥゥン

先に動いたのは赤鬼です。
相手が傷ついているので、勝てると思ったのでしょう。
しかし、最後の力を振り絞ったポチはすばやく赤鬼の背後に回ると、
背中に襲い掛かりました。
「絶・天●抜○牙!!」
と叫んだかどうかは不明。
体を回転させて、牙の威力を増して赤鬼の背中に飛び掛ります。
「グギャァ!!!」
直撃を受けた赤鬼は、たまらず悲鳴をあげます。
そのままどぉっと前に倒れこむ赤鬼。
体を引くつかせ、次第に動かなくなりました。
洗い息をあげて赤鬼を睨み続けるポチ。
やがて赤鬼が絶命すると、ポチも出血多量から意識を失いました。




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