ROBERTA FLACK/KILLING ME SOFTLY

1.やさしく歌って 2.JESSE 3.NO TEARS(IN THE END) 4.I'M THE GIRL 5.RIVER 6.愛の語らい 7.WHEN YOU SMILE
8.SUZANNE

 

 雨の日の日曜日の朝、熱いコーヒーを片手に窓を眺める。レコードの針を落とせば聞こえてくる美しいメロディー・・。
沈みがちな心をそっと包み込んでくれるような音楽。「やさしく歌って」(原題「KILLING ME SOFTLY」)の印象を聞かれる
と思い浮かぶ感覚です。
 ロバータ・フラックの歌にはゴスペルやブルーズを下地にしたディープさやファンキーなグルーブ感はない。
むしろ、音楽的にクオリティが高く、ソウルシンガーというよりもシンガーソングライターに近い性格である。
幼い頃から音楽教育を受けクラシックやジャズなどのエッセンスを充分に体に染み込ませたロバータはより多様な音楽性
を求める方向性へと向かう。
 「"BLACK IS BEAUTIFUL"黒人は素晴らしいと思います。でも、世の中には黒人とは何の関係もない、見事な音楽がやまほど
  あるんです。」
ロバータはこのようにも語っている。
 この「やさしく歌って」が発売されたのは1973年。スティービー・ワンダーやダニー・ハザウェイらによる「ニューソウル運動」が
ソウルシーンの大きな流れになっていた時代である。
ソウルミュージックもより音楽性が高く新しい試みに挑んでいく方向へと流れていき黒人社会に生きる立場から痛烈な社会批判
を歌うシンガー達が多く活躍した時代である。
そのようなムーブメントの中でロバータも語られることもあったが彼女が志した姿勢はむしろ黒人とかソウルとかいう枠を越えた
ところにあるよりスケールが大きな進化したポピュラー音楽の追究であったと思います。
このアルバムでもストリングスの使用にしても今までのソウルにはないクラシックの要素をアレンジしていたり、ジャズやスタンダ
ードの影響を強く感じることができる。
 すり切れた心を癒してくれる暖かみを感じさせる音楽。この当時のシンガーソングライター達と共通した音楽性はベトナム戦争な 
どの激動の時代を通過したアメリカ社会。傷つき疲れ果ててしまった多くの人々に心地よいやすらぎを与えたといいます。         

 ロスからニューヨークに移動中の飛行機の中で耳にして作者を突き止めレコーディングしたという「やさしく歌って」は全米1
位のヒットを記録するのであった。日本でもネスカフェのコーヒーの宣伝に使用されてお馴染みの名曲です。
このようなロバータの多様な音楽性を追求していく姿勢とソウルを越えてポピュラー音楽として確立しようという方向性は後のブ
ラックコンテンポラリーのシンガー達はいうまでもなく様々なアーティスト達に大きな影響を及ぼした。
また、ハワード大学時代の親友ダニー・ハザウェイとのデュエットやピーボ・ブライソンとの共演などではクリエイターではないシン
 ガーとしてのロバータの素晴らしさを見ることができる。
ロバータ・フラックやダニー・ハザウェイらの最大の功績はソウルミュージックをより音楽性の高いポピュラー音楽へと進化させて
いったことではないであろうか?そして彼らが切り開いた道に現在のR&B、ポップスがあるのだ。ここ最近再評価が高まってい
るのは当然といえる。ロバータやダニーの音楽は現在でも少しも古い感じがしないそれほど普遍的なクオリティの高さなのだ。