ストラディックCI4
 軽くて速いはいいことあるよ。

ストラディックCI4
 ストラディックとは、アメリカ向けのバイオマスター相当品に与えられる名前です。ストラディックCI4は見てのとおり、国内向けレアニウムCI4の兄弟機。ただしハイスピードギアと深溝スプールが国内仕様と異なります。米国のカベラスから買いました。

 1000Fは、自重165g、ギア比6:1、スプール径39.5mm(ツバの根元で36mmくらい)。

 2500F(写真)は、自重200g、ギア比6:1、スプール径46mm(ツバの根元で43mmくらい)。

 メイド・イン・マレーシアです。

深溝スプール
 上にも書きましたが、国内仕様と違うのは深溝スプールオンリーであること。さらに、C2000とか2000などのスプールを変えたバージョンもありません。アメリカ人は糸ごとにスプールを変えるようなことはしないのかも。日本人って、オタクなのかもしれませんね。

 キャパ表示は1000Fが4ポンド140ヤード、2500Fが8ポンド140ヤード。昔はストレーンで糸巻き量を決めていました(同一ポンド数でもっとも太いため)が、今は違うみたいです。何の糸が基準なんだろう。

ハンドル
 ハンドルノブはEVA製。国内セフィアやソアレとは形状が違います。最初は違和感がありました(表紙で平たいほうがいいとか書いていました)が、慣れてきたらけっこういいかも。

 2500Fのクランクは55mmだから、国内コンプレックスと同じ長さです。1000Fはツインパワーなどと同じ40mm。

 ねじ込み式です。

ベール返しのアタリ
 よく見ないとわかりませんが、2500Fのアタリはボディー一体の突起部にジュラコンらしきスロープが加えられています。反転はいたってスムーズ。ハンドル回転でシュパッと戻ります。

 関係ありませんが、昔自動車雑誌のNAVIに「10年10万キロストーリー」という連載があって、その中で取材されたドライバーの奥さんが、「ウインドウを下までいっぱいに下げると窓枠のゴムが傷むって(主人に)しかられるんです」って言ってました。最近、スピニングのベールはハンドルで返すとリールが傷むから、手で返さないといけないなんていう人がいるそうですが、これに似てますね。

フリクションベール
 私の助言で付いたフリクションベール(つくづくくどいやつだ)は、08バイオくらいのジュラコンと金属スプリングタイプから、ぎざぎざのゴムに変わっています(最近の国内モデルも同じ)。ガギッと引っかかるのが嫌だという苦情があったのでしょうか。

 ただ、このタイプも、反転レバーが山のてっぺんにきた状態でベールを開くと、グジッという嫌な感じがして、しかもゴムが圧縮されてハンドルが回らなくなります。

 どっちの方式でもよかったと思いますが、部品点数が減りますから、コストダウンの意味もあるのかもしれません。

足首
 最初ちょっと気になったのは2500Fの足首でした。フットから垂直に立ちあがる部分が短く、カーブの部分に薬指の第二関節が当たりそうに思えたからです。

 こんな感じです。

 ただ、実際に使ったらまったく問題なかったので、考えすぎだったようです。

 でも、ロッドのグリップ部の太さによっては関節が当たりそうな気がしますし、アメリカ人のぶっとい指とか大丈夫だったのでしょうか・・・。08バイオ2500を見ると、この部分が長くなっているので、ちょっとは問題になったのかも。

 そんなことを考えつつ眺めていたら、ダイワ先生はやっぱ偉いなと思いました。前も書きましたが、足首の部分が半月状の断面形状をしていて、後ろの面がフラットです。うむ。

 これはミッチェル300X。フットからレッグが90度ではなくやや前に傾いて生えています。これも指が斜めにかかることを考慮した設計だったのでしょう。つくづくミッチェル。

スプール軸方向ガタ
 スプールの軸方向ガタは以下の通りです。
ストラディックCI4 2500F 1.15mm
08バイオマスター2500S 0.55mm
05バイオマスター2500 0.83mm
07ルビアス2506 0.23mm

 ストラディックCI4の数値が大きいですが、ボディーデザインを見れば分かるとおり、ベースが07ナスキーだから仕方ないでしょう。07ナスキーの中身はおそらく04系で、スプールの軸方向ガタを減らしたのは07ステラ以降です。

 07ステラ以降(上の表なら08バイオが相当)はウォームシャフトポウル(クロスギアピン)を受けるブッシュを長くしてガタを減らしています。

内部機構
 ドライブギア、メインシャフト、ウォームシャフトはアルミ製。昔はこういう材料はキススペシャルとかBB-Xのような国内高級品だけでしたが、最近のリールは贅沢ですね。

 スプール往復は出るとき速く戻るとき遅いツースピードオシュレーションになっています。元々はエアロキャスト9000EXに採用されたもので(話が古いな・・・)、投げ釣りタックルを使った遠投競技の選手が手巻きでやっていた巻き方を再現したものです。

ボディー剛性
 写真の状態でラインに500gのテンションをかけて脚のたわみを測ってみました。

 ストラディックCI4 2500Fの読みは0.40mmでした。

 では、ザイオン製07ルビアス2506は・・・0.20mm。ストラディックCI4の半分です。おお。

 そういえば、ISO-Zか何かのダイワカタログで、ザイオンの物性比較にザイオンより剛性の低い“汎用カーボン材料”というのが載せてありましたが、あれは暗に「シマノさんのCI4はザイオンよりやわい汎用カーボン材料だよーん」という意味だったのでありませうか。

