TopNovel短篇集・2 Top>十年目の蒲公英・2


scene 1…

 

 

 あの日、一面が黄金色の蒲公英の空き地で、私は日が落ちるまでひとりで泣いた。

 そりゃ、こんな日がいつかは来ると思ってた。当たり前じゃないの。私たちは、きっとそれぞれに大人になって、それぞれに結婚する。ずっと将来、同窓会とかで出会ったとき、お互いにおじさんやおばさんになっていて、可笑しくて笑うんだ。

 

 だけど、あの瞬間。

 

 私は「裏切られた」って、思った。修司のことが許せないって思った。修司なんて、私の中から消えちゃえばいいのに。口惜しくて口惜しくて、いつまでも涙が止まらなかった。

 

 透き通った春の香りが辺りに満ちて、季節の訪れを告げている。ちっちゃい頃と少しも変わらない風景。山も森も、同じ姿でここにある。なのに、私たちだけ大人になっていく。

 ふと見ると。「10年後」とみんなで約束したあの岩があった。よろよろと傍による。私は一抱えほどのそれを必死で持ち上げると、思い切り放り投げていた。何年もの間、私たちの秘密をしっかり守っていた岩は、地面に辿り着くと同時に、ぐしゃっと音を立てて壊れた。

 

◇◇◇


 ――みんなは知らないのだろうか。裏山に埋めた私たちの想いは、もう探せないんだよ。私が壊しちゃったから。もしもあの場所に行ったら、きっとがっかりする。

 


 無邪気だった頃。まだ制服を知らなかった昔。

「タイムカプセルって知ってる?」

 思えば、そう言いだしたのも修司だった気がする。土の中に埋めておいて、ずっと未来に掘り起こす。大切にしていたものとか、将来の夢とかを書いた手紙とか。そんなものを入れるんだって言った。

「自分の夢を書こうか?」

 誰かがそう言って。私たちは、お互いに見られないように隠しながら、自分だけの夢を便せんに書いた。そして、封筒に入れる。篤郎が家から蜂蜜の空き瓶を持ってきてくれた。6人の「夢」を詰めて、学校の裏庭に埋めた。

 

 大人になったらみんなで掘り起こそう。それまで友達でいようねって。

 

 あれは、小学校の卒業式のあとだった。もうあれから13年。そして……中学の卒業から10年目の今年。私たちは自分たちの「夢」を掘り起こす瞬間を迎えていた。

 

◇◇◇


「はな先生、キリがいいところで上がっていいわよ〜っ!」

 入園式用の切り貼りの絵のパーツを作っていたら、背中から声を掛けられた。私は振り向いて、「はい」と答える。もうちょっと……30分くらいやってたい。

 幼稚園の講堂。ステージの後方の垂れ幕に、色画用紙で作った切り絵を貼るんだ。遠くからでも見えるように作るには、それなりに大きく、でも分かりやすく作らなくちゃならない。

 菜の花の中にミツバチが飛んでいる可愛い絵柄は、幼稚園用のカット集から選んだもの。それを拡大コピーして、色画用紙に型を写し取り、折り紙のように折り目を入れたりしながら、立体的に仕上げていく。ひとことに「黄色」と言っても、5色くらいを使い分けてる。多分、誰もそこまでは見ないけど、いいんだ、こういうのが好きだから。

「はな先生が来てから、園が明るくなったわ。色々と切り絵を作ってもらえるから、子供たちにも保護者の方にも好評なのよ」

 そう言ってもらえると嬉しい。就職難のご時世。私は専門学校が2年終わってから、大学に入り直した。年齢的にもネックになっていて、なかなか就職が決まらなかった。ようやく産休補助の仕事が見つかって、ホッとする。それまでは無認可のベビールームにいた。

