3月22日 ビデオテープの証拠採用 和歌山カレー事件で、被告人に対するテレビのインタビューを録画・編集したビデオテープが、被告人の「供述調書」として証拠採用されたとの報道がありました。 新聞の記事しかないので、詳しいことはわかりませんが、刑事弁護に携わる者からはずいぶん乱暴な決定だなあとの感を拭えません。 実際に報道された番組を録画したテープですから、報道機関の取材の自由は問題にならない、というのはまあ、その通りだと思います。 問題は、ビデオテープ=「供述調書」とした点です。 刑事訴訟法322条1項本文 被告人が作成した供述書又は被告人の供述を録取した書面で被告人の署名若しくは押印のあるものは、その供述が被告人に不利益な事実の承認を内容とするものであるとき、又は特に信用すべき状況の下にされたものであるときに限り、これを証拠とすることができる。 何か、とっても厳しい要件をクリアしなければ証拠として認められないようですが、実務上は相当緩やかに証拠として認められてしまっています(これ自体も「調書裁判」を助長するものとして問題です)。 「被告人の供述を録取した書面」というのが、供述調書のことです。 つまり、供述調書が証拠として認められるためには、「被告人の署名若しくは押印のある」ことが必要です。 ビデオテープが書面ではない、と言う点は一応おくとして、ビデオテープには、当然被告人の署名捺印はありません。 それなのに裁判所は「他の証拠によって、供述内容が正確であり、供述者の供述であることが認められるのであれば、署名押印がなくても、供述録取書と同様に扱ってよい」として、いともあっさりビデオテープの証拠能力を認めてしまったようです。 刑事訴訟法322条は、伝聞法則(公判廷で直接語られた証言以外の供述証拠は原則証拠能力を持たない)の例外を定めた重要な規定ですが、「例外」の拡張をこうもあっさり認めてしまっては何のための手続き法か、という気がします。 |