OTIS CLAY/THE COMPLETE HI RECORDS
「TRYING TO LIVE MY LIFE WITHOUT YOU」、「I
CAN'T TAKE IT」の2枚のアルバムとシングル曲を1枚にまとめた
アルバムです。
オーティス・クレイというソウルシンガーは、40歳以上のソウルファンやサザンソウルファンには特別な意味を持って 語られるシンガーであろう。78年に来日し、熱狂的なステージで多くのソウルファンの胸に名前を刻み付けたといいます。 オーティス・クレイの来日以降、サザンソウルという分野に関心が集まりジェームス・カーのアルバムの発売と来日が拍車 をかけ一大サザンソウルブームが日本にも巻き起こったそうです。 ディスコ全盛の時代に何故サザンソウルブームが起こったか?おそらく巷に薄っぺらい使い捨てのダンスミュージックが 氾濫していたディスコの時代において(ディスコにも素晴らしい曲はたくさんあります。あくまでブームにあやかり作られた 商業主義的な安っぽい音楽のことです。)、純粋で混じりけの無いピュアなソウルミュージック、体の芯まで熱くなるような ソウルミュージックの熱気をソウルファンは求めていたからではないであろうか? そこで、タイミング良くオーティス・クレイなどのサザンソウルの一流シンガー達が来日しアルバムの再発などによってサザン ソウルはある種新鮮な感動を与えてくれるものとして多くのソウルファンに受け入れられていったのではないであろうか? 私はまだ20台半ば、リアルタイムで生きていた世代でないので推測でしか語れないのですが・・・。 前置きが長くなりましたが今回紹介するのがオーティス・クレイのHiレコードに残したアルバム2枚を中心にまとめた完璧 な作品集である。 ゴスペルグループ等で活躍した後、ワンダフルレコードなどでシングルを数枚発表し後にメンフィスソウルの名門Hiレコード の所属となり、72年に発表したHiレコードにおけるデビューアルバムが「TRYING TO LIVE MY LIFE WITHOUT YOU」である。 タイトル曲はメンフィスホーンとハイリズムの引き締まった演奏にオーティス・クレイのディープな歌声を乗せて歌われるこの曲 は、サザンソウルの屈指の名曲であるとともにHiサウンドのテーマ曲とも呼べるであろう。60年代で言えばアーサー・コンレイの 「SWEET SOUL MUSIC」と同位置に置かれるナンバーであると思います。 その他にもレディソウルのジャッキー・ムーアの71年のヒット曲のカヴァーである「PRECIOUS PRECIOUS」などサザンソウルの 熱気、熱さが神経の隅々まで染みこんでくるような名アルバムである。ソウルの基本でもある。 そして、シングル曲を挟み、未発表曲などで構成された「I CAN'T TAKE IT」でとどめを刺される。 「SLOW AND EASY」や「KEEP ON LOVING ME」を聞いてみて欲しい。ソウルフルな熱唱であることは言うまでもないが祈るような 時にはすがるように聞こえるオーティス・クレイに背筋を突き抜けるかのような感動を覚えてしまう・・。 目を閉じて耳を傾けることに集中したい。決して本を読みながら聞くことなど不可能なほど心をわしずかみされてしまう。 ここまで感情表現ができるシンガーは数えるほどしか私は知らない。 真に心を打つソウル、ソウルファンであることを誇りに思いたいのなら迷わずこのアルバムを聞くべきです。 昼飯を2回ほど抜きにしても、またデートの約束を1回ぐらいキャンセルしてでも入手する価値があるアルバムです。 それで彼女に振られたとしても彼女に対する思いはいつか薄れる。しかしオーティス・クレイに対する熱い思いはあなたのなかで いつまでもふくらみ続けていくことは間違いないであろう。(笑) オーティス・クレイは80年代、90年代もウィリー・ミッチェルのウェイロなどでアルバムを発表してサザンソウルの良心を守り続け ている。90年代にも来日して大人になったソウル青年たちがライブに駆けつけたそうです。 |