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第六話


 こんな時に、よりにもよって警察につかまってしまうなんて…! 私は焦って、どう答えればいいのか分からなかった。けれど貴彦はそれを好機と見たらしく、周りをちらりと見てから口を開いた。
「刑事さん、今から言うこと信じて下さい。俺たちも確信があるわけじゃない。でも、もしもこれが当たってたら、ここで勇気を持って話さなかったこと、一生後悔する」
 真剣な眼差しで、少しも臆せず青年に向かい合う。それを受け止める瞳は、相手を見極めるように貴彦に注がれる。とりあえずは話を聞こうと思ったのか、刑事さんは促すようにうなずいた。
 貴彦がひとつ息を吐いてから、青年に向き直る。
「展望スペースにその何かが仕掛けられてるはずです。それが作動したら、あの学校からも見えるようなもの。それを作った人間は、このビルを憎んでいる。派手に破壊するつもりと考えるのが一番妥当だと思うんです」
 刑事さんはそれを耳にしても、あまり驚いた様子はなかった。かといって、高校生の突拍子もない話を、胡散臭く感じているようでもない。むしろその後ろにいる警備員の人の方がぎょっとしていた。
 そもそも、どうして刑事さんがこの会場に都合よくいたんだろう? もしかすると、こういう事態を予想していたんだろうか? 同じことを、貴彦も思ったようだった。
「警察はそういう情報をつかんでいたんですか?」
 けれど刑事さんは首を横に振った。
「そういうわけじゃない。でもこのツイン・ビルに関してはいろいろあったからね。節目の年でもあるし、式典もあるとなれば、これほど狙いたくなる状況はない」
 そして険しい表情をする。
「しかしせっかく信頼できそうな情報をもらったところで、最上階を今からさらう時間はないだろう。式典を中止して避難してもらうしかないな」
「でも、あいつ…犯人もこの会場内にいます。仕掛けが時限式だったらいいけど、もしスイッチを持ってるとしたら…」
「どのみち止められないということか。やってくれる…」
 先生に対する怒りを浮かべている二人を、私ははらはらしながら見比べる。どうしてこんなことになってしまったのか。先生はこんな私たちを、また何も知らない人たちを、嘲笑っているんだろうか?
 私はふとささいなことに気付いた。
「でも仕掛けたのは今日じゃないんだよね。少なくとも昨日よりも前。不審物と分かるような…例えば置き忘れの紙袋とかだったら、中身を調べられちゃうよね? そうされないように仕掛けたんなら、ますます見つけるなんて無理…」
 一応貴彦に対して言ったつもりだったけど、刑事さんもうなずいた。
「犯人の容姿や年齢は?」
「えっと…来年定年だから59歳で、背は小さめです。150ぐらい…かな。顔は優しそうな感じなんだけど…」
 そこまで口にして、言葉に詰まる。あんなにも物静かで、穏やかな先生だったのに。まだ信じたくないという気持ちが残っていた。
 刑事さんがふと後方を振り返って、警備員のおじさんを見た。
「ここ一、二週間の来客の中から覚えはありませんか」
 警備員さんはびっくりして、それから手を左右に振った。
「いくら何でもそこまでは…」
 刑事さんも答えを期待して聞いたわけではないようだった。
 そこで、貴彦が警備員さんに向かって口を開いた。
「展望スペースは、何時まで開放されているんですか?」
「えっと、この時期は六時までだよ。夏になると七時までになるが」
「学校からここまで車で十分から十五分ってとこか…。平日でも間に合わない時間じゃないな」
 その貴彦の言葉に、私ははっとして彼の袖をつかんでいた。
