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はじめに

 個人的意義としての「職業」とは、尾高邦雄が『新稿職業社会学』中で、1.生計の維持、2.個性の発揮、3.社会的役割の実現、の3要素から構成されることを指摘している。これらの中では「社会的役割の実現」が最も重要であり、「生計の維持」と「個性の発揮」を統合する機能を果たしており、個人と社会を結びつける絆とされている。重度障害者が職業に就く場合も同じことがいうことができる。ただし、障害による能力発揮がどの程度になるかで、「社会的役割」より「個性の発揮」にウエイトを置くことがある。日本の障害者就労には、一般企業などに雇用されて職場やそれを構成する集団のニーズに応える「一般就労」と、一般就労よりも手厚いサービスや支援を受けて授産施設や作業所で働く「福祉的就労」がある。「一般就労」と「福祉的就労」のどちらかを選ぶかは、障害者本人が「働くことの意義のどこに焦点を置くかによって決められるということになっ」 ている。しかし現状は、移動が困難であり、しかも介助が必要な障害者が一般就労をするのには非常に難しい社会であるということができる。
 そんな中、ファクシミリやパーソナル・コンピュータなどの情報通信機器を使って在宅就労をしようとする動きが活発化してきている。在宅就労をすることで一般就労の問題を軽減するとともに、障害者自身が社会的役割や個性の発揮による精神的な満足をみつけ得る可能性がある。筆者の私自身重度障害者であり、修士課程在籍中は在宅就労に向けて活動してきたが、一般就労とは異なる問題があることがわかった。そこで、近い将来この道に進むからには客観的に問題把握する必要があると考え、このテーマで論文を作成することにした。重度障害者の一般就労に関する問題、及び情報社会と在宅就労に関する社会的流れを整理し、この重度障害者の在宅就労への動きを見直し、さらなる発展に向けて筆者なりに考察してみたい。
 この論文でいう「障害者」とは、その単語の前に障害の種類を限定した単語がない限り「肢体不自由者」を指し、「重度障害者」とは「車椅子使用、もしくはそれと同様に移動が困難な肢体不自由者」を指すものとする。

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