P-Island 外伝 〜秋の行事〜(4)



そんなことを思っていたのが、1ヶ月前。
僕の思いとは裏腹に、プロミストアイランドにも危機が迫っていた。
この1ヶ月であの未確認飛行物体のほかに、様々な飛行部隊が確認された。
中には人型をとっているものもあった。
その姿を見たものは機動兵器、いわゆるロボットだろうと言った。
その機動兵器に自衛隊、果ては国連軍まで破れ、日本はおろか地球全体が危機に瀕した。
プロミストアイランドも、何度か侵攻を受け被害が出ている。
幸いにも僕たちのところまで被害はなかったが、だが被害に遭うのも時間の問題だろう。
「って、なんでここに山田がいるんだよ」
「フッフッフ。もちろん、妹さんたちを守るために決まってるだろう」
妹たちねぇ……ただ単に逃げてきただけじゃないのか。
「あたしは、可憐ちゃんたちに呼ばれて」
「眞深ちゃんも、こっちにいたほうが安全だと思ったから……」
「そうだね、ここならまだ安全だね」
そう、島の上のほうにあるこの家までは、まだ攻撃を受けていない。
もっとも、ここもいつまで安全なのかわからない。
「いつ避難してもいいように準備してきたよ」
眞深ちゃんの後ろから、荷物をまとめた燦緒も姿を見せた。
学校は閉鎖している。そして、爺やたちが学校をシェルターに改造してくれている。
完成したら、みんなでそっちに避難することになっている。
でも、完成するよりも先に、ここにも侵攻してきたら……。
「そのときは、私が航を守ってやるさ」
燦緒が僕の肩に手を置き、そう言ってくれる。
「妹さんたちはボ、キが守ってやるさ」
山田が燦緒の真似をして反対の肩に手を置く。
僕を守る。妹を守る。
でも、僕は守られていてはいけないんだ。
もしものときは、僕がみんなを守らなくちゃいけないんだ。
そう、僕の大事な妹たちを。
「おにいちゃま!」
そのとき、花穂ちゃんが大きな声を上げた。
その声はとても緊張した声だった。
確か花穂ちゃんは、テレビを見ていたはず。
もしかして、何かあったのかな。
横を見ると、燦緒も同じことを考えていたのか緊張した面持ちでこちらを見ている。
僕は頷くと、花穂ちゃんが見ているテレビへと視線を向けた。
『……の一部がプロミストアイランドに向かっています。
 その進行を阻止すべく自衛隊や国連軍が攻撃を仕掛けていますが、なすすべがありません。
 島にはまだ住人がいるという報告もあります。
 このままでは被害は増える一方で……』
事態が急変した。
一番なって欲しくなかった、シェルターが完成する前に襲われること。
最悪の事態に陥った。
「お兄さま」
咲耶ちゃんが不安そうにこっちを見る。
いや、咲耶ちゃんだけじゃない。みんなが僕のほうを見ている。
不安そうに、すがるように。
そんなみんなの為に、何かしなくては……。
不安を取り除いてあげれる何かを。
「でも、どうやって?」
「任せてアニキ。
 こんなこともあろうかと、あるものを用意してあるんだ」
思わず呟いた独り言に、鈴凛ちゃんが目を輝かせて言葉を返してくれる。
こういうときの鈴凛ちゃんってなんか怖いんだよね。
「ア〜ニキ。期待しててね」



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