「貴彦、でも…あの先生、演劇部の顧問してるから。六時までだと難しいんじゃない? だとしたら土日に来るか、あとは部活が休みの水曜ってことになるよ」
 でも貴彦は悔しそうに首を振る。
「それでも二週間で六日…絞れる日数じゃないな」
 けどそこで、警備員さんが息を呑んだ。
「水曜…?」
 刑事さんがそちらを見る。
「何か心当たりが?」
 おじさんは少し何かを考えていたようだけれど、すぐに顔を上げた。
「関係ないかもしれません。でも…たしかに今週の水曜の夕方、そういう感じの人が来てました。その人、最上階に置いてある鉢につまずいて、土までぶちまけたんですよ。だから覚えている。そう…人の良さそうな印象で…恐縮しながらあわてて土を戻してました」
 貴彦がそれに対して首をひねる。
「緊張してドジったのかな? 目立ちたくないだろうに」
 すると刑事さんがはっきりと首を横に振った。
「わざと、という可能性もある」
「え? それってまさか…」
 そのまま二人は黙りこくってしまう。私はその言葉の先が見えなくて、貴彦の袖を引っ張る。同時に刑事さんがおもむろに携帯を取り出し、小声でどこかへ連絡し始めた。たぶん、応援を頼んでいるんだろう。
「貴彦、わざとってどういうこと?」
「鉢の土をぶちまけるのが目的だったってこと。土と一緒によけいなものまで戻したんだよ」
「…そこに…仕掛けたってこと?」
 貴彦はこくりとうなずいた。
 しばらくして携帯に話し終えた刑事さんが、また警備員さんを見た。
「その鉢はどの辺りになりますか」
「えっと…ビルの東側の窓際になります。あの辺りですね」
 おじさんはツイン・ビルの最上階の一角を指差した。
「あそこで爆発したとして…下は公園か。犯人の目的はあくまでもこのビルというわけだな」
 私はこんな時なのに、その事実にちょっとほっとしていた。もちろん、それで罪がなくなるというわけじゃないけれど。
「ビル内のエレベーターはすぐに動かせますか?」
「え、ええ…。照明は落としてますが、電源は入ってますから。まさか…上に昇られるんですか?」
「少しでも被害を小さくすることはできるはずです。式典が終わるまでにしても、応援が駆けつけるまでにしても、まだ時間があります。できることはしないと。中に入れて下さい」
 警備員さんは引き止めたそうな表情をしていたけれど、やがてうなずいた。
 玄関口からではなく、非常口の鍵をおじさんが開けた。そこのドアを引いてから、刑事さんは私たち三人を振り返った。
「あなたたちはこのビルの、特に東側から離れて下さい。建物を崩すほどの威力があるとは思えませんが、何が起こるかは分かりませんから。じき警察が到着します。騒ぎにはしないで下さい」
 警備員さんがごくりと唾を飲んで、首を縦に振った。
「は、はい…」
 刑事さんが中へと消えていく。私たちは緊張した顔を見合わせた。
「じゃ、じゃあ、君たちは早くここから遠ざかるんだ。私は警備員としての仕事が残っているから」
 おじさんがそう言ったので、私と貴彦はビルに背を向けて少し早足で歩いていく。ちらりと見ると、警備員さんは会場の方へと向かっていった。
「刑事さん、大丈夫なのかな…」
 不安にかられて、私はぽつりと口にする。同時に、貴彦がぴたっと足を止めた。
 私の腕をきゅっとつかみ、真剣な表情でツイン・ビルを仰ぐ。それから、こちらに視線を向けた。
「真帆、お前は安全な場所まで行ってろ。いいな、そこで俺を待ってろ」
「貴彦!?」
 有無を言わせない口調でそう言うと、彼はくるりときびすを返して、ビルへと走り出した。突然の行動に私は驚いたけれど、どこか貴彦ならそうするかも、と思っていたのかもしれない。
 だから後先のことなんて何も考えずに、遠ざかっていく背中を追って走った。

