1.原因と症状
中腰で重い物を持ち上げようとしたときや、腰をひねったとき、せきやくしゃみをしたはずみなどで、突然激しい腰の痛みにおそわれることを、ぎっくり腰(急性腰痛症)といいます。
一般に、症状は腰痛だけです。若い年代から壮年までよく起きますが、日常生活の無意識な動作によって起こります。
20〜30歳代では、中腰で重い物を持ち上げようとしたり、スポーツで急に腰をひねったときに、40〜50歳代では、曲げていた腰を急に伸ばそうとしたり、朝、洗面しようと急に腰を曲げたり、長時間腰かけていて立とうとしたときなどに起きるので、脊柱(せきちゅう)後方の関節のねんざと考えられます。
同じ姿勢でいたり、疲労で腰の筋肉が固くなっているときに無意識に腰を動かすと、筋肉の力のバランスがくずれ、関節に無理がかかるためと思われます。何回も繰り返すと、だんだん椎間板(ついかんばん)に裂け目が広がって、椎間板ヘルニアを起こすこともありますが、1回だけのぎっくり腰ではその危険は少ないといってよいでしょう。
若いときからある脊椎分離すべり症(せきついぶんりすべりしょう)や、老化で起こる中年からの変形性脊椎症などがあると、ちょっとしたきっかけでぎっくり腰が起こることがよくあります。
また、骨がもろくなる骨粗鬆症(こつそしょうしょう)があれば、ふとんの上げ下ろしや植木鉢を持ち上げたときに圧迫骨折が起き、腰に激痛がはしります。
2.治療
激しい腰の痛みにおそわれたら、あわてて病院へ行くより、とりあえず横になって安静を保つほうが賢明です。
普通は痛みのために固く縮んだ腰の筋肉を温めたほうが、痛みが軽くなる人が多いのですが、人によっては冷やしたほうが軽くなることもあります。
やってみて気持ちのよいほうを選びますが、2〜3日たったら、入浴などで腰全体を温めます。
静かに横になっていれば、10日間くらいで約90%の人は治ります。
痛みがある程度おさまったら、ゆっくりと腰を曲げて固い筋肉をほぐすようにします。
あまり長く安静にしすぎると回復が遅れます。
それでも治らないときは、病院へ行きましょう。温熱療法や牽引療法(けんいんりょうほう)をしてもらうと、効果があります。
また、なかなかよくならないときは、症状が似ていてもほかの病気の可能性があるので、きちんと調べてもらいましょう。
3.予防
腰に無理をかけないようにすること、骨そのものや筋肉を丈夫にすることが大切です。
立っているときや、座ったときの姿勢はもちろん、荷物を持ち上げるときにも、腰を痛めない方法があります。
肥満も腰に負担をかけます。食事や運動で体重コントロールを心がけましょう。
骨を丈夫にするには、カルシウムをたっぷりとりましょう。牛乳のカルシウムは吸収されやすいので効果的です。
運動は、水泳、ジョギングなどの全身運動もよいでしょう。散歩するなら1日に20〜30分が目安です。運動の前には準備運動を忘れないようにします。