…3…

 

 

 柚羽自身はことの推移が飲み込めないでいたが、何故かそれから程なくして…雷史様は奥の居室に居着くようになられた。最初の日、いきなりおみ足に深い刺し傷を負っていらっしゃったのには驚いた。その怪我のせいでここにいるのかと思ったが、包帯が取れても、美祢様との居室に戻るご様子もない。

 婚儀の朝に最初にお目にかかった雷史様は気むずかしくて、苛立っている怖いお人だと思った。確かに噂通りにお美しくて、身丈もあり、体つきも逞しい。大臣様の重臣の息子様でなくても、そのお姿を見れば、女子のほとんどは心を奪われてしまうだろう。
「領地のほとんどの女を味見している」と言う噂を聞いたときは、どんなに凶暴で恐ろしい御方なのかと思った。実の姿は獣の様なご主人様なのだろうか? 余市は謝ってくれたが、あの時聞かされた話は柚羽の中に消えない恐怖として根付いていた。

 だから、着流しのくだけたお姿でまみえる素顔のご主人様に、柚羽は意外な気がした。軽口を叩いて、こちらを笑わせたりする。子供のような綺麗な瞳でお務めで出掛けた様々な土地のお話をして下さる。時々、こちらを何気なく見られると、ドキドキしてしまった。
 御衣装を整えるときに、衣の間から雷史様の香りがすることがある。それに心が奪われている自分に気付き始めたとき、この想いが特別なものだと言うことが分かった。
 ふんわりと幼い柚羽の元に降りてきた想い、淡い初めての恋だった。

 

◆◆◆

 

 季節は夏の盛りを過ぎようとしていた。そんな夜半。辺りはひっそりして、点在する居室の灯りも儚くなってきた頃。

 

「…あれ? 柚?」
 かさりかさりと落ち葉を踏みしめる音がする。膝を抱えて大木の根元にうずくまっていた柚羽はハッとして顔を上げた。

「…余市」
 かなり遅い刻限ではあるが、仕事帰りなのだろう。柚羽の部屋は奥の居室にあったが、余市は少し離れたところに住まっている。単身の下男のための寮だ。柚羽は少し奥の居室から離れたところに来ていた。無意識のうちにそこから遠ざかりたかった。丁度、辿り着いた先が余市の戻り道だったらしい。

「どうしたの?」
 心配そうな顔が覗き込む。そこに遠慮はなかった。雷史様と秋茜様が親密になられれば、自ずとそれぞれのお付きである余市と柚羽の顔を合わせる機会も増えていく。日に何度も顔を合わせて親しく話をすれば、だんだん気心も知れて来るというものだ。

「何か失敗した? お方様に叱られたの?」
 頬に手のひらが添えられる。そこが濡れているのだから、余市のこの態度も当然だ。でも、その問いかけに柚羽は静かにかぶりを振った。

「…じゃあ?」
 困ったような声。すぐ隣りに腰を下ろす。かなりの身長差があるので、余市が立っていて柚羽が座っているのでは話もしづらい。薄い布地を通して伝わってくる体温も柚羽にとっては心休まるものだった。

 しばらく、隣りの人によりかかったまま、流れるものをそのままにしていた。ぽろぽろとこぼれ落ちるものが自分の重ねに、余市の水干に染みこんでいく。

 ひんやりとした天井からは無数の金の柱が注いでいる。水面の上は満月と呼ばれる頃なのか。天の向こうに違う世界があることをおとぎ話で知っていた。そこは自分たち海底の人間にとっては禁の場所だった。美しく形成された柱は気の流れにゆらゆらと揺らめく。幻想的な美しい情景だった。

