花嫁




そろそろ6月だ。また6月がやって来る、とも言える。グレゴリウス暦の中で、1月から12月までがグルグル回る。13月は多分、存在しない。けれども次にやって来る6月は2006年の6月であって、2005年の6月ではない。私の元に到達する(と、しておこう、とりあえず)2006年の6月は、私が卒業するための論文計画書を出さなければならない6月だ。来ないで!来ちゃ駄目だ!次の6月が2005年の6月だったらなぁ。


と、目の前の有刺鉄線に脅えながら、今日も逃避に励む自分。Great Escapist T-KS…通称GET、逃げることならお任せさ!今回の逃走材料は、ジューン・ブライドは何故に幸せになれるとされているのか、だ。6月の花嫁はどうして幸せに繋がるのか。少しだけ考えてみたい。



・仮説1…70年代に来日したプロ野球外人助っ人・ジューン(アメリカ)の名前によるという説。
初年に打率.306、28本塁打、83打点というなかなかの成績を残したジューンは大変な愛妻家だった。「ジューンの奥さんはさぞかし幸せだろう」という推測から、「ジューン・ブライドは幸せ」という話が生まれたが、いつしかこの話だけが一人歩きし、「ジューン」が6月の意味であると間違って広まってしまった。これが「ジューン・ブライド」の起源である。
ちなみにジューンは2年目の開幕直後、神のお告げ、という理由で突然、帰国、行方不明となった。
(「外人」ということばは「外国人」と言い直されるべきだ、という意見がある。だが、どこで書かれていたのかは失念したが、次のような見解もあるので、敢えて「外人」とした。つまり、そのチームにおいてもあくまで「助っ人」扱いであり、一年でも結果を残せなかったら即クビで帰国させられてしまう「外人助っ人選手」の哀愁は「外国人」ということばでは言い表せない、と。「ガイジン」の方がより強力かもしれない)
(なお、T-KSはあまり野球に詳しくない「にわか」である)


・仮説2…80年代に来日した外人プロレスラー・ジューン兄弟(イタリア)の名前にちなむ、という説。
地味だがそこそこ上手いタッグチームとして幾度か来日していたジューン兄弟。そのオリジナルホールドが「ジューン・ブライド」(兄が弟を花嫁のように抱きかかえ、弟を寝ている相手に叩きつける連携技)であり、ジューン兄弟が一度だけタッグ王者になった時の決まり手がこの技だった。王座戴冠後、彼らはインタビューで何を思ったか二人して「シアワセデース」と叫び、翌日のスポーツ新聞の見出しで「シアワセを呼んだジューン・ブライド」と書かれた。そして、やはり何故かこのことばだけが一人歩きして、「ジューン」が6月の意味であると誤解されたことが6月の花嫁の起源である。



…野球ネタとプロレスネタってのは、使いやすくていいね。どうしようもないや。


ペットボトルのふたが空かないことで1時間も2時間も騒ぎ続けるよりもくだらないことに、これ以上、付き合わせるのも益のないことなので、広辞苑を開いてみることにしよう。


――「ジューン・ブライド」【June bride】
6月に結婚する花嫁。西洋で、6月が女性と結婚生活の守護神ジュノーの月であることから、この月に結婚すると幸福になるとされる。(『広辞苑』第五版、岩波書店)


あ、ジューンの起源はジュノーなのね。はいはい。つまりこういうことか。



・結論…ジュノーによる、という説。
米海軍のアトランタ級軽巡洋艦ジュノー。ジュノーと並んで航行する船は、熾烈な戦闘状態においても決して被弾することなく、いつも無傷であったことから、「ジュノーとペアになる船は幸福」、「ジュノーの花嫁は幸福」、「ジューンブライドは幸福」という話が生まれた。



うむ、完璧。こんな完璧な私を誰か「花嫁にして下さい」。


(助っ人野球選手ジューンも、ジューン兄弟も恐らく存在しないはず。巡洋艦ジュノーは実在…「ジュノー」と聞いた時に、最初に私の脳裏に浮かんだのがこれ。僚艦が無傷だったかどうかは知らないが)



(2006/05)



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