P-Island 外伝 〜秋の行事〜(3)



テレビの前には、可憐ちゃん、鈴凛ちゃん、千影ちゃんが座っていた。
僕たちが来たことに気づき、三人が振り返った。
可憐ちゃんと鈴凛ちゃんは不安そうな顔をしている。
千影ちゃんは、いつもと変わらない表情に見えた。
「アニキ、テレビでいま大変なことが……」
鈴凛ちゃんはそう言って、テレビを指差す。
「大変なことって……」
鈴凛ちゃんに促されるままに、テレビを見ると得体の知れないものが映し出されていた。
『今日未明、突然なぞの物体が東京上空に現れました。
 自衛隊が調査のために近づいた瞬間、なぞの光線によってすべて打ち落とされてしまいました。
 なお、首相官邸では……』
「そんなバカな……」
テレビを見た僕は、唖然としてしまった。こんなことがあるなんて……。
「こんなことがあるはずがありません。あんな空飛ぶ物体が存在するなんて……。
 仮にあれが未確認飛行物体であるUnidentified flying object、いわゆるUFOであるはずなど……。
 でも、確かに地球状に存在するものとは異質のもので、地球上にあるものであるとは識別できないし、
 どんなものかは確認できないのでUFOと言えなくもありませんが……って、
 そんなUFOだなんて存在するわけがないのです」
スイカ牛乳という変わった飲み物を飲みながら、力説する可憐ちゃん。
なんか人が代わったような感じがする。
「あんな形をしていますが、あれは異性人の乗り物なんですよ。
 でも、現在知られているエイリアンではありません。
 ガ○星雲第5○番惑星の異星人でもセ○ントと呼ばれる異星人でもありません。
 ヴェ○パーでも、認識されていないものだと思います」
千影ちゃんがテレビから目を離さず、説明する。なんかすごく詳しいな。
しかも、いつもと違って饒舌だし、口調が違う……。
っていうか、ヴェ○パーってなんだろう?
「お兄さま……」
咲耶ちゃんが不安そうに僕に声をかけてくる。
四葉ちゃんも鈴凛ちゃんも可憐ちゃんも、そして千影ちゃんも……。
「大丈夫。自衛隊が何とかしてくれる。大人たちが何とかしてくれる」
僕はそう言って、みんなが不安にならないよう笑顔を向けた。
この国には自衛隊がいる。それに、このことが世界中に知れ渡れば国連だって動いてくれるはずだ。
このとき僕は、対岸の火事にしか思っていなかった。
ここプロミストアイランドは、絶対に無事だと思っていた。
そう、あんなことになるとは思ってもいなかった。



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