P-Island 外伝 〜秋の行事〜(5)



僕たちは鈴凛ちゃんの案内で、プールの前に来ていた。
秋だというのに、まだ水が張りっぱなし。
「おにいたま、はっぱがいっぱい浮かんでるぅ」
「雛子ちゃん、あっちにもいっぱいあるよ」
雛子ちゃんと花穂ちゃんが、楽しそうにプールに浮いている葉っぱを見ている。
そんなに乗り出すと危ないよ。
「楽しそうだねぇ。ボキにも見せてくれないっかなぁ」
そう言って山田が雛子ちゃんたちの方に近寄っていく。
「本当だぁ。たくさん葉っぱが浮かん……」
「雛子ちゃん、花穂ちゃん。落ちたら危ないから、お兄ちゃんと一緒のところにいたほうが良いですよ」
「「はーい」」
二人が僕の方に駆け寄ってくる。そんなに急ぐと転んじゃうよ。
「うわっ…わわっ!!」

ジャボーーンッ!!!

一緒に覗こうとして乗り出したときに、雛子ちゃんたちがこっちに来たものだから、ぶつかって落ちたみたいだ。
「ぼ、ボキは…ぶはっ、およげな……いんだ……」
プールに落ちた山田が助けを求めてくる。そういえば以前、泳ぎを習っているって言ってたっけ。
「山田、これに掴まれ」
僕はその場に転がっていた浮き輪を、山田のほうに放り投げた。
浮き輪は綺麗な放物線を描いて山田の……頭上を越えてしまった。
すまない、山田。慌ててたから力を入れすぎた。
「ガボ……ゲボッ……」
必死になって、浮き輪取りに行く山田。
何とか浮きを手にして浮くことが出来た山田。
その場で息を整えると、プールサイドへと泳ぎ始めた。
「こんな汚いプールで泳ぐなんて、彼は変わった人だな」
燦緒が僕のそばに来てそんなことを言う。
いや、好きで泳いでいるわけじゃないんだけど。さっきの見ていなかったのかな?
「兄君さま。プールの水を抜いておかないといけませんわね」
春歌ちゃんがそう言って、僕を見つめる。
確かに抜いておかないと、雛子ちゃんたちが間違って落ちて溺れてしまうかもしれない。
無事でいられたら水を抜いておかないと……ってそんなことを考えている場合じゃない。
鈴凛ちゃんに連れられてここに来ていたんだった。
きっと何か発明したものがあるんだと思うけど……。でも、プールで何をするつもりなんだろう。
「あにぃ、来年の夏もここで泳げるといいよね」
衛ちゃんがそう言って無理して笑う。不安を紛らわそうとしているみたい。
「大丈夫、きっと来年の夏も泳ぐことができるよ」
みんなの不安を軽くするために、ことさら明るく言ってみる。
少しでも不安を取り除ければいいけど……。
「だ・い・じょうぶ。アニキなら」
そう言って鈴凛ちゃんは、どこから取り出したのか小さな丸型をした機械のボタンをポチッと押した。

ゴゴゴッ……

もの凄い音と共に地面が揺れる。立っていることが出来るが、その場から動くことが出来ない。
「みんな、だいじょ……」
「あ、兄君さま、プールが……」
驚きの声を上げて、プールを指差す春歌ちゃん。
その指差す方に視線を向けると、驚くようなことが起きていた。
「そんな、バカな……」



目次   戻る   続く