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11月14日 「丙案」の廃止

 連日司法試験ネタで恐縮ですが、ようやく「丙案」の平成16年度からの廃止が決定したそうです。

 といっても、司法試験受験生以外の人には何のことだか分からない方も多いと思いますので、説明しますと、正式には「合格枠制」といいまして、司法試験合格者の9分の2(以前は7分の2)を、受験開始後3年以内の受験生から選ぶという制度です。

 何気なく言うと、何気ない制度のように聞こえますが、よくよく考えれば大変おかしな制度と言うことが分かります。つまり、一つの試験に合理的な理由もなく合格点が二つあるのです。

 現在の司法試験の合格者は毎年1000人。単純な制度であれば、誰でも1000番以内の成績を取れば合格できるはずです。

 ところが、合格枠制のために、受験開始後3年以上の受験生は780番でも不合格になってしまうのに対し、3年以内の受験生はなぜか1500番程度でも合格してしまうのです。これは不合理な差別以外の何者でもないでしょう。

 どうしてこんな制度が生まれたかというと、10年以上前の最高裁、法務省、日弁連の3者の協議で決まってしまったのです。最もこの制度を推進したのは法務省。当時、バブル景気の日本では、修習生の就職も売り手市場で新人弁護士の初任給は上がる一方でした。その反面検察官志望の修習生は激減し、危機感を抱いた法務省が、若手の囲い込みのために提案したのが合格者の増加と合格枠制だったわけです。「丙案」というのは、甲乙丙とあった3案の中の丙案だからです(甲乙は受験回数の制限を含む案でした)。

 なぜこんな変な案に日弁連が乗ってしまったのか、いろいろな政治的理由があったのですが、結果的にこんな変な案を通してしまった日弁連の定見のなさは将来にわたって責められるべきでしょう。一度導入が決まったら、合格者も増え、(不況の影響もあって)検察官志望も殺到するようになってもなかなか合格枠制をやめようとしなかった法務省もお役所の悪弊を象徴しています。

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