闇に潜むもの(終)



闇夜を疾走する者がいた。
木々の合間をかなりのスピードで走っている。
ほとんど光も指さず先が見えない森の中をこれほどのスピードで走れるものは普通はいない。
全力で走っていても木の根など足元が気になり意図せずスピードを落として走るからだ。
だが、この者は周りに何もないかのように走り続ける。
まるで周りが見えているかのように避け続ける。
だが、それも長くは続かなかった。森を向けようとしたところで待ち構えていた人物がいたからだ。
その人物はそこにこの者が来ることが分かっていたかのように佇んでいた。
「ようやく見つけマシタ。この学園(ばしょ)に何か用デスカ?」
そこに立っていたのは、零達と別行動をとっていたディアーナ。
零が見逃した暗闇の中に潜むものを見つけ、先回りしていたのだった。
もっともその暗闇は普通の人には先が見えないほどの闇だったのだが。
「タダの侵入者ではアリマセンネ。目的はなんデスカ?」
そう言ったディアーナの瞳が赤く光った。
ディアーナの前に現れた者は、男の姿であったが暗闇に紛れて顔の判別は出来なかった。
男は暗闇を利用してディアーナから逃げようとする。
しかし、男よりも早く動いてディアーナが先回りをする。
その動きは常人ではありえないものだった。
先回りをされた男は、ディアーナに攻撃をしかけて逃げようと試みる。
やはり常人では避けられない速さで手刀を繰り出してくる。
手刀は狙いたがわずディアーナの首を貫いた。
だがその瞬間ディアーナの姿は掻き消えてしまった。
驚きキョロキョロと辺りを見回す男。
ディアーナの姿を見つけることは出来ないでいた。
「こちらデスヨ」
男の背後からディアーナが声を掛ける。
男が振り向くよりも早く、ディアーナの手刀が男の背中を捕えた。
手刀は男の背中を貫いて胸を突き抜ける。
男はしばらくジタバタするがやがて動かなくなり、体が揺らめくと消えてしまった。
「影…デスカ……」
ディアーナはそう言って警戒しながら周りを見渡す。
だが、周りからは何も気配を感じず、空に向かって蝙蝠が飛んでいくのが見えただけだった。
「やれやれ、厄介なことになりそうデスネ」
ディアーナは腰に手を当てると深くため息をつき、空を見上げる。
見上げた空には雲間から月が顔を出したところだった。


終わり


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