 幼稚園の先生と保育園の保母さん。それぞれに所得しなければならない資格が異なる。「保育士」の資格は通信教育でも取れるけど(実習はある)、幼稚園の方は大学に通わないと難しい。「幼稚園教諭免許状」にも1種と2種があり、やはり1種を持っていた方が就職に有利だと聞いた。私の場合は家政学部の児童教育の学科に通ったけど、実習の連続で本当に夏休みもなかった。

 でも……一度は諦めようとしたこの道、進んで良かった。今は本当にそう思っている。

 高校の卒業時に、児童学科へ入るのがあまりに難関だと聞いて、躊躇してしまった。少子化で就職も困難なのに、未だに幼稚園や小学校の先生になりたい人は多いんだ。10倍とか20倍とか……震え上がるほどの倍率。それも現役ではほとんど無理らしい。さっさと実務系の専門学校に方向転換した。

 上京して、お金のゆとりが欲しくてバイトを探して。その時にある商社の雑用の仕事を見つけた。そこでひとつの出会いがあって……別れがあって、今の私がいる。懐かしい友達が全然知るはずのない東京での私。恭子たちはどうして私が彼氏も作らずに仕事に没頭しているのかとても不思議らしいけど、私はもうたくさん。恋愛なんて面倒だし、悲しいこともあるし。仕事の方がずっといい。


「土曜日まで悪いわね。午後は業者の人が清掃にはいるから、はな先生も帰っていいわよ。ゆっくりしてちょうだい、明日は日曜日だし」

 ああ、そうか。もうちょっとやりたかったのにな。私は辺りを片づけることにする。O-157の事もあって、園舎も定期的に消毒して清潔にしないといけないんだって。毎日の掃除とかもかなり神経質だ。アパートの部屋なんてごった返してるのに、職場では必死で掃除する。なんか女らしいんだか、そうじゃないんだか分からない。

 

 ……掃除とか、面倒だしな。

 実家に戻るのも面倒だった。だって、弟の入籍で、私の立場はとても微妙になっている。近所の人も親戚も「順番を間違えた」私たち姉弟のことを好奇の目で見るんだから。小さな田舎町だから、みんな顔なじみ、同級生の誰がどうしたかっていうのも母親が全部知っていて教えてくれる。聞いてもいないのに。

 そう思いながら、作りかけの切り紙の絵に視線を落とす。クリーム色、レモン色、絵の具の黄色に山吹色……たくさんの花びらが私の目の前で踊る。

 

 ―― 一面の蒲公英。きっと今頃、あの裏山では黄金の絨毯が広がっているだろう。大人になってしまってこんなに変わってしまった私なのに、あの風景は変わらない。変わってしまった私をどう思うんだろう。そう考えると恥ずかしくて、足が向かないでいた。

 今日が約束の日。今から帰っても1時間遅れになっちゃう。きっとみんなもういない。

 

「行ってみようかな」

 

 ひとりになった部屋で、ぽつんと呟いていた。掘り起こされた夢の残骸を見たら、もしかしたら変われるかも知れない。過去に追いすがった私。その引っかかった心の傷。一生引きずるのは……嫌だな。

 


 真っ赤に染まった風景。

 ああ、15歳のあのときのように。制服を着ていたら、あの日に戻れるだろうか。ううん、それは無理。10年の時の流れは私を変えてしまった。

 坂を上りきって、拓けた場所。金色の輝きの真ん中に立っていたのは、たったひとりだった。

 

「え……どうして」

 結局1時間半も遅れて、辿り着いた私を大人になった彼が出迎える。まるでこの裏山の主のように。

「お帰り、玲香」

 

◇◇◇


 バイトに通い始めて。私は気になる人が出来た。高校は女子校だったし、専門学校も男子が一割くらいしかいなくて、男っ気のない生活を送っていた私にいきなり訪れた出会いだった。

 背が高くて、おまけにがっしりしていて。でもマッチョとかそう言うんじゃないの。学生時代は山岳部にいて今よりも10キロ以上太っていたんだよ〜なんて聞いたときはびっくりしたけど。すっごいカッコイイのに、それなのにどこか素朴で。北関東の田舎の町出身だって聞いて、なお親近感を持った。

 

「槇原さんって、カッコイイですね」

 そんなことをお昼休みに社員の女性に呟いたら、あとは何だか知らないうちにお膳立てが整っていた。自分でもびっくり、ここってどうなってるの?

