8/20(1)




旅行中の行動について書き始める前に思う。何か書いて面白いことあったかな、と。仙台と札幌で知人に会っている時以外は全くもって会話もすることのない旅行だった――ひとり言は沢山したかもしれないが。ひとりでいる時にハッスルしてネタを作れるほど気合いの入っていない私なので、今回はネタらしいネタ――「指宿枕崎線・死の行進」「鹿児島港・深夜の組体操」「東京駅・赤ペンダーツの旅」のようなものがない。旅行自体は私にとってとても幸せなものであったが、この旅行記がその幸せの一部になるかは定かではないのだ。


何しろ、列車のシートの端っこで壁に体を預けて目を閉じ、急速眼球運動(レム)に勤しんでいただけなのだ。そこには旅先のアバンチュールもロマンスも、はたまた、友情・努力・勝利の冒険、あるいはその両方のコンビネーション、も存在しない。いっそのことそういったものを捏造しようとしたが、どうせ私(主人公)とヒロインを助けるために仲間(サブキャラ)が次々と死んでいくストーリーしか思い浮かばないので、それは思い留まることにした。こんなことばかり考えていた8/20。


…というわけにはいかないので、とりあえず旅行中にとったメモを基にしてこの日の行動を記していくことにしよう。それにしても「とりあえず」ということばが大好きだな、私。「とりあえず」以外にやることがない。


8/20の目的は、東京にあるアパートを出て、仙台経由で出来るだけ北上することだ。時刻表を調べた限りでは秋田までは行けるはず。衣服担当と本・日用品担当の2つの鞄を持ってまずは最寄り駅を目指す午前4時。始発に乗らなければ。まだ日の出前の駅前でカメラの類を持っていないことに気が付く。特に理由もなく、今回は(も?)写真を撮らないことに決める。理由はない。理由はない。時々、写真を撮ることは野暮である、というような話に出会うことがあるが、別に私はそう思わない。写真を撮ってもらうのも、後になってアルバムを見返すのも好きだ。けれど、何故か自分で写真を撮ることはほとんどない。よく分からない。


始発に乗り、東北本線の起点である上野方面を目指す(乗り換えなければならないが)。コンビニで買った『ゴルゴ13』『美味しんぼ』を30分で読み切ってしまう。マンガが2冊終わってもまだ1本目の電車の中。帰省する時も思うのだが、アパートから一番近いこの路線が最も長く思える。いつだって中央線は長い(あ、言っちゃった)。


神田から山手線で上野、上野から東北本線(宇都宮線)…上野=スタート地点という観念はあまりに強烈な刷り込みの結果だろう。休日早朝の下り列車は乗客が少ない。その少なさを強調する「ダラダラと」連なった車両の多さは、ここにもの凄い数の乗客が詰め込まれることを示唆する。不均衡。しっかりと徹夜してきていたので寝る(しかも出発2時間前まで、突然呼び出されて飲んでいた)。ロングシートの端の鉄棒を抱いて。一駅毎に目を覚ましながら、座って寝るのは苦手なT-KSはよだれを垂らす。バランスはよくない。


宇都宮で乗り換えて黒磯まで。黒磯で4度目の乗り換え…この先、何度乗り換えればいいのだろうか。ここで「どんどんローカル線になってくぞ、大丈夫か」「電車にトイレがあるんだね」と脅えたり驚いたりしている方々を見る。コメントは差し控えよう。黒磯-郡山-福島は何故かやたらと混んでいる(この旅行中で座れなかったのはこの区間だけ)。どこぞの高校の男子バスケ部と女子バスケ部の顧問の仲が非常に悪い、という情報を入手しながら福島を経て仙台へ(悪趣味だと知りつつ盗み聞き…だって聞こえてくるんだもの)。


仙台で実家にいた頃の知人と5年ぶりの再会。端的に嬉しい。牛タン屋で昼食…わざわざ予約をとってくれていたとのこと、ひたすら感謝。これまでの牛タン観を一変させるような牛タンを頬張りながら、久々に会う人とのありきたりな話(現状報告、これから、知人の現況)をする。この頃のメモを見ると、私が普段から疑いの目を向けているはずの「幸せ」ということばが書いてある。牛タンがデンジャラス美味い、とも書いてあるが。


私が去年から東北楽天イーグルスのファンであることを言うと、仙台駅構内のオフィシャルショップに連れていってくれた。えんじ色のグッズが並んでいる。25HR51打点という奇跡の数字の我等が山崎グッズや、あまり試合に出ていないのに何故か置いてある球界最速かもしれない我等が森谷グッズに惹かれるが、結局買ったのはイーグルスのドロップ缶…要するにアメ玉。部屋に置きやすそう、という理由から。


電車の時間が来たので改札でお別れ。また会おうね、とお別れしたら振り返らないのが私の主義(多分、ウソ)。さて、ここからは東北本線を外れ、仙山線で山形へ出て、奥羽本線で秋田(翌日は青森へ)向かうことになる。距離的には、まっすぐ北上して岩手、青森と向かうのが近いのだが、盛岡から八戸の間はJR線が繋がっていないのだ。新幹線は八戸までしっかり繋がっているが、それに並行する在来線は第三セクター化され、18切符では乗れなくなっている。乗ろうとすれば18切符1日分以上の追加料金を払わなくてはならないので、今回は一度、日本海側へ回ることにした。


それにしても新幹線を通す一方で在来線を切り離してしまうのは面白くない。この恨み晴らさでおくべきか。んがぁ。いや、別に日本海側に回るのが嫌というわけではないけれども…すまん、本音を言うとこの時点で鉄道に乗ることには飽きてしまっていた。東北本線が繋がっていたらもう少し乗車時間が短くなっていたかと思うと…コノウラミハラサデオクベキカ。


仙台まででようやく(行きの)4分の1だぜぃ!?



【上野】5:47-(東北本線)-7:28【宇都宮】7:37-(東北本線)-8:28【黒磯】8:37-(東北本線)-9:56【郡山】10:08(東北本線)-10:54【福島】11:00-(東北本線)-12:12【仙台】




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