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  第3章 障害者の在宅就労への現状

1. 2つの社会福祉法人の試み

(1) 東京コロニー情報処理センター

 障害者の在宅就労に向けて最初に動いたのは、社会福祉法人東京コロニーである。もともと当事者団体であった東京コロニーは1982年に付帯事業としてトーコロ情報処理センター(以下、 「トーコロ」と略す)を設立し、1989年に東京都からの補助事業として重度身体障害者在宅パソコン講習事業が開始された。ここでは東京都在住の障害者に対し適性や要望などを考慮して2年間の講習を行い、講習修了生には業務委託の窓口・就職希望者への就職先紹介などを行っている。さらに1999年労働省より有料職業紹介事業の認可を得、2000年にはオープンなSOHOグループを立ち上げ、講習生以外のプログラミングやホームページ作成など技術をもつ東京近郊在住の障害者にも対象を広げている。

(2)プロップステーション

 1991年に神戸で発足したプロップステーションは、障害者の真の自立のためには就労することにより税金を納められるだけの収入を得ていく必要があるとの考えの下、その実現手段としてコンピューターを活用していこうとして発足したNPOであった。ここの「在宅スキルアップセミナー」は市場に通用するようなデータベース作成技術の修得を目指すものであり、この講習修了生が企業からの仕事の受注に対応できるような形となっていった。その後も翻訳コースやデータベース作成技術修得の基礎コースを開始し、その対象者を拡大し、1998年には社会福祉法人となった。
 同じような社会福祉法人だが、トーコロと大きく違う点が2つある。1つはトーコロで講習生の学習を支えるのは専任講師であるのに対し、プロップステーションでは代表の竹中ナミ氏と事務局長以外スタッフはボランティアであるということである。もう1つは、在宅学習において、地理的限定はないものの即戦力となる見込みのある人に学習させるため、パソコンやソフトの使い方は習得済みが前提となり、適性があるかどうかも障害者自身の判断である。
 プロップステーションは竹中氏のパワフルで魅力的な個性で第一線で働いているボランティアや協力する企業を集め、システムエンジニング・技術翻訳・グラフィックという専門家を厳しく育て上げ、その人材を活躍させるエージェントとして注目を集めているのである。

2.行政主導の取組み

(1)高知県の場合

 社会福祉法人の活動に行政が注目し、行政が主体となり、あるいは行政が聞接的にバックアップしながら在宅就労を推進していこうという動きが顕著となりつつある。その1つは高知県の場合である。高知県は、2001年度を目標年度として高知県情報化計画を策定した。地域産業の活性化を目的としたプロジェクトの1つとしてオフィスアルカディア・テレワーク実験が行われており、その対象者は一般の市民であるが、障害者に係る在宅就労についても、これらの実験の中で取り扱われている。また障害者の在宅就労実験には、ある企業が中心となり運営されている「マイセルフネットワーク」というプロジェクトがある。ここでは、10名強の障害者(肢体不自由、聴覚障害など)がネットワークのメンバーとして参加して、4名のサポーター(障害者)の下、在宅就労に向けて1997年度には基本OSの操作からホームページ作成技術の修得までを在宅で行うことを目指して運営された。

(2)三重県の場合

 三重県においては、先述のプロップステーションの活動に刺激を受け、その活動を行政で代替するよう、その事業を展開していこうとしている。三重県の商工振興課能力開発室は、在宅就労に必要な訓練システムを開発するとともに、当該訓練を受講した在宅就労を希望する障害者に対して、仕事を発注する企業との仲介を行う障害者の在宅就労支援組織を育成することとした。1999年4月に障害者在宅勤務支援団体『Pep-Com(ペプコム)』を設立 、事業を開始した。