 職場の人たちは、すごく好意的に私の恋を応援してくれた。飲み会とかでは近くに座らせてくれたし、部内のボーリング大会にもバイトの私を誘ってくれて。そうこうしているうちに、いつの間にかふたりで出かけるようになっていた。

 最初のデートは映画を見に行った。田舎町とは比べものにならないほどの人混み。私は都会の生活にまだ慣れてなくて、他の人の歩幅に合わせられない。少し進むとぶつかったり、つまづいたりする。

「大丈夫? 玲香ちゃん」

 槇原さんは私を振り向いて、慌てて戻ってきてくれた。そして、当たり前のように手を取る。しっかり繋がった手のひらから、暖かいぬくもりを感じた。

 

 ……幸せって、こんなのかな?

 こちらに合わせてくれるおしゃべり。槇原さんも今年就職したばかりだったけど、仕事も良くできて、社内の評判もすごく良かった。そんな人とこうしてふたりっきりで会ってる。自分が信じられなくて、どきどきして、でもすごく嬉しかった。

 遊園地に動物園、水族館。お休みになるたびにいろんなところに連れて行ってくれた。槇原さんが車を出してくれることもあったし、電車で行くこともあった。どこにいてもすらっと背の高い彼は目立っていて、私は隣を歩きながら得意になっていた。

 

 ある日……どこかの公園に行った。広い芝生の上でお弁当を広げる。デートに行くのに手作りのお弁当なんて、すごくそのまんま。でもそんな感じが嬉しかった。彼の横顔の向こうに水平線が見える。海のすぐ近くで、心地よい潮風が吹いてた。

「俺の田舎は山の中でね……海なんて、かなり大きくなるまで見たことなかった」

 そんなことを突然言い出されて、どきどきする。仕事の顔を忘れた無邪気な笑顔に私は心ごと持って行かれていた。いいなあ、こんな人とずっと一緒にいられるんだ。みんなお似合いだって言ってくれるし……もしかして、もしかして。

 私たちの目の前をちっちゃな子供がかけていく。それを優しい目で見守る槇原さん。きっと彼は子供が好きだ、いいパパになるだろうな……。

 

 自分でも不思議なくらい、次々と想像が広がっていく。その隣にはいつも槇原さんがいて。ふたりで歩く未来への道が、ずっとずっと続いていた。私のことを包んでくれる大きな手のひらが、傍にいるのが当たり前になっていた。

 槇原さんの田舎、どんなところだろう。槇原さんを育んだ土地、私はいつか行くのだろうか。そして、槇原さんも私の生まれたあの小さな田舎町に来てくれるんだ。やだなあ、どこも案内するところなんてない。名所とか旧跡とか何にもないもん。がっかりされちゃうかな。

 ……あ、でも。

 私の一番好きな場所に連れて行きたいなと思った。季節は春、蒲公英が咲き乱れる小学校の裏山。そこに昔タイムカプセルを埋めたことも教えてあげよう。

 そう……思った瞬間。彼の前髪がふんわりと舞い上がった。広く現れる額、そこから鼻筋に向かうラインがどこかで見たことのあるものに似ていた。何だろうと戸惑いながら、海を見てる横顔を眺める。

 やがて私の中に、忘れかけていた名前が浮かんできた。

 

 ――修司。

 

 思わず、瞬きして。そのあと、目をこすった。

 違うよ違う、私の目の前にいるのは槇原さん。修司なんて……もう知らないのに。あんな奴、私、思い出したくない。どうして、一瞬でも浮かんで来ちゃったんだろう。

 そのあと。私は出来る限り考えないようにした。それなのに、槇原さんのちょっとした仕草に修司を探してしまう。もちろん、全然別の人だから、似てるわけない。なのに、修司が目の前にいるようなもどかしい気分になる。

