長くなり過ぎているような気がしてならない。そもそも一日を二回に分けて書くことになるなんて思ってもいなかった。ここから先はなるべく簡潔に書いていきたいと思う…前半が無駄に長くて後半が急ぎ足、典型的なマヌケだが。
さて、北海道上陸後は、まず江差線で函館を目指すことになる。江差線は1両編成…東北本線に恐れおののいていた方々はこれを見て何を思うのか。車内を見渡せばこの列車に乗る人々の顔が目に入る。乗客の大半が、さっきの特急から降りた連中だ。18切符の有効期間だけ増える乗客…その時だけ大挙してやってきて、その空間を犯す18切符旅行者。自分も含めて、本当にイナゴだ(イナゴにゃ悪いが)。
江差線の車内にはクーラーがない。本州の車内で私を凍えさせるためだけに吹き出していた冷風からついに解放された。北海道だからと言って対して涼しいわけではないが、この季節に長袖の厚手シャツを着なければならないよりは、冷房なしの車内をTシャツで過ごしていた方がいくらか素敵だ。
函館。ここで乗り換えるのだが、次の列車まで30分程度の間があったので、昼食を食べることにした。時間的に駅から離れることが出来なかったので、すぐ近くにあった観光客向けの施設の中でいくら丼・イカそうめん・ホッケの干物、のランチセットを食す。テレビでは丁度、甲子園決勝の再試合中。テレビの中では「永遠のお兄さん」(未だに甲子園球児が年下だとは思えない)の熱闘の証である汗、テレビの下では列車の時間に遅れそうだと熱いアラ汁をガブ飲みする私の汗。
あぁ、人気のある街なんだなぁ、という感想をメモ書きし、函館線で先を急ぐ。函館に着いた時に散っていった連中の多くが同じ列車に乗り込んでくる。ほぼ皆、同じ行動パターンのようだ。
長万部に着くまで、これまでと同じく本を読むか景色を見るか白目を剥いて眠るかの3択(白目を剥いて、というのは想像だが、私の寝顔はきっとそうだと思う)。ここまで道中でもそうだが、取り立てて書いて面白いようなことは起きやしない。読んだ方が笑えるような出来事も、私が思いだして吹き出してしまうような出来事も怒らない。いつも隣りに誰か座っているような鉄道旅だが、私がその声帯を震わせることは滅多にない。アパートの部屋に一人でいるのなら、マンガ雑誌の中のプラトニックラブに腹を立て「テメーは俺に恨みでもあんのかコノヤロウ」と叫びながら枕を床に叩きつけたりも出来るのだが、この状況ではそうもいかない。
始発駅から終点駅まで動かずに同じ場所を占め続け、何かを考えたり考えなかったり、ストレスを溜めたり溜めなかったり。しかし、それが――ここまでの道中が――下らないものであるかといえば、私はそうではないと答えるだろう――理性と感情で全てを説明出来るとは思えない(ただ、そんな旅の記録を読まされる方には申し訳なく思うが)。
そんなことを考えたり考えなかったりしているうちに長万部で乗り換え。札幌へ行くには小樽を経由する北回りの函館本線と、東室蘭・苫小牧を経由する南回りの室蘭本線(その先は千歳線)の2つのルートがある。時刻表では小樽を経由した方が20分以上早く到着することになっている。予定では私も函館本線に乗るつもりだった…が、この時、私がステップを上がったのは室蘭本線の列車だった。つまるところ、青森辺りからずっと一緒だった18切符旅行者達が函館本線に乗り込んでいくのを見てのこの行動。旅先でまでそんなことを気にする私の器の小ささに乾杯。ペットボトルの蓋よりも小っちぇえ。でも、函館本線より室蘭本線の方が車両の数も多かったし、車内もキレイだったのよ。そうだ、そうに違いないわ。
この列車に乗っている間に日が沈む。長万部に着く辺りから既に本を読む気力もなくなっていたのでもうひたすら窓に貼り付いて外を眺めていたのだが、外が暗くなってくると窓に映るのは車内の様子だけになる。外からの光がないと窓ガラスはただの鏡。昨日の日中も今日の日中もひたすら窓の外でスライドし続けていた景色はもう見られない――スライドし続けていたのはレールの上を走る列車に乗っている私なのか、それともこの列車の外の世界なのか。もしかすると、この旅行中、世界は私だけを置き去りにして滑り続けていたのかもしれない――ありがちな議論。でも、この頃に書かれたはずのメモには「ケツが痛い」。臀部の痛みの前には、世界と私、というような意識は存在しない。
東室蘭と苫小牧で乗り換えたはずだがほとんど記憶がない。気が付いたら札幌だった。到着時刻は22:04…あぁ、どれだけ電車に乗っていたのか。ほとんど何もしていないはずなのに満身創痍な気分で改札を出て、このサイトにも書き込んでくれたことのある「パンダの舞」氏(以下、P氏)に出迎えていただく。私の狭量さ(小樽経由ではなくわざわざ苫小牧経由で来たこと)故に到着が20分以上遅れてしまった。これは少々申し訳なく思っている。
残り少ない21日…P氏の案内で夕食、ジンギスカン。うめえ。羊肉特有の風味が素敵だねこの畜生め(マトンだとヤバイぐらい臭いらしいが)。続いて、札幌市内にどぉんと横たわっていて札幌駅からも近いほど北海道大学を見物。ひろい。広大な農場がロマンチックだねこの学校め。いい加減、ヘロヘロになってきたのでそろそろP氏の部屋に泊めてもらうことに。たかい。私の部屋の2倍ぐらいの広さがあるねこの部屋め。寝るよぉ、体を伸ばして寝ちゃうよぉ?
【木古内】12:35-(江差線)-13:46【函館】14:39-(函館本線)-17:43【長万部】17:50-(室蘭本線)-19:21【東室蘭】19:38-(室蘭本線)-20:40【苫小牧】20:48-(千歳線)-22:04【札幌】
8/20…乗り換え10回、乗車時間12時間33分
8/21…乗り換え8回、乗車時間13時間7分
合計…乗り換え18回、乗車時間25時間40分
この2日間の乗車時間ランキングなら、日本の上位1パーセントぐらいに入っているかなぁ。