 手前のエレベーターが最上階に辿り着いている。もうひとつのエレベーターの扉が閉まりかける。私は息を切らしながらも、柱についた上向きのボタンを叩く。奥の扉が再び開くのを見て、そこに駆け込んだ。
「真帆!?」
 驚愕する貴彦の顔を横目に、ドアを閉めるボタンを押した。やがてそこは密室になって、箱が上昇し始めるのが感じられた。
「貴彦…足速いよ…。さすがスポーツしてただけある…」
 はあはあと荒い呼吸を繰り返しながら、私はちょっとだけ笑ってみせた。でも当然ながら、貴彦は笑顔を見せなかった。
「お前、何で…。安全な場所に行ってろって言ったのに」
 少し息が整ったので、私は彼をまっすぐに見た。
「刑事さんと貴彦を危ない目に遭わせといて、私だけ高みの見物してろっていうの? それができるくらいだったら、今も地学室にいたよ! 貴彦だって行動してるじゃない。ここまで来て仲間はずれなんてずるいよ」
「ばか、そんな問題じゃないって…」
 貴彦が近付いて私をそっと抱きしめた。
「分かってるくせに、お前はこんなことするんだからな…」
 私も彼の体にぎゅっとしがみついた。
「貴彦、一人で行かないで。守られるの嬉しいけど、それだけなんて嫌だよ。私はいつも、貴彦の隣にいたい」
「真帆……」
 温かい手のひらが私を上向かせて、唇が重なった。
「俺はお前が大事なんだよ。誰の手からも傷つけさせたくない。いつも笑っててほしい。今日まで気付かなかったけど、俺、自分よりも真帆が大事だ。だからこんな危険なことさせたくなかったのに」
 私はぶんぶんと首を横に振った。
「私だって! 貴彦のことが大事なの。一人で無茶するなんてぜったい許さない。ね、二人で無事に帰ろう? どっちが欠けてもだめだよ」
 貴彦はやや呆然とこちらを見つめていたけれど、やがて小さく息をついて、微笑を浮かべた。
「そうだな。分かったよ、真帆。ごめんな」
 私たちはまた強く抱き合った。
 貴彦がエレベーター内の階数表示を見上げる。私も同じようにそちらを見た。二十階までもうすぐだった。
 貴彦がこちらの肩をしっかり抱いて、ちょっとだけ苦笑した。
「そうそう、ついでにあの刑事さんも一緒にな」
 思わず私も軽く吹き出してしまった。

「君たち、どうしてここに…」
 展望スペースについて、エレベーターから出ると、立ち上がって振り向いた刑事さんが絶句した。
「後でいくらでも説教受けます。爆弾は見つかりました?」
 開き直ったのか、貴彦は冷静に尋ねた。相手も時間がないことを思い出して、ひとつため息をつくに留めた。そして、足元の鉢を見下ろす。植えてあった草と土は掻き出されていた。
「小さいやつだが、威力はある。時限式で、猶予はあと一分半。できるのは、窓から遠ざけておくぐらいだ。急いでこの階から下りるんだ。エレベーターではなく階段で。このフロア一帯は吹き飛ぶだろう。早く!」
 刑事さんは私たちを怒鳴りつけると、鉢を持ち上げて、窓際からスペースの中心へと移動させる。そこに置くと、近くにあるテーブルなどを倒して、ささやかなバリケードを作っていく。
「何、突っ立ってる!? 早く行け! 一般市民を巻き込んだと言われるのだけは、このプライドが許さないんだ! 俺もすぐ向かう! これ以上手間をかけさせるな!」
 なおも作業を続けながら、刑事さんは厳しい叱咤を投げつける。私はすっかり足をすくませてしまった。貴彦も、手伝う余裕がないと知って、悔しそうに唇を噛みしめていた。
「いいから行け!」
 血を吐きそうな叫びに、私たちは圧倒され、階段の方を振り返った。けれどそこに向かおうとした瞬間、貴彦がぐっとその場に踏みとどまった。そしてばっと私を見る。
「真帆、この階のトイレはどこにある?」
 突拍子もない質問に、私は一瞬言葉を失う。けれど彼の怖いくらい真剣な瞳に、我に返った。