 柚羽が黙っている間は余市も次の言葉を発しなかった。このまま沈黙の中にいれば、夜明けまでこうして座っているのかも知れないとすら思えた。
 そんな柚羽の頬に当たるもの。ついっと、何かが流れてくる。何だろうと足元を見れば、草むらに無数の気の泡珠が出来ている。芥子粒のようにごくごく小さいそれが密集して白く煙って見える。少しずつ膨らむと、隣りの珠とくっついて倍の大きさになる。それを繰り返して程良く形作られると、ふわんと浮く。そして気の流れに乗って上へ上へと吸い上げられていく。天の彼方まで。

「…家に…帰りたいな…」
 長い沈黙の後、柚羽の口をついて出てきたのはそんな言葉だった。余市が何も言わずにこちらを見る。不思議そうな表情。

「田舎の…家から少し歩いたところに大きな森があるの。そこに行くと、1年中…それは見事な泡雨が見られるわ。森中が真っ白な泡に包まれて、向こうが見えないほど。小さい頃は面白がってそこに入っては、良く迷子になって叱られて…」

 記憶をなぞる。ここの地に来てからは全てが珍しくて、そんなことを思い起こす事すらなかった。小さな田舎の集落の情景がありありと浮かぶ。人も少なく、近所のものも皆が家族のような付き合い。蔓を編んだり、木材を加工したりして、ありふれた消耗品を産出する山間の故郷だった。

 泡雨、と言うのは海底の国に見られる自然現象だ。植物の呼吸により、普通より濃い酸素が排出される。それが小さな珠…気泡を形成する。少ない数ならば、ぽつんぽつんとはじけて周囲に溶けていく。しかし、春から夏にかけての成長期には周りの気にまかないきれないほどの気泡が次から次へと排出されていく。それが留まることもなく天に昇っていく。産み出されては解き放たれる気泡の粒が遠くから見ると白い流れに見えてくる。この地ではそれを「泡雨」と呼んだ。陸の地での「雨」とは逆に昇っていく雨ではあるが。もちろん、柚羽は落ちてくる雨など知らなかった。それは余市にしても同じ事である。

「柚は…きっと温かい家庭に育ったんだろうな」
 余市の口から出たのも何とも意外な言葉だった。柚羽が泣き濡れた頬のままでそちらを見ると、彼は少し照れたように笑った。白い歯がこぼれる。

「そうかな? 普通の田舎の家だわ。小さくて、兄弟がたくさんいて…」
 余市の問いかけがくすぐったかった。特に奥深く探る感じではない。心の表面をつついて来る。押しつけがましくない誘いかけ。

「うん、でも…柚は可愛がられていたんだよ?」

「…どうして? そんなことが分かるの?」
 きっぱりと言い切る余市の心中が分からなかった。柚羽は目をぱちくりさせて、彼を見つめる。もうとっくに涙はなかった。

「どうしてって…柚は家の都合でこうしてお務めに出されたんでしょう?」
 当たり前じゃないか、と言う感じで余市が話を続ける。

「うん…」
 小首を傾げながらも返事する。家族の話をするのは初めてであったが、自分がどういう理由で西南の大臣様のお屋敷に出たかと言うことを余市も知っていた。
 御領地の周辺の里の者ならいざ知らず、遙か異郷の辺鄙な田舎から出てくるのにはいわく付きの場合が多い。珍しいことであるので皆の噂の種になる。少し訛のある柚羽の身の上をもうこの領地の者は皆知っていた。

 