 シ、シマノの負け・・・。

 (せやけどまあ、こんなこといまの釣り雑誌では逆立ちしてもできんわな。ライターのページにこっそりアップしたが、これすらもダメだっていうところもあるくらいだからねえ。某社では製品の測定自体ご法度だとか。私はやっちゃうけど)

・・・かな?
 たしかに、より剛性(たわみにくさのこと)が高いのはザイオンのようです。もちろんストラディックとルビアスではボディー形状が違いますが、ストラディックは元々ガラス材料用のナスキーの型なので、むしろルビアスより硬く出てもいいはずです。シマノは07ルビアス対抗のため、あわててナスキーの金型と汎用カーボン材料で、レアニウムCI4やストラディックCI4を作っただけだったのでしょうか。

 そういう面もなきにしもあらずだとは思いますが、じゃあ私個人としてどっちの材料でできたリールにより安心感をおぼえるかというと、なかなか難しいことになってきます。

 大きな理由がこれ。タップビスとの相性です。

 私の07ルビアスは、ベール関係のタップビス4本すべてを接着剤で止めています。ベール反転不良を直そうと何回も分解組み立てしたとはいえ、かなり早い段階でネジ穴がゆるくなり、少しの開閉で緩むようになってしまったからです。

 ネジ穴がゆるくなったとは、ネジバカ(空回りすること)ではなく、タップビスの抵抗感がないということです。

 (ところで、ベールを開いてローターを手で持ってゆっくり回して閉じるかどうか見るのは、けっして意地悪でやったんじゃなくって、シマノの製品検査規格です。おそらく、あらゆるリールメーカー共通のはずです)

 ザイオンは樹脂分を減らしてカーボン繊維の密度を上げたということですが、そうすることで樹脂材料の弾力性を失い、樹脂用に作られたタップビスに向かないものになっているのではないかという感じがします。

 サイドカバーのネジも、するするするっと入っていってカツンと止まり、食い込み感がほとんどありません。

 もちろんメーカーはユーザー分解を推奨していませんし、不必要にばらさなければ何の問題もありません。でも、私個人としては、これはちょっとやだなという部分です。

 
 これに対しストラディックCI4のタップビスは、従来の樹脂リールに近いねじ込み感です。ナスキーの型で打っていることからも(材料を変えるたびにネジ穴のピンを交換していたら別ですが・・・)樹脂分の多い(ダイワ言うところの)汎用カーボン材料なのかもしれませんが、私はこっちのほうが安心です。

 それに、脚がたわんだからって、関係ないですよ。昨年アラスカに持っていってサケを釣ったり、今年九頭竜川で67cmの巨大サクラマス(笑)を釣ったりしたミッチェル・クォーツなんか、たぶんガラス材料で脚なんかグニャグニャたわみますけど、だからどうってことはないわけで。

 ついでに言っちゃえば、ゴーセーゴーセーと言っている人の半分くらいは剛性の意味も知らないわけでして・・・。

 最初は1号ナイロンが100m余裕で巻けて巻きの速いリールが欲しくて1000Fを買ったのですが、今年に入って渓流で何度か使ううち、これはいいわと思わず2500Fも買ってしまいました。

 なにがいいかというと、軽いのと速いのはもちろんですが、感度です。ルアーが着水して巻き始めると、ラインスラックがなくなってルアーが泳ぎだした瞬間が、はっきりハンドルに伝わります。軽い部品とハイスピードギアのせいです。

 リーリング時、回っているのはリールの部品だけでなく、ハンドルを持つ自分の左手もです。つまり、ギア比が高いリールは自分の手に発生する慣性も軽減して、感度が向上するわけです(「慣性を軽減」という表現はおかしいかもしれませんが、つまり手がぶんぶん回っていてはハンドル負荷の変化もわからないということですね)。

 ただ(もっとも私はバイヤーズガイドをやってるつもりはないのでそもそもそういう読み方をされては困りますが)、こと2500Fを買うならコンプレックスCI4にしたほうがいいでしょうね。ストラディックCI4はカベラスで199.99ドルですが、送料が70ドルかかります。1ドル93円として約25000円ですから、コンプレックスCI4より高くなります。それに、ベースは04モデルですから、スプール軸方向ガタは大きいし、バランスボディーでもありません。

 ところで、昨年9月に買った1000Fの誕生日シールはHH(09年8月生産)、今年4月に買った2500FはIC(10年3月生産)でした。ちゃんと流れているということで、売れているみたいです。たしか昨年のICAST(昔のAFTMAのことか?)ショーでグランプリになったそうですし、評判いいのかしら。

 新規に金型を起こして新しい材料を導入した07ルビアス対抗品を、既存の金型と汎用(?)カーボン材料で作ってちゃっかりシェアと評判を得ちゃうんだから、ダイワさんから見たらたまらんやろな・・・。

 こっそり書いちゃうけどね、以前某雑誌でダイワさんにリールの電話取材をしたとき、担当の人がポロっと「シマノさんはいつも後からやってくるんですよね」と言いました。その方は私が昔シマノさんにいたことを知らなかったそうで、フィッシングショーで会ったら「この前は失礼なことを言ってしまいました」と謝られてしまいましたが、私も「シマノさんはいつも後から・・・」と言われたとき、思わず「ももも、申し訳ありません!」と謝るところでした(なんでわしが謝るんや)。

 もっとも、ベイトのリョウガはコンクエストの対抗品なのですし、お互いさまといえばお互いさまなのですが、ことスピニングに関しては10ステラのX-SHIPとか、やっぱり後追いが多いなあと思います。もうちょっとがんばって欲しいなあと思わないでもありません。(2010/5/7)

SHIMANO