1.情報社会の発達
(1)社会学的観点での情報社会
1)D.ベルの脱工業社会
D.ベルが1973年に著した『脱工業社会の到来』は、「脱工業社会」という概念を広めた論文であり、多くの研究者が情報社会論の基本的文献として取り上げている。農業社会・工業社会・脱工業社会という資本主義国にも社会主義国にも共通する、柔軟な社会発展図式を描いた。
ベルは脱工業社会という用語を何よりも「理論的知識」や「知的技術」によって特徴づけた。大学、研究機関などを中軸構造とみなし、その観点に沿って職業・成層構造、経済部門、社会的意思決定のありようを描きだした。
なお、「情報社会」という概念は1960年代後半、わが国で「未来学」がブームになったおりに、梅棹忠夫、加藤秀俊、林雄二郎といった学者たちによって確立されたという。「情報社会」の概念は日本で生まれ、世界に広まっていった。
2)A.トフラーの『第三の波』の衝撃
A.トフラーが1980年に著した『第三の波』は、現代社会の変化の総体的な記述を目指している。 トフラーは人類の文明の発展をベルと同じく3段階に分けている。つまり、「第一の波」の農業革命、「第二の波」の産業革命、そして「第三の波」と、社会構造の変化がみられ、現在は第二の波から第三の波への過渡期だという。『第三の波』においては、 トフラーはまだ「情報社会」という言葉を使ってはいないが、後になって第三の波を情報革命と位置づけるなど、実際には文明論的な情報社会論の代表的著述として受容されてきた。
トフラーは、産業社会は、規格化された商品の大量生産・大量消費、資源・エネルギーの大量消費による環境破壊、大家族から核家族への変化、画一的なマスメディアの発達、政治における国家ならびに超国家帝国の出現などをもたらしたと指摘する。また、第一の波では統合的であった生産と消費が市場によって分断され、男と女の生活圏も分断されたとしている。
では、なぜそのような「第二の波」が終わり、「第三の波」へと向かいつつあるのか。その原因や因果関係について、エレクトロニクス革命を軸とした技術体系、そしてそれに伴う情報環境の変化を主たる原因とし、まとめて「技術体系と情報体系の2大潮流」と述べている。
では、「第三の波」で社会はどのように変化するのか。まず技術体系においては、「適正・中間技術」型に転換する。エネルギー源は多様化し、脱化石燃料化が進められ、安全で再生可能なエネルギー源に方向づけられる。貫源は天然資源から、想像力を含む「情報」に移行し、「高度に電子化した情報社会」が出現する。
「情報体系」においては、「第二の波の社会」では画一的なマスメディアが支配的な地位を占めていたが、「第三の波の社会」においては、コンピュータなど「脱画一的情報メディア」の展望が促される。
「技術体系」と「情報体系」が含流して「生産体系」にも大きな変化が生ずる。フレックス・タイム制の拡大、工場・オフィスの小規模化などから「人間的な労働」への転換、企業活動の多目的化が生じる。そして情報機器の利用により、多くの人が職場に出勤しないで家庭で仕事ができるようになることによって、「仕事の場が工場・オフィスから家庭へ」移行していく。
また従来の縦型よりも、ネットワークによって横に結ばれた社会が出現し、「政治体系」にも一連の変化が生ずるという。
つまり第三の波の社会においては、脱規格化と個性化、同時化、分権化、多様化、自律化、脱大規模化、分散化、脱官僚制化の傾向が台頭するということである。
(2) 情報社会へのあゆみ
わが国の情報化社会論は1960年代から高度経済成長を背景に、未来学者たちによってバラ色に描かれていた。1973年のオイルショックを契機に、その後、わが国の経済が低成長期に入ると、急速に「情報化社会ブーム」が終息し、以降しばらくは、情報社会は夢物語として認識されるようになった。
だが1980年前後からは、「高度情報化社会」とか「高度情報社会」という言葉が使われるようになる。この時期は第2次情報化時代と言われている。この頃から、高度化されたコンピュータを接続して利用するネットワークの構築が進行する。
そして現在、わが国の情報化は第3次の時期に向かおうとしている。今や、「情報社会」という言葉は、インターネットをはじめとする双方向型コミュニケーションを可能とした、マルチメディアの普及した社会をイメージするようになった。
マルチメディア社会に向けた通信事情は、このところ急ピッチの様相を呈している。新しい情報通信体制に適応できる法制度の改正など、企業だけでなく国の取り組みにも勢いがみられる。またマルチメディア対応のパソコンやソフトウェアの市場も活気にあふれている。
インターネット普及率は、世帯が19.1%、事業所が31.8%、企業が88.6%となっており、様々な場所におけるインターネットの利用が拡大を続けている。また1999年末における15〜69歳までのインターネット利用者数は2,706万人(対前年比59.7%増)と推計され、2005年には7,670万人に達するものと推計されている。これらは急激な情報社会のネットワーク化を物語っている。
2.テレワークと在宅就労の展開
テレワークとは「パソコン等の情報通信機器等を利用し、遠く離れたところ(TELE)で仕事を行うこと(WORK)」をいう。働き手の属性から、企業社員のテレワークおよび自営業者のテレワーク(SOHO)に分類することができる。さらに、企業社員のテレワークについては、テレワークを行う場所から、サテライトオフィスやテレワークセンター、スポットオフィス(立ち寄り型)、在宅勤務、モバイルワークに分類することができる。
この論文では、在宅勤務および自宅で働く人が多いSOHOを在宅就労と呼ぶことにする。
この「テレワーク」で最も進んでいるのはアメリカで、自動車通勤に伴う環境破壊の問題とからんだ形で展開した。日本ではバブル経済期に東京一極集中による土地不足問題とからんで議論され始めた。しかし「在宅勤務の社員をどう管理するか」「特に仕事以外のコミュニケーションをどうとるか」という問題が浮上し、バブル経済がはじけるとともに一時議論されなくなる。
その後、育児や介護で休職・辞職せざるを得ない女性や移動困難だが優秀な労働者としての高齢者・障害者の活用のしかたとして、またリストラによる社外への業務委託(アウトソーシング)の増加により、再び注目され始めている。「在宅勤務」だけでなく、「好きな時間に働ける」というメリットがある個人事業「SOHO (ソーホー)」という在宅就労のしかたも注目を集めている。