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旅の楽しみは夜にある・・・俺はそう思う。



仮に愛しい彼女と婚前旅行というわけで無くとも、

夜は人々の行動を大胆にさせるし、

昼間は垣間見ることのできない、夜だけの姿を友人が現すこともある。



タイは有数の「夜の歓楽街」。

俺の行った時には、日本国内で風俗デビューをして間もなかったし、

そもそもエイズが大流行していた頃でもあった。

だからエーカッコしとるわけでもないが、タイの女性を性交渉をしようという気は全くなかった。



それでも旅の楽しみは夜にある。

ウワサに聞くタイの「GoGoBar」・・・見に行く価値は十分ありそうだ。





パタヤの夜は活気があった。

屋台やバッタもんの店(ロラックスとか笑える時計も多数)などがあり、

その中でも高級そうなお店で夕食をとる。



ヨーグルトで煮た鶏肉やパクチーのにおいがキツイスープのようなもの、

熱した油をかけてパリパリになった得体の知れない魚料理をテーブル並べ

他の二人はちょっと苦手そうな顔をしていたが、俺は大丈夫だった。

むしろ日本料理より好きな味かもしれない。

どうせまともな人生を送るはずがないのだから、と思いつつ

高飛びの際には是非タイに逃げよう・・・とそこまで違和感のない料理であった。



食事が終了。

とりあえずナッツーにはホテルに帰ってもらい次なる行動に移る俺とバンブー。





「GoGoBar」をご存知ない方のために、若干説明をさせていただく。



「GoGobar」は、とりあえずバーであるが、

中ではトップレス、あるいは全裸の女の子が踊りなどのショーを繰り広げる。

客が望むなら、飲みの席に同伴させることも可、であるし、

さらにはボーイに一定の金額を包めば、指名した女の子と外出も可、なのである。

「外出して何するの?」と野暮な質問を受けるまでもなく、

当然のように、そうすることでホテルに直行。一般的には1晩いくらの世界であるらしい。

この辺はキャバクラの同伴やアフターとは違うのである。



射精風俗に関しては海原雄山なみの評論をする俺であるが、

キャバクラにおける同伴、アフターの経験は未だになく、

そういえば恋愛と射精に関してはかなりデジタルにセパレートしてるのが

俺の特徴とも言える。



とりわけこの「GoGoBar」においては、踊っている女の子の腰に番号がついており、

やれ「5番のコお願いします。」だ、「7番をお願いします。」というような

人身売買を思い出させるような無機質さが、エロさを萎えさせていた。



まあ、結局お子ちゃまであっただけなのだが、このタイ旅行においては

断じて一発もヤッいない!





説明はこの辺にして



まあ裸の女の子に興味が無いわけがないので、

当然鼻の下を伸ばしてそのバーを探すのは、至極当たり前の話である。





そこでシンガポールの空港で出会ったツアーの同行者、

スキンヘッド村上ショージに出会う俺とバンブー。





「やあ!君達!これからかい?」





なんだこの快活さは?聞けばこの人たち、夜に備えて昼は

ホテルのカーテンを閉め切って、力を蓄えていたらしい・・・





重ね重ねだが、何しに来てるんだアンタら・・・







「君達!GoGoBarに行くなら

●●というところがいいよ!



 昨日俺達も行ったけど、

もう最高だよ。ハッハッハ!






・・・ありがとうございます。





「じゃあね!エイズだけは気をつけるんだよ!







ヤラねーよ!ただ見に行くだけだよ!



・・・と息巻くも、鼻の下が如意棒のように伸びた二人に何の説得力があるはずもなく

一礼して、その店に向かった、とそういう次第である。





●●というGoGoBarに到着する俺とバンブー。



店から出てきた女の子を見た瞬間に



♪チンチロリンッ!



雄叫びをあげるバンブー。おう、もう堪らないね。







入店すると、けたたましい音楽とともに、薄暗い照明の中で踊る10人前後の女の子の姿が目に入る。

見渡すと、3〜4人の女の子をはべらせて酒を飲む白人の姿や、舞台にかぶりつく老人の姿もある。

20前後の日本人、二名。かなり違和感のある状況であったが

そんなことは知ったことじゃあない。



俺もバンブーも♪チンチロリンを連発!





バンブー「みんなカワイイじゃねーかよ!」


凡作  「マジでカワイイじゃねーかよ!」





ショータイムに移る。今まで10人ほどが踊っていた舞台で、次々を女の子が舞台をおり、

かなりカワイイ女の子一人が舞台に残る。







凡作  「何が起こるんだ?」


バンブー「もしかして、パンツ脱ぐんじゃねーか?