「そろそろ……行こうか?」
 そう言ってこちらに向き直った笑顔。……やっぱり、どこか面影を感じてしまった。

 


 それから程なくして、槇原さんの方から一方的に別れを告げられた。私にはもう何が何だか分からなくて、職場では無理だったけど、専門学校の友達の前でたくさん泣いた。

 私のための笑顔、私のための言葉。槇原さんが傍にいてくれる時間がとても好きだった。ふわっと安心する。人がたくさんいる雑踏の中に埋もれていても、あの頭ひとつ分大きな姿を見つけるとホッとした。槇原さんは私にとって、安心できる場所だった。
「大好き」の気持ちを受け止めてくれることが、こんなに嬉しいなんて。心細さを感じなくていい日だまりみたいな存在に、寄りかかっていた。

 それがいきなりなくなったんだから、衝撃が大きい。

 

 ひとりの部屋に戻って泣きながら、私は以前にもこれと似た気持ちを抱いたことがあることを思い出した。

 ……そうか、修司だ。

 修司が女の子を連れて歩いてるのを見てしまったあのとき。私はそれまでの人生で味わったことのない「裏切り」を感じていた。修司に特定の彼女が出来るなんて……そんなの当然なのに、それなのに、許せないって思った。
 考えてみれば、今回の事なんてたいしたことじゃない。修司に受けた傷に比べたら、本当に些細な出来事だ。それどころか、いつの間にか槇原さんの顔に修司が重なる。あの日、私を見つけた時の驚いた瞳。何か言おうと動いた唇。そう……修司からは「ゴメン」のひとことも聞いてなかった。

 ……ううん、修司が謝ることなんて何もなかったのにね。

 

 大丈夫だよって、職場では気丈に過ごしていた。……そのつもりだったけど、周囲の反応はこちらの気持ち以上にすごかった。そして、槇原さんが別の女性と付き合っていると言うことも知ってしまった。

「フタマタ、かけられちゃったんだね……」

 可哀想にと慰められて、なんか複雑だった。ううん、二股なんかじゃないよ、槇原さんは私を選ばなかっただけ。私よりも大切な人が出来たから、自分に嘘が付けなかっただけ。

 相手の女性は、いつも受付カウンターに座っていた髪の長い人。遠目にもぱっと目を引くような美人だった。どことなく憂いを含んでいる感じがまた素敵で。こんな風になるまでは、結構いいなとか思っていた。

 ただ……状況が変わると、私はその人と二度と挨拶をすることも出来なかった。

 一緒に仕事をしていた女性社員さんはみんな私にとても好意的だった。色々と情報も提供してくれる。相手の女性が槇原さんを誘惑したとか、身体の関係で繋ぎ止めているとか。でも……そんなこと聞いたってどうなるものでもないのに。更に、私の知らないうちに、事態は更に悪くなっていた。

 

「本当に、嫌な女よねっ! 少しぐらい堪えてもいいのにさ。涼しい顔をしちゃって……」

 ある日、給湯室で社員さんたちが話しているのを聞いて、初めて知った。槇原さんが選んだ女性のこと、陰口を言ったり……嫌がらせをしたりしていたんだ。私、そんなこと頼んでないのに、「玲香ちゃんが可哀想」って、言いながら攻撃する。話の内容から考えて、かなり陰湿にしているみたいだった。

 私は影から覗いていたから、話をしている社員さんたちの顔は見えなかった。でも、ゆらゆらと壁にうごめく人影が見える。それが二本の角を持った鬼のように思えてきた。怖かった。

 私にとってはとても優しい社員さんたちだった。槇原さんとの仲を取り持ってくれたり、色々と応援してくれた。それなのに……どうして? そんなコトするの……? 槇原さんが選んだ女性でしょ、悪い人のはずないよ。苛めないでよ。

