日付が替わった頃、仕事(バイト)を終え、店を閉めて家路につくと、夜から降り出した雪が本降りになっていた。舗装道路の上に落下した雪は即座にその姿を消していたが、町中には珍しい土面が露出しているところでは、既に雪が自己主張していた。
私は自転車で帰るだけだったのだが、なんとも強力に降る雪の前に少しやる気を無くしたのと、小腹が空いていたのを理由に近くの吉野家に入った。
私が入ったときに居た客は私を含めて4人。Uの字のカウンターがあたかも長方形であるかのように、それぞれが四隅に陣取っている。外は雪。深夜2時の吉野家に、「お一人様」が4人。全員が全員、雪に対して「どうするかなぁ…」という表情で食事をしている。
これは推測だが、私以外の3人もきっと、無作為に降る雪に対して帰宅の意志を微妙に削がれ、「とりあえず飯でも喰うか」と吉野家に入ったのだろう。ほとんど適当に、無意識と言っていいほどにカレー丼や豚丼は喰われていく。この4人の主題は目の前の食事ではなく、外の雪と、この空間から発する家路なのだ。そんな深夜2時。
何故か、4人がほぼ同時に会計を済ませて店を出る。それでもなお、バラバラに。そして全員が全員、上着のフードを深く被って散っていった。
そんな生活。