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料金の都合で会員になってしまったマンガ喫茶だが、再び訪れることはあるのだろうか。夜が明けるまで何をしていたかは詳述しないが、旅メモにおけるこの頃の記述に「オレハラブコメスキー」とあることは紹介しておこう。ラブコメやろうぜ、ラブコメ。やって出来るものなのかはともかくとして。


もちろん一睡もせぬまま、5時頃に店を出る。涼しい夏の夜明け…この時期、旅先のまだ静かな駅前でそれを感じるのは随分と久しぶりな気がする。松本駅や鹿児島港を思い出して、この旅、一番のセンチメンタル(だからどうした)。5:40の電車に乗るために秋田駅へ向かう。秋田駅は駅前のコンコースが広い上に夜間閉鎖されないので、実は駅寝に最適な場所だったりもする。実際、何人もベンチで寝ていたし…今度、条件が揃えばここで寝てみたい。


秋田-弘前-青森と列車は進む。この日の乗り換え予定回数は7回(実際は8回)。ちなみに前日の乗り換え回数は10回…旅とは乗り換えである――断言するな。列車に乗り込み、さて、お待ちかねの睡眠タイム。


さして寝てもいないうちに、寒さ(相も変わらず強冷房)と騒がしさで目が覚める。気が付くと車内は学生で埋め尽くされている。夏休みが終わったのか、それとも皆して学校に用事があるのかは分からないが、とにかくこの列車は通学列車であったことは確かだ。車内は学生達の歓談の場となっている――辺りを女子高生が埋め尽くしているこの光景に、喜ぶ奴は喜ぶのかもしれない。


ほとんど眠れぬこの状況だが、決して、騒がしさのもとである学生達を責める気はない。これがこの列車の日常であり、私のような18切符旅行者はその日常に対する闖入者であるからだ。よそからやって来てたまたまこの列車に乗っただけのイナゴが、ここで眠ろうとすること自体が分不相応であると言える。なので、ひたすら身を小さくして弘前に着くのを待ち続けるしかないのだ。邪魔者なのだから。


車内で眠れなかった代わりに、弘前駅のベンチで1時間ほど倒れておく(次の列車まで1時間半待ちだった)。おかげで弘前駅の印象は、ゴツゴツして眠りにくい待合室のベンチ、ということになってしまった。弘前を出た先の青森でようやく奥羽本線からおさらば。次は津軽線…津軽半島の先から青函トンネルを通って北海道上陸を目指すことになる。


普通列車で蟹田駅まで。ここで特急に乗り換える――特急には基本的に乗れないはずの18切符だが、蟹田-木古内間(要するに青函トンネルの間)は普通列車が走っていないので、その区間だけ18切符で特急に乗れる。特急「スーパー白鳥」の自由席で揺られること45分、ようやく北海道は木古内駅に到着。それにしても特急列車の座席は柔らかくていいなチクショウ。


ちなみに蟹田で特急に乗った連中のほぼ全てが木古内で降りた。つまり、この連中は18切符旅行者(他の切符もあるけど)だということだ。よく見ると、弘前辺りからずっと同じ列車に乗っている者が多い。きっと、この中のほとんどが札幌へ向かうのだろう…そう思うと、ほんのごくわずかの仲間意識と、それよりもずっと大きくて自分勝手な苛立ちが私に芽生えた。ここまで来て誰かの顔とか目を気にしたくはない。



【秋田】5:40-(奥羽本線)-8:33【弘前】10:02-(奥羽本線)-10:49【青森】10:59-(津軽線)-11:35【蟹田】11:43-(津軽・津軽海峡線)-12:30【木古内】




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