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5月27日 プロバイダー責任法の施行

 本日、いわゆるプロバイダー責任法が施行されたそうです。

 この法律、正式名称は特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律という非常に長ったらしい名前です。

 しかし、正式名称をよくよく見ればわかるように、実際には「プロバイダー責任法」ではなく、「プロバイダー責任制限法」とでもいうべきものです。

 法律の趣旨は二つ。一つは掲示板で他人を誹謗中傷するなど他人の権利を侵害する書き込み等に対し、プロバイダが一定の要件の下に削除権限をもつことになったこと、この場合のプロバイダが情報の発信者に責任を負わないこと。

 これはまあ妥当なものとは言えますが、もう一つの発信者身元開示については、被害者によるプロバイダに対する開示請求権を認めたものの、それを担保する特別の手段を講じておらず、被害者としては、プロバイダが協力してくれないときには結局泣き寝入りを強いられかねないようです。

 しかもプロバイダは「開示の請求に応じないことにより当該開示の請求をした者に生じた損害については、故意又は重大な過失がある場合でなければ、賠償の責めに任じない」とされており、通常の民事責任よりかえって免責範囲が広くなっています。

 昨年の秋ころの報道では、「被害者に対し権利侵害情報の削除と発信者特定の手段を与えるものということですが、発信者の同意が得られなければ裁判所に削除あるいは身元開示を請求」という内容だったはずで(昨年10月1日の日誌参照)、裁判所における手続き規定の整備を期待していたのですが、そのような規定は全くなく終わってしまいました。

 結局のところ、今回の法律では、プロバイダによる一方的削除は増えるかも知れませんが、それ以上の変化は期待できそうになく、改善といえるのかどうか疑問です。

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