 去年のこと。ひどい砂嵐で故郷の山林が大きく崩れた。もう切り出すばかりになっていた樹木が根こそぎ使い物にならなくなって。どの家も男が働きに出たり、娘たちが奉公に出たりした。
 柚羽は10人もいる兄弟の5番目だった。下にはまだ生まれたばかりの赤子を含め、幼い弟妹がいる。一番上の姉はもう嫁いでいたが、その下の跡取りになる長兄が妻を娶ることになっていた。しかしそのためには住居を建て増ししたり、色々と金が出る。父親は足が悪くて外になど働きに出られない。次兄は一家の働き手として必要だ。すぐ上の姉は…想い人がいた。
 姉はまだ子供の柚羽にお務めは無理だと止めた。自分が行くから、と。でも柚羽は幼心に知っていた。お務めに出ると言うことは…いつ、この地に戻ってこれるのか分からないと言うことだ。言うなれば「口減らし」…そのままかの地に居着いて嫁に行き、そのままになる場合も多い。
「私が、行きます」そう両親に告げたとき、柚羽も父も母も同じくらい泣いた。でも…仕方ないことなのだ、天災は受け入れるしかない。誰も悪くないのだから。
 仲介人を通じて、この地を治めている大臣様のところで侍女を求めていることを知った。小さな風呂敷の包みひとつで故郷を後にした。春が深まる頃に。一通りの教育が済んで、柚羽に与えられたのは秋茜様の身の回りのお世話をする仕事だった。

 

「こういう話をすると、柚がまた怖がるから嫌なんだけどさ…」
 余市は少し躊躇するようにこちらを伺ってから切り出した。

「普通ね、そう言う経緯で若い娘が奉公に出されるのは…宿所(しゅくじょ)が多いんだよ?」

「宿所…?」

 街道沿いに点在する宿場。そこには土産物屋や見せ物屋…そして様々な宿所と呼ばれる宿がある。柚羽も故郷からここまで出るまでに幾つもの宿所に滞在した。

「ある一定の身分の女子が奉公に出るのは行儀見習いだ、でも…柚のような場合は…最初は下働きでも、お客が取れるようになれば、そう言う仕事をするんだよ」

「え…」
 何しろ、田舎育ちのものを知らない柚羽だ。世の男たちが春を買うことも知らなかった。みんなこの地に居着いてから知識として聞き覚えたのだ。

「そう言うお務めなら…柚の家が今回受け取った金の10倍は頂ける。娘を持った親なら、そうするのが常だよ。俺だってそう言う家をたくさん見てきている。柚は信じられないだろうけど…世の中ってそう言うものなんだ」

 柚羽は唇を噛んで、そのまま俯いてしまった。別に余市の言葉に気を悪くしたわけではない。彼は自分に真実を教えてくれているのだ。最初は分からなかった、でもいろいろと知っていくうちに、彼が柚羽にひとつひとつ噛んで含めるように丁寧に教えてくれているのだと気付いた。
 それを知ってから、柚羽は何か分からないことがあれば顔なじみの侍女たちに聞く前に余市に訊ねるようになった。

「でも、柚の両親はそうしなかったでしょう? そして、柚もそんな家に帰りたいなと思うんだ。幸せなことだよ…戻る家があると言うことは」

「…余市…?」

 それきり、彼は黙ってしまった。

 

 後になってから、柚羽は人づてに聞いた。余市はこの領地下の里出身である。なかなかに大きな家だったらしい。しかし、両親が亡くなり、跡取りの彼が幼年であったため父親の弟、つまり余市の叔父に当たる人が後を継いだ。余市がそれなりの年齢になったら代を譲ることを条件に。
 でもその様な約束は守られないことが多い。余市の場合もそうだった。叔父は自分の息子を跡目に据え、余市を家から追い出したのだ。

「そんな時、俺を拾ってくれたのが雷史様なんだ」
 その言葉を聞いたとき、柚羽は彼に気付かれないように涙を拭った。心が無理矢理ちぎられたように辛かった。幼くして両親と死に別れ、親戚に冷たくされ、行き場のなかった余市。自分がどんなにか温かい記憶に包まれているかを悟った。

 

 また、しばらくの間、ふたりは無言で気の流れを見つめていた。手のひらに気泡を受けて、余市がポツリと言う。

「名家に侍女としてお勤めに出れば、きちんと作法を身に付けられるでしょう? 別に偉い人の側女になるだけが取るべき道ではないよ。それなりの家に縁づけて貰えることも多いから…」
 柚は遊び女(あそびめ)になるのとは、全く違う人生を選べるんだよ…と余市は付け足した。

