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なにげに旅の終わりを感じさせていたタイの最後の夜。

ビーチの近くにあるホテルからは、浜辺であげる花火が見えたりなんかして

それなりに俺を感傷的な気分にさせる。



とりあえず最後の一日を残してはいるが、飛行機に乗るスケジュールやらなんやらで

多分、明日はせわしなく一日が終わってしまうのだろう。

短い間ではあったが、本当に楽しかった。

それも怪しいタイ人のおかげだ。奇妙なツアー同行者のおかげだ。

そしてバンブー、そしてナッツーのおかげだ。ありがとう。



まさかその時は、この文章を書いている現在までダメ人間をやっているとは思っていないので

一応はは自由を謳歌する青春時代のひとつの区切りのつもりの卒業旅行だった。



俺はとある企業に内定していて、バンブーもナッツーもそう。

卒業となれば、休みも違うし時間もとりにくいだろう。

とりあえずサヨナラ、だ。



でも我ながら、俺とバンブーとナッツーの組み合わせの卒業旅行は意外だった。

同じゼミのメンバーではあったが、各々別々のテーマにて、接点の多い奴は他にもいた。



とりわけ、ナッツー。



「男女の友情って信じるかい?」ってよく人は聞くけど、

そもそも君とは友人というほど会話を交わしたことも無かった。

君には素敵な彼氏がいて、おしゃれ好きで、流行に敏感で

およそ俺の世界とは全く違うところにいる女の子だった。

でもこの旅行を通じてわかったことは、

君は言葉はキツイけど、気さくで、面白くて、

意外に細かいところに気がつくやさしい女の子だった。

俺とかバンブーと同じ3人部屋で、ちょっとやりにくいところもあったろうけど。

それでも誰がベッドに寝るか、なんてじゃんけんしたりして

「女の子なんだから優先させてよ!」なんて口では言ってて

ちゃんとじゃんけんに参加して、床に寝ていた日もあったね。

俺もバンブーも気をもうちょっと気を遣えばよかったけど

まあ、俺もバンブーも

バカなことを君の前でして見せたり、頭の悪いところを見られたり。

背伸びするでもなく、カッコつけるでもなく、本当に居心地が良かったんだ。

そんな関係が友情っていうのなら

本当に男女の友情って、あるのかも知れないね。

君も社会に巣立って、仕事の喜びとか、恋愛を出会うんだろう。

でもその時にも

君の学生時代に、俺とかバンブーと過ごした

このタイの旅、バカの相手をして疲れた旅、

そして社会では出会いがたい、おばかな男の友達として

俺とバンブーを思い出してくれると、俺達も本当に嬉しいよ・・・









・・・と心の中で想いながら







俺はGoGoBarに行く金を借りる為に、バンブーと二人でナッツーに土下座をしていた。









「何でオンナの裸を見に行く奴に金貸さなきゃいけないのよ!」



いやあ。正論です。

しかしね。昨日学んだんだけど、GoGoBarということろはね、

見てるだけなら、ジュース代だけなんですよ。

バンブー君とちゃんとした計画も練って、今回はバッチリなんですよ。

お願いします。日本に帰ったら金利もつけてお返ししますから。





「しょうがないわね。トイチだかんね!





ありがとう。



君は厳しさの中にどこかやさしさをもつイイ女だ。

ありがたく遣わせてもらうよ。





さあ。タイ最後の夜もGoGoBarにGO!!







そのGoGoBarでは、先日の反省を生かし

ジュース1ぱいずつで、ショーのみを堪能する俺達。

例え女の子に誘われたとしても、



「ウィーアージャパニーズスチューデント ソー

ウィーアージャストルッキング!」



のみで乗り切り、日本円300円弱にて、至極のひと時を過ごした。





・・・





バンブー「なあ?」



凡作  「何だ?」



バンブー「せっかく最後の夜だから、ナッツーも呼んで飲まないか?」



異存があるはずもなく、ホテルに電話をかけ、ナッツーを呼び出す。

俺達はムエタイのショーをやっている結構大きな酒場で待つことにした。



数分待つと、彼女がキムラちゃ〜んバリのフェロモン系のファッションで現れる。



この時間でご到着ということは、とりあえずはナンパされてはいないね。

まあ、気にすんな。君は実は性格はいいんだから・・・





バンブー「何だそれ?ナンパされたいんちゃうの?」





ナッツー「というかね。あんた達レディーを誘ったら迎えにぐらい来なさいよ。







もうここに来るまでに10人ぐらいの白人にナンパされて大変・・・」





二人  「それはもういい、ちゅーの!!」







・・・そんな感じで、最後の最後のタイの夜は

3人でムエタイを見ながら、食べたり、飲んだり

その後に屋外のバーに行き、そこでも慣れない酒を飲んだりして

他愛のない会話をしたりして、時が過ぎた。



そのバーでは店の女の子が3人に陽気に話しかけてきてくれた。

4人で楽しく、ドミノなんかをやって遊んだ。

日本の人と友達になりたい、ってその店の女の子は明るく、気さくで、

ナッツーも楽しそうに話していた。俺達も楽しかった。





タイという国はそうなのだ。

バカな奴、しょうもない奴も多そうなのだが、悪そうな人がいないのだ。

みんな気さくで、人なつっこくて、感じがいいのだ。



やはり、俺はタイという国が好きだ。

ここに旅に来れたことが良かったと思う。

旅の最後の夜にそう思えること。そう思えれば俺にとってその旅は上出来である。










ただ、その店の女の子




「ラーちゃん」というその女の子の名前が未だに忘れられない俺が少し、寂しい。

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