「そこにある階段の向こう。すぐ隣だよ!」
 最後まで聞かず、貴彦が走り出す。私もそれを追いかける。彼は男子トイレに入っていった。私はちょっと迷いながらも、用を足すなんて呑気なことをするわけがない、と思い、その後に続いた。
 中に入ると、貴彦は腰の高さにある狭い段差に器用に乗っかり、換気窓を上げていた。
「た、貴彦、何してるの?」
 彼はそこから床に飛び降りると、こちらへ走りざま、私の腕を引っ張って外へと出た。
「真帆、お前はここにいろ! いいな?」
「貴彦!?」
 訳の分からない私を置いて、貴彦は元いた場所へと戻っていく。すぐに、彼と刑事さんの争う物音や声がした。私がそちらへ向かおうか迷った瞬間、貴彦が走ってくるのが見えた。そしてその手元には、あの鉢が抱えられていた。
「待てっ!」
 刑事さんが懸命に彼を止めようと追いかけ、手を伸ばす。けれどそれも空を切って、バランスを崩しそうになった刑事さんと先を行く貴彦の間に、決定的な距離が生まれた。
 彼と目が合って、真剣な瞳がわずかに緩められた気がした。動くことのできない私のすぐ隣を貴彦が通り過ぎ、それを追って振り向いた時には、彼の足が男子トイレに消えるところだった。
 考えるよりも先に体が動いていた。命の危険に近付くのに、何のためらいもなかった。入り口から横に曲がって、広いスペースの端に辿り着く。同時に、後ろには刑事さんが来て、私を押しのけようとする。すぐそこには、右手で鉢のふちをしっかりを持った貴彦が、ちらりとこちらを見た。
「信じて」
 きっ、と開かれた窓を睨みつける。
「よせっ!!」
 刑事さんの手が届くより前に、彼は走り出す。半ばほどで急に足を止め、右腕を後方低く伸ばす。そして全身のバネを使って、思い切り鉢を投げる。中学ではたびたび見た、彼のロングスロー。狙いを違わず、貴彦の持っていた物は、開かれた窓を通り抜けて、空へと飛んでいった。
 一秒、いや二秒の空白? 次の瞬間、鼓膜を破りそうなほどの爆発音と、地震のような衝撃が辺りを襲った。立っていられなくて、床に倒れ込む。その私をかばって、刑事さんの体が覆いかぶさる。びりびりと空気が震えた気がした。
 どれくらいの間そうしていたのだろう? しばらくして、上にいた人が体を起こす気配がした。そちらを見ると、刑事さんが室内の奥に目をやって、それからさっと立ち上がった。
 駆け出した足の向こうに、頭をかばって倒れている貴彦が見える。爆発で砕けたガラスが、体の上に積もっている。動く気配を見せない彼に、私もあわてて立った。
「君っ!」
 刑事さんがそばにしゃがみ込み、ガラスを払って貴彦の体を揺する。その隣に膝をついて、私も声を振り絞った。
「貴彦っ!」
 すると、倒れたままだった彼の肩がぴくりと動いた。
「う、…ん…」
 わずかに上半身を起こして、自分の背に置かれた刑事さんの手に気付き、こちらを見る。無理やりに起こされたような、ぼんやりした顔をしていた。
「君、大丈夫か? どこか痛むところはないか?」
「え? 今、何て?」
 話しかけられて、かろうじてそう答える。意識があることにほっとしたのか、刑事さんは口調を和らげた。
「怪我していないか?」
 けれど貴彦は反応せず、ただ目の前の人の口元をじっと見つめていた。
「…君?」
 様子のおかしい彼に、刑事さんが覗き込むように眺める。すると貴彦は、耳の中に人差し指を入れて、それから視線を戻し肩をすくめた。
「すみません、ちょっと耳がいかれたみたいで。よく聞こえないんですよ」
 刑事さんはなるほど、とうなずく。そして、ジェスチャーで『体はどうだ?』という意味のことを尋ねた。貴彦はぽんぽんと自分の胸を叩いて、『平気です』と答えた。