 その言葉に勇気づけられて、柚羽は少し微笑んだ。それは余市に対する「ありがとう」の気持ちだった。それから、しばらく頭の中で言葉を探してから…ゆっくり話し出した。

「…余市が、最初に言ったよね? 侍女は…お召しがあればお屋敷の方のお相手をすることもあるって…」
 柚羽の柔らかい赤髪は肩で切りそろえられたまま。額髪も下げたままだ。そんな侍女というには幼い女子がそんなことを言う。まだ、紅も引いたことのない、愛らしい桜色の口元から。

「柚…」
 そんなことを言うもんじゃないよ、とたしなめる声。

 気が流れて、柚羽の重ねの袖が流れた。引っ張られる感触…自分の意志ではどうにも出来ないうねりを感じる瞬間だ。重い袖…まだなかなか慣れなかった。

「私ね…」
 首を傾げるとふわっと髪が頬にかかる。その奥の瞳、深い緑。まっすぐに余市を見た。

「御館様だったら…そんなの絶対に嫌だって思うけど…、雷史様だったら、ご主人様だったら…いいかなって、思うの」

 余市の瞳の奥が、ふうっと深い色になる。その後、すぐにくすりと微笑んだ。それを見た柚羽は慌てて眉をひそめた。

「あ、内緒よ? 絶対に…絶対に…誰にも言わないで」

「言わないよ?」

 そう言う余市の目が細くなるから、柚羽はちょっと不安になる。また泣き出しそうになった頭の上にぽんと乗った大きな手。そうやって上から押されると身丈が伸びなくなりそうだからやめてよといつもなら言うのだが…今日は払いのける気にもならない。そのままふっと目を閉じた。

「でもね…こうして、おふたりのお世話して…やだな。閨に…湯桶を持っていくと…たまらない気持ちになって…」

 目の前に、余市の胸がある。水干の淡い色。のっぺりした生地は簡素でちょっとカサカサする。雷史様の御衣装の手触りとは全然違う。それをきゅっと握りしめて、すうっと額を押し当てた。くっつきたいと言うよりは…表情を隠すために。

「どうして、私…もっといい…ご主人様の御相手になれるような家に産まれなかったのかしら? そして、お方様よりも早く御輿入れしたかった…」

「柚…」
 余市は柚羽が寄りかかってもびくともしない。雷史様よりは年若…15だと聞いていたから、柚羽より4つ5つ年長になる。丁度、田舎の次兄と同じ年頃だった。でも余市は山で木材を切り出している兄よりもがっちりしている。上背があるので目立たないが、こうして寄り添うと衣の下の様子が感じ取れる。それでも迷子になった自分を見つけに来てくれた兄に抱きついたあの時のようにホッとしてしまう。

「でも、ご主人様は仰ったんでしょう? 柚を側女にしてもいいって…」
 余市はいつか柚羽が語って聞かせた雷史様の戯れ言を覚えていたようだ。励ますようにそう言ってくれる。しかし、柚羽の心は冷たいままだった。

「でもっ…ご主人様は…お方様の夫君だもの…私はお方様をお慕いしているの。お方様のものを取るなんて、出来ない…っ…」

 柚羽の心の中で。雷史様への想いが大きくなるに従って…それを叶えてはいけないと言う心が生まれて。何ともやるせない葛藤がせめぎ合っていた。お二方には仲良くなさって欲しい、でもそうすると心が割れそうで。
 それでも昼間は良い…夜の、閨のお世話は嫌だった。おふたりがそこで何をしているかは分かっているから。そりゃ、具体的には知らない。でも雷史様が秋茜様を奥の間にお召しになるのは特別の時だ。
 お方様を差し置くなんて絶対に出来ないと思う…でも、お方様になりたいと思う日はある。同じ女子でありながら…雷史様に愛される御身分にあるお方様が羨ましくて仕方なかった。

