1章 彼等の生き方

 
 話を始めるにあたって、中心人物となる彼等についての説明をしなければなら

ない。彼等はみずきとかざみという。かざみの方がみずきより少し背が高い。み

ずきの方がかざみよりかなり口が上手い。二人とも若い男の姿をしている。けれ

ど二人とも人間ではない。

 みずきは地上で一番巨大な湖の底に城を建て、棲みついている。日頃は、それ

こそ好きな酒など飲みながら、湖底の城で機嫌良く一人遊びをして暮らしている。

一人遊びにも飽きたら湖の近くの村に行って、医者の真似事をする。彼が周囲の

人間に『水の神』などと呼ばれる所以である。それもつまらなくなってきたら、

酒一瓶を手土産に、かざみにちょっかいをかけにいく。

 かざみは空の高い所に自分の城を浮かべて、その中で大抵眠っている。自動で

航行する天空の城(その点、城というより飛行船に近い)は、晴れた日など地上

からよく見える。みずきと対比されて、かざみが『風の神』などと呼ばれる所以

である。彼が起きるのはメノトロームに油を注す時と、せいぜいみずきがちょっ

かいをかけにきたのに応じる時ぐらいだ。かざみは人嫌いだが、唯一の同類であ

るみずきを無下に扱うようなことはしない。酒を飲み交わしながら、それなりに

機嫌良くみずきの話を聞く。みずきが引き上げたら、メノトロームの様子を見て、

眠りにつく。

 彼等は気の遠くなるような歳月を、そんなことの繰り返しで過ごしてきた。単

調で穏やかで変化のない生活。

 そしてこの話は、いつものようにみずきがかざみを訪ねてきたところから始ま

る。
                                                     


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