1月23日 懲役14年は長いか短いか 今朝の各紙はこぞって新潟少女監禁事件の判決を取り上げていました。 懲役14年。これでも短すぎるという声もあるようです。 確かに犯行の異常さ、被害者の苦痛、取り返しのつかない時間の長さを少しでも想像すれば、無期懲役くらいの刑でも文句は言えないのかも知れません。私自身が仮に被害者の近親者であれば、どのような重刑を科されようとも決して佐藤被告人を許すことはできないでしょう。 しかし、それも「法定刑が許せば」の話です。 刑法220条【逮捕監禁罪】 不法に人を逮捕し、または監禁した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。 つまり、佐藤被告人の行った犯罪は、この条文による限り、最大でも5年の懲役しか科せません。 そこで検察側は、監禁により被害者の足の筋力が低下したことを以て「傷害」とし、監禁致傷罪の適用を主張しました。判例上、「傷害」とは、「あまねく健康状態を不良に変更する」こととされています。ですから、本件について監禁致傷が成立すること自体は私も同感です。 刑法221条【逮捕・監禁致死傷罪】 前条の罪を犯し、よって人を死傷させた者は、傷害の罪と比較して、重い刑により処罰する。 監禁致傷罪の法定刑は、傷害罪の法定刑と監禁罪の法定刑のうち、上限・下限とも重い方が法定刑となるという意味です。 刑法204条【傷害罪】 人の身体を傷害した者は、10年以下の懲役又は30万円以下の罰金若しくは科料に処する。 傷害罪の懲役刑の法定刑は、 上限=10年 下限=なし(この場合、刑法12条1項で1ヶ月が下限となります)。 監禁罪の法定刑は 上限=5年 下限=3ヶ月ですので、 監禁致傷罪の法定刑は 上限=10年 下限=3ヶ月ということになります。 つまり、現行法では監禁致傷罪で処断しようとすると、どんなに頑張っても10年までの懲役刑しか科せないわけです。 そこで、検察側はウルトラCとして、佐藤被告人が下着を4点盗んだ点を同時に起訴し、窃盗罪を一緒に(併合して)処罰するように求めたのです。 刑法45条前段【併合罪】 確定裁判を経ていない2個以上の罪を併合罪とする。 刑法47条【併合罪についての有期懲役・禁錮の加重】 併合罪のうちの2個以上の罪について有期の懲役又は禁錮に処するときは、その最も重い罪について定めた刑の長期にその2分の1を加えたものを長期とする。ただし、それぞれの罪について定めた刑の長期の合計を超えることはできない。 刑法235条【窃盗罪】 他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役に処する。 監禁致傷罪と窃盗罪を併合罪とする場合、相対的に刑が重い監禁致傷罪をメインの罪として、これに窃盗罪の分を加重するという考え方を取ります。 監禁致傷罪の法定刑の上限=10年ですので、これを1.5倍した15年まで刑を科せるわけです。 さて、この方法により、検察官は10年の「壁」を突破し、併合罪の上限である15年を求刑することができました。 そして判決も基本的には同様の考え方に立ち、懲役14年を言い渡したのです。 さて、これでいいのでしょうか??(本当はこの先からが本題なのですが、疲れました(苦笑)。申し訳ありませんが、また明日と言うことで。なお、本日はほかの話題もあったのですが、これも明日以降に補充します) |