 彼の瞳が、こちらに注がれる。たぶん私は、ひどい表情をしていたんだと思う。だから貴彦は一瞬目を丸くして、それから、しょうがないな、というふうに柔らかな笑顔を見せてくれた。
 彼が無事でほっとしたのと、どうしようもなく申し訳ない気持ちで、ぽろぽろと涙がこぼれた。いつの間にか私の前で来た貴彦が、よしよしと頭をなでてくれた。刑事さんも小さな笑みを浮かべている。
 そのまま私は、二人の前で思いっきり泣き出してしまった。

 私たち三人がエレベーターを使って一階まで下りてくると、ビルの外は騒然としていた。逃げようとする人たち、それを誘導する警察官。混乱はしているけれど、我を失っている人はいないようだった。
 だだっ広いエントランスを抜けようとしたところで、非常口からよろよろと駆け寄ってくる人影があった。その人物は私たちの十メートル手前ほどで息を切らし、床に膝をつく。小柄な体の老年の男性。それは大野先生だった。
「ど、どうして君たち二人がここに…。そうか、あれを不発に終わらせたのは、君らか…!」
 怒りと悲しみの混じったような顔を歪ませ、先生は私と貴彦を交互に睨みつけた。それを見て、刑事さんがこちらにこそっと耳打ちした。
「あれが?」
 私は複雑な気持ちでうなずく。すると刑事さんはスーツの胸元に手を差し入れると、さっと拳銃を取り出した。そしてかちんと撃鉄を起こし、先生に向かって両手で構える。でも先生はその時点でうつむいてしまっていた。
「おかしな真似はしないように。いろいろお伺いしたいことがあります。署へ同行してもらえますね」
 けれど先生はひたすらにうなだれていた。
「おかしな真似…ですか。何年もかけて準備したものが、この様だ。これ以上私に、何ができるというのです」
 刑事さんがそちらに近付いて、先生の両腕を後ろ手にしてから、銃を懐にしまった。その拍子にこちらに向けられた先生の冷ややかな笑みが、私をぞっとさせた。
「息子の復讐を果たそうとした私の計画が、息子を裏切った女性の娘さんと、その騎士くんによって潰されてしまった、というわけだ。なんと皮肉なことだろう。どこまで行っても、私たち親子は苦渋を舐め続けるべきなのか。まったく、この世には神も仏もない…」
 そう言って、乾いた笑いを響かせた。
 また、足元がぐらぐらしてくるのを感じる。必死に気持ちを奮い立たせてここに来たけれど、それは正しいことだったんだろうか? 砂を噛むような、身を切られるような思いをした先生の、たったひとつの光を、無残に閉ざしてしまったんじゃないだろうか? その光が歪んでいたのだとしても。
 分からなくなってくる。私たちは、いろんな人柱の上に立つ、このツイン・ビルのようになっていないだろうか? 踏み潰した命の血色に染まっているのを、自分だけが気付いていないんじゃないだろうか。
「私…は…」
 ぐらり、と揺れかけた体を、力強い腕が受け止める。隣を見上げると、貴彦の怒った顔が先生に向けられていた。
「あんたがそう信じてる限り、あんたもその息子さんも、ずっと救われないんだよ!」
 先生の顔色が少し変わる。
「何だって…?」
「いいや、違う。あんたが周りを歪めているんだ! 息子さんの気持ちを一番踏みにじってるのは、他でもない、あんただよ!」
「お前に何が分かる? たった一人の子供を殺された親の気持ちが、分かるって言うのか!? 死にたいと思うほどの絶望を、味わったことがあるとでも言うのか!」
「ないよ、けどそれが何だっていうんだ! 味わったからって、自分が偉いとでも思ってるのかよ? 辛い思いをしたからって、誰かを傷つけてもいいなんて考えてるなら…俺みたいなどこにでもいる高校生よりも、あんたの方がよっぽどばかだ!」

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