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6月23日 河辺弁護士−弁護士自治・弁護士会自治(1)

 依頼者から「裁判費用」と称して8億円以上を騙し取ったと報道されている(実際にうち1件で詐欺罪等により刑事訴追された)奈良弁護士会の元会員の河辺幸雄氏に対し、被害者が奈良弁護士会及び日弁連に対して損害賠償請求を起こすそうです。

弁護士詐欺事件:被害者本人が日弁連提訴へ
河辺幸雄被告=による現金詐取事件で「被害者の会」は22日、「被告の詐欺行為を知りながら防止策を取らず、被害拡大を招いた」として同弁護士会などを相手に起こす損害賠償請求訴訟を、被害者が弁護士なしで審理に臨む本人訴訟とする方針を決めた。大阪や京都の弁護士に代理人を依頼したが断られたため。被告には上部団体の日弁連も加える予定。

 いろいろな論点がありますが、まずは事件の内容。

弁護士詐欺:依頼人150人から詐取か 被害5億超す
奈良弁護士会所属の弁護士、河辺幸雄容疑者が依頼者から現金を詐取したとして奈良地検に逮捕された事件があり、河辺弁護士が150人以上の依頼人から訴訟費用などと偽って現金を受け取っていたことが、奈良弁護士会の独自調査で分かった。
「人柄は良く、丁寧で腰も低い人だった」。そんな評価の一方で、県内の高級ゴルフクラブの会員権などもかなり持っており、大阪の北新地などでも羽振り良く遊んでいたという「別の顔」も。弁護士活動については、「以前から事件を放置している」「弁護の中身がいいかげん」などの声が多く、評判は芳しくなかった。

 なぜ弁護士会が責任を問われるのか。

懲戒規定公表せず 公表なく被害拡大
河辺幸雄被告による現金詐取事件をめぐり、奈良弁護士会が河辺被告と依頼人との金銭トラブルを公表せず、被害を拡大させたとして対応を批判されている問題で、日本弁護士連合会が平成3年2月に懲戒処分の公表に関する会則を改正し、「戒告」の懲戒処分についても「国民の信頼を確保するために必要である場合に公表する」とする運用基準を設けているにもかかわらず、奈良弁護士会は現在まで会則や懲戒手続規程を見直さず、「戒告」を公表する規定を設けていなかったことが分かった。

 河辺氏は平成8年6月に民事訴訟事件の依頼を引き受けながら訴訟を起こさず、依頼人には訴訟を起こしたとして嘘をつき、「戒告」処分を受けているそうですが、このような「戒告」処分は外部に公表されておらず、このため河辺氏の業務の実体が全く依頼者には判明しないままに次々に被害者が生まれていったと言うのでしょう。

 奈良弁護士会も、全く手をこまぬいているわけではないようです。

奈良弁護士会のホームページ

 今回は異常に早い除名処分を出していたり、特別調査委員会を組んでホームページに情報を掲載したりはしているようですね。しかし、問題は、なぜここまで被害が生ずるまでに弁護士会が何もできなかったかです。

 奈良弁護士会の会員数は全県で80名程度。地方の弁護士会では平均的な規模でしょう。業務をやっていれば、全員顔や素性がわかってしまう程度の人数です。悪評もすぐに広がります。たぶん、河辺氏に対しても、会内では数年前から「悪評」はあったものと思われます。

 しかし、問題は、その「悪評」が会内だけで、一般にはあまり広がらないことです。会員数が少ないため、地方の弁護士会はややもすれば「紳士クラブ」的な性質になってしまい、外部に対してはお互いかばい合う体質になってしまう傾向があるように思えます。

 これが日弁連の懲戒処分の公表に対する会則改正への対応の鈍さにつながり、結果として今回の問題につながってしまったことは否めないでしょう。(以下明日へ続く)

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