直線上に配置
7月5日 2年以内の裁判

 民事裁判で提訴から判決までの期間を短縮するために、数値目標を定める動きがあります。

「2年以内に判決を」司法改革顧問会議が提言へ

 という目標を定める模様ですが、何ともピンときません。

 2年以内というのは、一般の方から見れば何とも冗長ですよね。紛争の当事者からすれば、結論を引き延ばしたい方は別にして、決着は早ければ早いほどいいはずで、できれば半年以内に決着をつけて欲しいという気がするのではないでしょうか。

 現在でも92%の事件は2年以内に決着が付いているのですから、顧問会議の目標は、実際には現状を追認しただけのものではないでしょうか?

 実際には数年前に大改正された現行民事訴訟法でも、民事裁判の短縮を目指した内容の条項は結構あります。

 例えば、「時期に遅れた攻撃防御方法の却下」の制度(民事訴訟法157条)。

 これは、裁判の進行から見て、明らかに「今さら」という時期になって新たに主張が付け加えられ、裁判の進行が遅延するのを防ぐための制度です。

 ところがこれがあまり使われません。

 実を言うと、先日、まさにこの「時期に遅れた攻撃防御方法」の場面に遭遇しました。

 まさに「もう2年も」延々と続いている裁判で、ようやく証人尋問に入り、証人二人を調べ終わってから、相手方が突如新しい主張を始めたのです。

 その主張の内容も、どうひいき目に見ても訴訟の最初から主張可能であったはずのものです。

 当然、私は強硬に「時期に遅れた攻撃防御方法の提出であるから却下すべきだ」と主張し、2時間にわたって裁判所に訴えましたが、裁判官は当方の主張に相当理解を示したにもかかわらず、相手方には自主的に主張の撤回を促したのみで、自ら却下の判断はしませんでした。

 よく言えば、謙抑的な裁判官でしょうが、悪く言ってしまえば、自ら判断して泥をかぶることを避けたように思えます(なお、当該裁判官のセンス自体については私は非常に信頼しております。念のため)。

 いくら制度を定めても、現場の裁判官が使わなければ、運用は変わりません。

一つ前へ  一つ後へ

日誌の目次に戻る

トップ アイコントップページへもどる
直線上に配置