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所持金額の大半を使いはたし、いわゆる金のかかる観光は既に不可能となった俺。

しかしである。別に旅なんてものは、金がないとて楽しみはいくらでもある。



俺達は停留しているホテルの近くのビーチにて、2〜3日のんびりすることとする。

「パタヤ・ビーチ」・・・有名なビーチなんだそうだが、

長らく鎖国政策を続けてきた俺にとって多分は日焼けするぐらいしかやることはないので、

まあ伊豆の海とさして変わらぬ印象で臨んだわけである。



しかし日光の当たり方から、海の色、ビーチの砂浜、その辺にいらっしゃる方々からして、

日本の海水浴場と全く趣きを異にしているのは明らかであった。



俺は思わず浮き輪をレンタルしている店がないか探す為にキョロキョロするほどに、

舞い上がる、というか気分が高揚していたのであるが、

それ以上に俺にヒットするアイテムを発見・・・



ジェット・スキーである。



千葉や茨城の少年がそうであるように、精神的成長の遅れた少年は

やはりモータースポーツが大好きである。もう堪らない。

海の上のピンク色の原チャリ・・・許させるのであれば日の丸の旗を掲げ、

気の触れた桃レンジャーのように爆音を轟かせたい衝動に駆られた。



さすがにそこまではしなかったが、

日の出と同時に海に入る夏休みの小学生のような勢いで、ジェット・スキーをレンタル。

休暇できているような白人のビジネスマン風に冷たい視線を送られるも

狂喜の中でトロピカルなひと時を過ごした。



・・・午前中は。



当然、一日ジェットスキーを借り切る資金もなく、

また日が暮れるまで遊び続ける小学生のような体力があるはずもなく、

お昼の頃には、金銭の消費を抑えるように、ただその強い日差しの中で

眠りにつくしか許されない状況になってしまった。



隣ではナッツーが、随分優雅に異国のビーチを堪能している。

白い帽子にサングラス。白い水着の肢体をパラソルの影に隠し、

淡い色のカクテルを手にしながら、ファッション雑誌に目を通している。

まるで映画のワンシーンのようだ。残念ながら容姿以外は。



先ほどから黙ってみてるが、そんなエキゾチックな東洋女性が

一人ビーチサイドで気取っていれば、一人くらいは白人が声をかけに来てもいいものなのに・・・

ちょっと不憫だなあ、と思いつつ、その横で日焼けに励む俺。

その時点では、伊豆の海水浴場と変わらぬわけである。



「なあ、ナッツー。」

「なあに?」



「俺にもカクテル買って。」

「やだ!



こんな会話を5、6回繰り返し、

ああ、後はホントに日焼けしかないや。と諦めかけていたその時、



バンブーが血相を変えて俺の元に駆け寄ってきた。



「はあ、はあっ。」

「どうした?」



「おっぱいが!おっぱいがあああぁっ!



「落ち着け、落ち着けよ!いったい何があった?」



「向こうの一角に、おっぱい丸出しの女の人がいっぱいいる!








ヌーディスト・ビーチかっ!!



不覚っ!ここは静岡県の伊豆半島ではない。タイだ。パタヤ・ビーチだ!

そんなパラダイスガーデンがあったとしても、全く不思議ではないのだ。





「落ち着いてくれ、頼む。バンブー。どこにあるんだ、その楽園は?」



あっち、あっちと興奮して指を刺すバンブー。



「なんかよお。すげーんだよ!おっぱいがいっぱいなんだよ!

 昼間だよ。昼間のお日様の下なのに、おっぱいが見えるんだよお!

 パンツはいてない人もいるんだよお!



嗚呼!なんともったない時間を過ごしていたことか!

しかしまだお昼をまわったばかりだ。過ぎた時間を悔やむより、

俺達にはまだやることがある・・・



次の瞬間には、俺達はカメラを持って





ノルマンディ上陸作戦を開始




しこしこ泳いで、海上からパラダイスを視察。



わぁお!



ホントにおっぱいじゃねーか!

すげーぞ!タイ!





「それではバンブー君。上陸するぞ!」



「隊長!自分は無理であります!」



何だ?股間が丘にあがれない状態になっているのか?



まあ、俺もそうだが

ここはひとつジャパニーズウマタロのパワーを見せつけようじゃないか!

俺は海パンを脱いで上陸しても良かったのだが、

タイにも警察署があると困るので、テントを張ったままでの上陸である。



さて、上陸したら何すべ?って話なんだけど、

まずは目の保養。

そして記念撮影。




トップレスのお姉さんに限定して声をかけ、

「私達ニッポンから来ました!」

といって写真を一緒に撮る。



まあそれだけだって、楽しかったよな?バンブー。





バンブーから提案が出る。



「これからボッキしたら、♪チンチロリン!っていおーぜ!」



「何だよ?それ。」



「昔、”初体験物語”ってドラマで木村一八のチンチンがたつと

その効果音がなってたろ?」



「ああ、アレね。うん、採用しよう!意味がよくわかんないけど・・・





・・・とそれ以降、♪チンチロリンを聞く機会が100回以上あったのだが、

それはまた、別のお話。







ご満悦でナッツーのいるビーチに戻る二人。



「どこ行ってたのよ!」



「わりい、わりい。」



「もう、アンタらがいない間にねえ!













10人以上の白人にナンパされて大変だったんだからねっ!」










う〜ん。



二人「それはウソだろ。」

  さて、こちらが記念撮影した写真であるが、

  どうだろう?この幸せそうなバンブー君の顔。

  現在では彼、俺のキャバクラの師匠である。

  俺も平然と声をかけて写真を撮り、かつ

  日本で現像に出すアグレッシブさを持ちながら

  未だ彼女一人つくれない現状に

  首をかしげる毎日である。



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