ISAAC HAYES/SHAFT

1.THEME FROM SHAFT 2.BUMPY'S LAMENT 3.WALK FROM REGIO'S 4.ELIIE'S LOVE THEME 5.SHAFT'S CAB RIDE
6.CAFE REGIO'S 7.EARLY SUNDAY MORNING 8.BE YOURSELF 9.A FRIEND'S PLACE 10.SOULSVILE(VOCAL)
11.NO NAME BAR 12.BUMPY'S BLUES 13.SHAFT STRIKE AGAIN 14.DO YOUR THING(VOCAL) 15.THE END THEME


 せわしなくシャカシャカと16分音符を刻むハイハットにもつれ合うようにワウワウギターが絡み合う、ビッグバンドのストリング
ス演奏が期待感を盛り上げる。アイザック・ヘイズの「SHAFT」のテーマの始まりだ。
この、余りにも有名なアイザック・ヘイズのこの曲はギャングの抗争に巻き込まれる黒人私立探偵ジョン・シャフトの活躍を描い
たアクション映画の主題歌として作られた曲である。
60年代の公民権運動の時代を通過したことでソウルの世界もよりクリエイティヴな意識を志す傾向が見られるようになる。
「ニューソウル運動」(この名称は日本だけらしいが・・。)などのムーブメントもこの流れからはじまるのである。
映画の世界でも黒人観客という存在を無視することができなくなり、黒人向け映画製作への道を模索するようになる。
いわゆるブラックシネマの台頭である。その流れから作られたのが「SHAFT」である。
アイザック・ヘイズは60年代にSTAXでオーティス・レディングやサム&デイブのヒット曲を生み出したソングライターでありバッ
クミュージシャンでもありサザンソウルシーンを中心に大量のヒットソングを量産してきた人物である。
 70年代に入りソウルの世界もよりクリエイティブな方向性へと意識が高まっていくなかで、黒人ミュージシャンもいわゆる3分
間シングルとしてのヒット曲を量産するという制約から解放され、より自由に、政治的に、音楽性を追求していくようになる。
アイザック・ヘイズもこうした流れの元祖的な存在にあり、69年に発表した「HOT BUTTERED SOUL」のなかではディオンヌ・ワ
ーウィックで有名な「WALK ON BY」のカヴァーをジャズや粘っこいファンクでぐちゃぐちゃにして延々約12分も演奏している。
こうしたプログレッシブな音楽性でアルバムのセールスを記録していたアイザック・ヘイズを起用して製作されたブラックシネマ
が「SHAFT」である。なによりもこの映画を成功させたのはアイザック・ヘイズのサウンドトラックである事は間違いない。
ブラックシネマとは当時のアメリカでの黒人社会の現実、ゲットーでの生活、根強く残る人種差別、またファションや文化に至る
までブラックコミュニティの光と影を描き出すことを意図したものが多い。
またブラックシネマは常にサウンドトラックと大きな結びつきをもって語られる。カーティス・メイフィールドの「SUPER FLY」、マー
ヴィン・ゲイの「TROUBLE MAN」など当時のソウルミュージックの巨匠達がブラックシネマのサントラを製作するが映画同様にゲ
ットーに息ずくもう一つのアメリカ社会の現実であるブラックコミュニティーの空気がうまく伝わってくる名盤になっている。
ファンクやジャズの要素が強いナンバーに忘れた頃に現れるアイザック・ヘイズの低音のつぶやき。そしてなによりも「SHAFT」
のハイハットのリズムとワウワウギターのカッティングはゲットーで暮らす黒人の若者の頭のなかで永遠に鳴り響いていたことで
あろう。70年代という時代の黒人社会の空気を感じるのには最適なサントラであろう。
映画とソウルミュージックがここまで大きく結びついたのも70年代という時代の特徴である。ちなみに「SHAFT」はリメイクされて
2000年に公開された。テーマ曲はもちろんアイザック・ヘイズだ。