 でも……その気持ちを口にすることは出来なかった。相手の女性にもいつか謝りたいと思ったけど、とうとう叶わないまま、退職されてしまった。槇原さんは面と向かっては何も言わないけど、きっと心の中で怒ってる。自分の大切な人をそんな風にされたら、絶対にいい気はしないはず。

 ターゲットの女性が退職したことで、鬼の首を取ったようにはしゃぐ人たちもいたけど、私は妙に冷めていた。私が恋愛なんてしたから、そのせいで傷ついた人がいるんだ。

 そう思ったら……もう何もかも嫌になった。

 

 傷つくのは嫌、私も、他の人も。ただ、静かに生きていたい。人を好きになる感情を抱いた瞬間に、私の心の中にはどろどろとしたものが渦巻いてくる。きっと……あの女性社員さんたちも、私のそんな部分が投影されただけなんだ。あれこそが私の中のどす黒い部分なんだ。

 もう……恋なんてしない。そう決めた。

 

◇◇◇


「他の……みんなは?」

 彼の姿を見つけた瞬間に、私はその場に立ちつくしていた。足がそれ以上前に出ない。すぐにでも立ち去りたかったけど、夕日に照らし出された笑顔が信じられないくらい昔のままで……いつの間にか時を越えたような気分にされていた。

「もう、帰ったよ」
 修司は短くそう呟くと、そのまま俯いてふっと笑った。

「……というのは、嘘。みんなは来ないって、ふたりで話をしてこいってさ」

「え……」

 久しぶりに見る姿だった。

 ホント、修司には会いたくなかったから、ずっと避けていた。同窓会にも出ないようにしていたし、恭子や彩音の結婚式でも目も合わせないようにしていた。これ以上、何かあるのが嫌だったから。修司は私の思い出の住人、とっても綺麗な場所に住んでいる。だから……汚したくなかった。

 少し寂しそうな笑顔。なんか槇原さんに似てる。ううん……違う、槇原さんが修司に似てるんだと思う。情けないなと思ったけど、多分、槇原さんに惹かれた理由も修司に似てるからだと思う。

「話すことなんて、何もないけど」

 そうやってうそぶくのが精一杯だった。

 修司には聞きたいことがたくさんあった気がする。でも、何も言いたくなかった。私の中にある感情を永遠に封印するために、全てを覆い尽くさないと行けなかったんだ。

「そうか」
 また、短く言う。昔から、余計なことは何も言わない奴だった。そう言う根底の部分は変わらないんだなと気づく。変わらない部分と変わり果てた部分、それを知ることが出来るのが昔なじみなんだろう。

「どうする……掘ってみる?」

 おもむろにスコップを取り出す。私はちょっと慌てた。

「え……だって、場所が分からないでしょ?」

 戸惑う私を彼は目を細めて見守る。そして、私の後ろを指さした。

「あの山の鉄塔と、沈んでいく夕日が重なる場所、崖から歩いて、10歩目。それくらい、ちゃんと知ってる。岩なんて、いつどんな風に壊れたりなくなったりするか分からないから、きちんと覚えておいた……だから、ここ」

 彼は自分の足下を指さした。私もつられて視線を移す。でも一面の蒲公英の中に、本当に目的のものがあるのか。全然信じられなかった。

 

 涼しい夕風が通り過ぎていく。私たちの距離は一向に縮まらない。昔のまんまの蒲公英、そして変わってしまった私たち。

 

「思っていたより、馬鹿力だよな」

 このまま思い出の中の風景に溶けてしまいそうな彼が、また懐かしい笑顔を見せた。何もかも飛び越えて、昔に戻れたら、どんなにいいだろう。野山を駆けめぐって、好き勝手に大声を上げて、笑って。届かない夢があるなんて知らなかった頃。

「誰も見てないと思ったんでしょう? 知ってるんだから、玲香の証拠隠滅事件」


 

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