 こんなこと考えちゃいけないと思うのに…思わずにいられない。口惜しくてならなかった。

「…柚…」
 髪の間にするするっと余市の指。器用に何でも作り出すてのひら。

「駄目だよ、あんまり泣くと心が溶けちゃうよ?」
 うなじの上の髪の付け根の辺りでぎゅっと髪が握りしめられる。痛いほどではないけど、つれて生え際がくすぐったい。

「…そうだね…」
 一頻り泣いたら、少し楽になった。ごしごしと重ねの袖口で顔を拭って、余市を見上げる。

「ごめんね…こんな話、面白くないよね。分からないだろうし…」
 必死で笑顔を作る。頬がひくついてちょっと辛い。視線を下に戻すと、しがみついていた手を解いて、そっと身を剥がす。

 ふたりの間に少し空間が生まれたな、と思ったとき、余市が大きくため息を付いた。胸の中から何かを取り出すみたいに。そのちょっと大きめの吐息に驚いて、柚羽はそちらを見た。

 ぱちっと、目が合う。

 こちらが向いていて相手の視線がやってくるとか、向こうがこちらを向いていて自分の視線がそこに辿り着くとか…そう言うのじゃなくて。ふたりの視線が引き合うように同じ瞬間に一緒になる。心が繋がり合った感じ。同じ色をしてるな、と思える時。

 しばらく黙ったままで視線を合わせていた余市は、やがて観念したようにちょっと目を細めた。口元に笑みが浮かぶ。少し、寂しそうな笑顔。

「…分かるよ?」

 気の流れに乗って、その声が柚羽に届く。一瞬のようで、とても長い時間のような気もした。

「…え?」
 柚羽はいくつか瞬きをした。余市の言葉の意味が全然分からなかった。

 こちらの反応を楽しんでいるみたいに、余市は静かに笑みを浮かべる。

「どういう、こと?」

 さらさらさら、辺りを揺らす気の流れ。奥の居室の際、山の裾野から…下ってきた涼風。どこか新しい季節の匂いがした。気付かない振りをしていても、時は4つの姿を音もなく映し出していく。繰り返し、繰り返し。

 余市の輪郭が金の灯りに浮かび上がって。鋭角の顎のラインが綺麗だなと思った。

「俺もさ…同じだから」
 そこで一度言葉を切ると、するっと視線を空に泳がせた。繋がった糸が途切れる。

「絶対に言えない人、好きだから。だから…柚の気持ち、よく分かる」

 柚羽は。

 黙ったまま、目の前の背の高い、男を見ていた。じっと、見ていた。

 余市が、こちらを向き直る。柔らかく、どこまでも柔らかく微笑む。その口元が、やがてひとつの固有名詞を発した。

「…美祢様…」

「…え?」
 柚羽はもう一度、瞬きした。それに余市は応える。

「柚は…いいよ。女子なら、側女になれる。御子を産ませて頂けたら、母君様として生きられる。でも、俺は…美祢様に触れることすら叶わない。美祢様は…雷史様の乳兄弟…もともと下男の俺とは身分違いだから。男は、そう簡単に身分の高い女子様と情をかわすことは出来ないんだ」

「……」

「内緒だよ?」
 切れ長の目、少しつり上がって。薄い唇にひとさし指を当てて。

「お互いにさ、辛い者同志だけど。話を聞くくらいだったら、出来るから。…その代わり柚も俺の話を聞いてくれよな?」

「…うん」

 まだ信じられなかった。…そうなの? 本当に? 余市って…美祢様のことが…?

「…さ、早く寝ないと。明日起きられないよ?」

 そう言うと、余市は柚羽の背中をとん、と押した。慌てて見上げると…もう一度、包み込むように笑いかけてくれた。その瞳の奥が…少し悲しげに揺れていた。