P-Island 外伝 〜秋の行事〜(6)



プールが大きく割れていき、下から戦闘機が上がってくる。
それはまるで、昔のロボットアニメにあったような登場の仕方だった。
「どう、アニキ? 凄いでしょ」
鈴凛ちゃんが誇らしげに胸を張って言う。
確かにこれは凄い。いつの間にこんな戦闘機を作ったんだ?
「これはどんな敵にも負けない戦闘メカで、アニキ専用なのよね。
 秘密の機能も搭載してあるから思う存分使ってよね」
そこはかとなく不安はあるものの、これなら妹たちを守ることができるかもしれない。
「お兄様……」
「大丈夫だよ、咲耶ちゃん。
 これできっと異星人なんかやっつけちゃうからね」
「大丈夫さ、僕が航と一緒にいるんだ。心配ないよ」
「燦緒あんちゃん? マジで言ってんの?」
「大真面目さ。こんなこともあろうかと、僕もロボットを作っておいたのさ」
燦緒はそう言って鈴凛ちゃんと同じように、ポケットから機械を取り出すとボタンを押した。
するとどこからともなく巨大なロボットがやってきた。
青い巨体のロボットの両肩にはランチャーが取り付けられ、いかにも強そうな感じがする。
ただその巨体と両肩のランチャーで重量はかなりあるようで、動きは鈍そうに見えた。
「どうだい、航。これが僕専用のロボットR−○パ○ードさ」
なんとコメントすればいいのか……。
「さあ、航。二人で敵をやっつけよう」
燦緒はそう言うと、ロボットに乗り込もうとした。
「ちょーっとまったぁ!」
突然、山田の声が響いた。だが、その姿は見えない。
「今、山田さんの声が聞こえたような……」
可憐ちゃんも聞こえたようで、辺りを見回している。
「気のせいじゃないの、お兄様?」
「そうよ、あんちゃん。山田のやつ、プールに入った後、姿が見えなくなってるんだから」
そういえば、あの後からずっと姿を見せていな…あっ!
「山田は姿を見せなかったんじゃなくて、プールの水と一緒に流されたんじゃ!」
「兄上様、あそこに……」
鞠絵ちゃんが何かを見つけたらしく、指差して教えてくれた。
鞠絵ちゃんが指差したほうを見ると、そこは戦闘機の翼でその上になんと山田の姿があった。
なぜか格好つけてポーズをとっていたが。
「待たせたね、妹さんたち。このボキ、山田太郎が活躍するときがきたのだぁ! とぉっ!」
山田はそう言うと戦闘機の翼の上から飛び降りた。
大丈夫か? 結構高さがあるぞ。案の定、着地に失敗して顔から落ちた。
って、あ、起きた。
「このボキも、こんなこともあろうかと用意していたものがあるのさ」
歯を光らせ格好をつけているが、鼻血を出しているからさまになっていない。
「来たまえ、ボォキのロボット!!」
山田が大声で叫ぶと、どこからともなくロボットが現れた。
燦緒のロボットより大きく、空を飛んでいた。
赤で染められた機体の腕の部分には大きな盾のような物が付いていた。
見た目は頑丈で山田に似合わない強そうな姿をしていた。
「これがボキの、ジ○ンスク○ドさ」
髪をかき上げ、歯を光らせている。格好つけないとしゃべれないのか?
でも、これならなんとかなりそうだ。一人では心細かったが三人なら……。
それに僕の戦闘機より、二人のロボットのほうが強そうだし。
「では、今度こそ本当に行くとしよう」
そう言って燦緒はロボットに乗り込んだ。
「ボキの活躍を見ていてくれたまへ」
山田も自分のロボットに乗り込んでいく。
「みんなはどこかに隠れているんだよ」
「どこかって……」
僕の言葉に、みんなが戸惑いを見せる。
確かにどこかと言われても隠れているようなところはない。
みんなの隠れるところを探してから行かないといけないな。
「地下にラボを作るための部屋を用意してあるから、そこに避難すれば安全だよ。アニキ」
「鈴凛ちゃん、いつのまに……」
「お兄ちゃん、無理しないでね」
「そうよ、お兄様。お兄様の体はお兄様だけのものじゃないんだから」
「兄や…くすん」
「大丈夫ですよ、亞里亞ちゃん。兄上様は無事帰ってきますから」
「必ず帰ってくるから、みんな待っていて」
僕はそう言うと戦闘機へと乗り込んだ。みんなと長くいると決心が鈍ってしまうから。
戦闘機に乗り込むとヘルメットをかぶり、ベルトを締めた。
みんな、行って来るね。



目次   戻る   続く