(3)岐阜県の場合

 高知県や三重県のように直接的な形ではないが、岐阜県においても県の支援を受けながら活動している団体がある。アクセシビリティ機器の展示、コンピュータの入力支援機器等に関する相談、アドバイス等を行っている福祉メディアステーションが、1998年10月よリバーチャルメディア工房事業として在宅就労に取り組むこととなった。実際にはバーチャルメディア工房が受注・納品の仲介に入る形で、企業や行政機関からの仕事を工房登録者に振り分け、業務の調整や指導・会計処理を行っている。

(4)大阪市の場合

 大阪市では市の職業リハビリテーションセンターと身体障害者通所授産施設「中津サテライトオフィス(以下、「中津サテライト」と略す)」が連携しながら、在宅就労に向けて支援を行っている。リハビリテーションセンターの終了生を中津サテライトで実施訓練へ、中津サテライトの退所者をリハビリテーションセンターで情報処理の基礎教育をと、障害者のスキル習得状況によって連携しているのである。

 しかしこれらの行政主導の取り組みはまだ数が少なく、東京コロニーも同様に他の都道府県在住の障害者は参加できないのが現状である。

3.民間団体とWeCAN!

(1)当事者・ボランティアなどの民間団体

 そのような行政の動きを待てず、民間団体で障害者の在宅就労を支援してゆこうとする動きが活発である。Cybird(宮城)、福祉パソコンの会(東京・練馬区)、Office Line(高知)、障害者在宅事業グループ(埼玉)、ふれ愛ネット・にいがたなどははじめから在宅就労を目指してつくられた。また、全国各地で設立されているパソコン・ボランティアの中にも在宅就労を目指す団体も現れている。

(2)NPO法人WeCAN!

 これらの民間団体に対して、障害者である当事者だけでなく、インターネットの普及を目指す研究者や企業がボランティアで協力するという在宅就労推進の枠組みが形成されている。それぞれの民間団体がおのおの教育や業務委託の窓口、仕事の受注・分配など行ってきたが、教育・仕事の得意分野も違う団体を束ね、業務だけでなく国・行政・企業に共通の要請をするために、1998年12月全国規模のNPO「WeCAN!」が結成された(NPO認証は1999年)。今までは通信機械工業会などが東京ビッグサイトで主催したCOM JAPAN 1999に独自ブースを出展したり、通産省が社団法人日本テレワーク協会に委託したマイクロビジネス研究委員会に参加したりして存在をアピールしてきた。今後はパソコンの日常生活用具給付対象化など国や企業に訴えるほか、実際に業務委託の窓口、仕事の受注・分配を行うエージェントととして期待されている。

4.労働省と企業

(1)労働省の取り組み

 障害者の在宅就労に関し、国や企業はどのようなことをやっているのか。在宅勤務では1991年4月に「雇用保険並びに身体障害者雇用率制度の在宅勤務者に対する適用上の指針」が労働省より示され、限定的にではあるが在宅就労者にも雇用保険の適用が行えることが明示され、またそれに伴い雇用率の適用も可能である旨が示された。日本障害者雇用促進協会でも調査研究し、東京コロニー協力のもと『在宅勤務障害者雇用マニュアル』を作成した。しかし国の機関が実際に、遠隔職業訓練を行っていたり、インターミディアリー の活動を推進・支援していたりする動きは見られないのである。

(2)企業の取り組み

 豊田自動織機製作所や沖電気工業、シティバンク、NECソフト、三菱マテリアルなどの企業で障害者が在宅で勤務している。しかしまだ障害者の在宅勤務を導入する企業は少ない。不景気であることを理由にしたり、やはり他の在宅勤務と同様にコミュニケーションの取り方を心配するからである。また在宅勤務に適した調査・研究・プログラム作成などは豊富な経験と高度な技術を必要とするために、該当する障害者も少ないことも否めないのである。
 逆に企業が業務をSOHOに委託することが多くなった。これに関しては、ビジネス・コミュニケーションがとれて業務を遂行されるならば、障害者でもかまわないということである。しかし時期によって仕事の量が安定せず、契約の問題や労務災害の補償もないこともあり、産官学協同のプロジェクトのマイクロビジネス研究委員会により改善が期待されている。

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