凡作  「そんなわけねーじゃ・・・アレっ?何かホントに脱ぎそうだぞ!」


バンブー「脱ぐって!絶対パンツ脱ぐって!


凡作  マジで?マジで?うわあ!マジで?



バンブーすげええええっつ!パンツ脱ぐって!」





・・・なんてことはない。ただの「童貞物語」のワンシーンだか、

妙に俺達、興奮していた。



舞台のカワイコちゃん。ついには全裸になり、舞台でショーを展開した。







凡作  「ねえ!こっち向いてくださいこっち向いてくださいこっち向いてください」


バンブー「♪チンチロリン ♪チンチロリン ♪チンチロリンッ!」



連呼である。もう何が何であるかわからない状況下である。

まあ所詮、アレは全世界共通なんだが、全世界共通が目の前に来たときには

二人でブラボーッ!って叫んでいた。

ブラボーって何語?そんなことは関係なんじゃん!







そのカワイコちゃんがアソコに何かの筒を挿入し、

吹き矢の要領で店にあった風船を割る、という芸を披露しだした時には

もう既に二人は呆然としていた。





ちなみに俺は中学3年の時にはもう

「浅草ロック座」にてストリップデビューを果たした剛の者であるが、

旅行で気分も高まっていたのか、興奮は日本の比ではなかった。







凡作  ゴクリ・・・何かすごいね。」


バンブー「すごいね。」


凡作  「いいね。こういうのも・・・」


バンブー「いいね。こういうのも・・・」





鬼のような速さで時が流れた。

宴が終わるにはいい頃合いではあるが、何か後ろ髪を引かれるような感覚でもあった。





バンブー「なあ。この店って、女の子を連れ出せるんだよね?」


凡作  「ああ。そうらしいね。」


バンブー「なあ。女の子を連れ出して、食事でもしない?





エロい割には純粋なバンブー。性交渉までは考えていないのは事実だろう。

俺も純粋にタイの夜で、4人で食事って状況もいいな、って思ったので

その案に乗ることにする。





俺は踊っていたカワイイコ、バンブーは彼の趣味のコに声をかけ、

ボーイにお金を渡して、その店を出ることにした。





しばらくは楽しい時が続いた。



露天の店で、まずコーヒー(これがまた甘い!)を頼み、続いて食事をオーダーする。

軽いものから先に出てきて、その間に女の子をいろいろ話をする。

お互い慣れない英語しか離せないから、一生懸命話す。

相手の言いたいことがわかるように、一生懸命聞く。





残念ながら、日本でこんなにちゃんと女の子と会話をしたことがない。

当然、相手にしてくれないのは女の子の方だが・・・





ただ食事に終始する俺達に、怪訝な表情を受かべる彼女達・・・

「いつホテルに行くんですか?」ってついには聞いてきた。



バンブーと顔を見合わせ、「別にホテルには行く気はないけど・・・」という。





女の子はこう言う。

「私達はエッチをしないと、生活ができないんです。もしエッチをしないなら



・・・帰っていいですか?」



なんかガツーンとやられた気分だ。





不思議なもんだね。

日本で「エッチしたいエッチしたい」と思えば、ご飯食べて帰られちゃうし、

別にエッチしなくてもいいと思えば、彼女達をかえって困らせちゃうし・・・




平たく言えば女性全般に縁がないっちゅーことね。





要は新しい客を探しに行くってことなんでしょう。

青春君の日本人とご飯食べてるだけじゃあ、生活はできないってこと。

ちょっと残酷だけど、そういうことが当たり前になってるんだろうね。





「なんか・・・悪かったね。帰ってもいいよ。」

というと、申し訳なさそうに帰り仕度を始める彼女達。

ただ返しちゃ悪いから、結局2発分のお金を渡して、彼女達を帰してあげた。





ポツンと残された二人に、店の親父





「喰うの?」って感じでチャーハン4人前。



「ああ、喰うよ。」といって、二人で4人分のチャーハンを食べる。








バンブー「まあ・・・こんなのもアリだよ。」


凡作  「まあ・・・アリだね。」





ちょっぴり切なく、停泊中のホテルに戻る道すがら、



ふとあることに気づいた・・・











・・・所持金、ゼロ!どうする?

GoGoBarに乗り込む直前の凡作、22歳。

100万ドルの笑顔と、喜びのポーズが眩しい。

(天に向かって上げられる左足に注目だ!)

しかしこれ以降

過酷な生存環境により、こんな姿を日本において

見られなくなってしまったのも、残念ながら

紛れもない事実である。

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